本来なら安倍首相が、桂内閣の最長記録を塗り替えたお祝いムードで迎えるはずだった11月20日、衆・内閣委員会を中心に「桜を見る会」疑惑に関する新情報がたくさん出てきた一日となり、政治ニュースも「最長記録」一色に染まることはなく、政権存続をさらに危うくする厳しい見出しが次々と出た。
内閣委員会での最功労は、もちろん共産党の宮本徹氏。
彼には、5月に「桜」に関する行政資料を内閣府に提出したその日、資料を破棄されたという因縁がある。
これを突き付けるべき、今日の審議ではトップバッターに立った。
が、その前に、この質問順番を巡って、心温まる友情ストーリーがあったことを、質疑内容に入る前に紹介したい。
これは、宮本氏自身のブログで明かされた話だ。
宮本徹ブログ・今言いたい
確かに、名簿の開示に焦点が当たっている国会追及では、資料請求の日に文書廃棄という因縁を持つ宮本氏が、直接スガ氏に質問するのが極めて有効だ。
しかし、よく共産党にオイシイところを譲ったなぁ、と感心した。
そして質問がはじまると・・・
「『桜を見る会』追及チームの宮本徹です。」
冒頭から、「おや?」と思った。
ふつうなら、「日本共産党の宮本徹です。」と名乗るところだ。
この日、内閣委員会の質問に立った4野党議員は、それぞれが冒頭で、「『桜を見る会』追及チームの〇〇です。」と、名乗った。
他の野党議員なら。「立・国・社・会派の黒岩です。」と言うべきところだ。
これには、軽い衝撃を覚えた。
党派を超えて、個人的な功労よりもチームで結果を取りに行く選択をした野党議員たちには、ライバル同士が友情で勝利を取りに行く、往年の週刊少年ジャンプを彷彿とさせるような、胸が熱くなる思いにさせられた。
これは、野党共闘は、外から想像するより、ずっと深化しているのかもしれない。
さて、質疑内容だが、全部書き起こすと冗長になるので、ハイライトを紹介しよう。
菅官房長官「私は後日、報告を受けたことであります。」
これが質問の一つに過ぎないところが、この国の劣化の象徴だと思う。
正常な国家なら、これだけで内閣が吹き飛ぶのに十分な威力がある。
大塚官房長「(規定に基づいているという主張をクドクド説明したうえで)廃棄の分量が多いものですから、通常の事務室にあるシュレッダーではなく、大型のシュレッダーを使おうとしたところ、各局の使用が重なったこともございまして、その他もろもろの調整をした結果、9日になったということでございます。」
宮本議員「シュレッダーが空いてなかったから9日だと。そんな説明をですね・・・真に受けると思うんですか?もうちょっとまともな説明をしていただきたい。電子データも5月9日ころに廃棄したと言ってましたよね。シュレッダーじゃ、説明付かないじゃないですか。電子データをシュレッダーにかけてるんですか?」
大塚官房長「(意訳)紙媒体の時期に合わせて電子データを削除した。」
宮本議員「国会での監視を逃れるために、資料要求の日に、それをシュレッダーにかける、電子データも捨てちゃうと、これ、民主主義の危機だと思いますよ、私は。森友問題では、文書の改竄が、総理の答弁に合わせて行われました。同じことが、桜を見る会で起きてるんですよ。許されないですよ。そういう認識ないですか?官房長官。」
菅官房長官「(大塚)官房長から説明があった通りなのだろうと思います。」
宮本議員「あの説明がその通りだと思うんですか・・ええっ・・そんなんで官房長官務まりますか?」
これが、あちこちで報じられている「シュレッダー」の部分である。
今から、今年の流行語大賞候補に加えられてもおかしくないくらいのインパクトがあるウソだ。
「遅滞なく廃棄」が必要とされていた文書が、シュレッダーの順番待ちに3週間を要したので、廃棄が遅れた、聞いてる者をバカにしているとしか思えない理屈だ。
国家の最高機関で、国会議員と官僚幹部が、こんな子供も使わないような言い訳をもとに議論しているこのありさまを、国民はどう思うのだろう。
内閣府の文書に関する往生際の悪い突っ張りはまだ続く。
以下は、文書の廃棄に関する規定について、宮本議員が追及したくだり。
やりとりから、政府がいかに事実が現れないよう、文書管理の規定を操作しているかが窺われる。
大塚官房長「(意訳)2018年4月1日から、1年未満と規定した。」
宮本議員「少なくとも森友問題が起きる前は、保存期間はもっとあった。野党合同ヒアリングで聞いたときに、みなさん『例年この時期に捨てている』と言っていましたけども、全くウソじゃないですか。去年からじゃないですか。では聞きますが、去年はいつ廃棄しましたか?」
大塚官房長「手元に資料がありません。」
宮本議員「通告したんですよ。手元に資料がないじゃ答弁にならない。」
大塚官房長「通告だと理解してございませんでした。申し訳ありません。」
場内ザワザワ
宮本議員「例年この時期に捨ててると、みなさんは野党合同ヒアリングで答え続けてた。今日の答弁では、1年未満の文書になったのは去年からだと、去年いつ捨てたのかわからない。今年捨てたのは5月9日だと。」
大塚官房長が挙手、去年いつ捨てたのか分かったようだ。
大塚官房長「去年も今年と同じ時期です。」←テキトーすぎだろ
宮本議員「証拠を見せてください。」
大塚官房長「そのように担当者が言ってました。」
宮本議員「日付を特定する証拠を出してください。」
官僚のグダグダ感を感じていただけただろうか?
思い出してほしい。
大塚氏は「2018年4月1日から、1年未満と規定した。」と説明している。
これはどういう時だったかというと、PKOの日報隠匿や財務省の森友文書改ざんが問題となり、安倍首相の「さらに問題点を洗い出し、公文書管理の在り方に政府挙げての見直しを行いたい」という号令のもとに、各省庁で文書管理の規定の洗い直しをしたのだ。
そして、信頼回復を目指して、公文書管理の新規則の運用を新たにスタートさせたのが、この日なのだ。
どうです?ふざけているだろう。
信頼回復どころか、この日を境に、「桜」招待客名簿は、保存期間1年から1年未満に改訂されていたのだ。
なーにが、信頼回復だ。
文書保存期間を、改めて見直すことで、むしろ彼らはより巧妙に事実を隠すことに躍起になったのだ。
これまでの話、どうしても「官僚が悪い」という結論になってしまうけど、冷静に考えなくてはいけないのは、官僚が必死に隠すことで誰が守られているかということだ。
もちろん、このグダグダな見え透いたウソで、物事をごまかそうという官僚には腹が立つのだが、国家機関のトップで働く優秀なはずの頭脳を、こういうくだらないことに使い倒している安倍政権は、金額には表せないほどの国家的損失を与えていると言っていいのではないだろうか。
宮本議員の2019年5月の質疑に関する記事。
上のやり取りを踏まえて、過去のやり取りを見ると、官僚のウソがどこまでしらじらしいか堪能できます。
