スポンサーリンク

安倍の「虚偽答弁」が日本に残す爪痕

2021年5月17日参院決算委、立憲・吉川沙織議員の質疑から。

 

痛快にぶった切る類の質疑ではないが、安倍政権による政治の破壊により、感受性がすっかり鈍化してしまった私たちの感覚を、今一度正常値に戻そうとするのに必要な内容だった。
ニュース等に取り上げられることはまずないので、備忘録の意味も込めて、書き残しておこうと思う。
まずは前提として。

 

吉川氏「会議録は憲法57条にも規定されるように重要なものですが、参議院事務総長と衆議院事務総長にそれぞれから改めて会議録の重要性を答弁を頂きたい。」

 

岡村参議院事務総長「憲法57条1項は会議の公開原則を定めておりますが、本会議の会議録に関しましては、この原則を担保するものとしまして保存・公表・頒布が同条2項で定められております。委員会の会議録につきましては憲法上の定めはございませんが参議院規則56条にいて、会議録の作成について規定されております。会議録は、会議体が生み出す大切な宝物であり、会議の議題、議事、発言等が記録され永久に保存されることで、将来に渡って参照をされ続けるという点で非常に重要なものと認識しております。」

 

岡田衆議院事務総長「議院の会議録につきましては憲法57条第2項で、その公表、保存、頒布を義務付けております。その趣旨は、議院の会議の内容を国民の前に明らかにし、議院の活動を国民の監視のもとに置こうとするものでございまして、このような意味で、会議録は議会制民主主義にとりまして大変重要な役割を担う物であり、院に永久に保存をされるものと認識をしております。」

 

はい、こういうわけで議事録というのは議会制民主主義にとって永久に保存される「宝物」であると。
平成28年(2016年)4月20日、決算委員会でも吉川氏は同じ質問をし、当時の衆参事務総長から同じ答弁が出ている。
まずこの認識を共有しましょう。
その上で、

 

吉川氏「令和2年(2020年)12月24日、前内閣総理大臣が衆参両院議長に対し、国会で答弁した内容の答弁訂正の申し入れを行ったと承知しておりますが、その内容について参議院にお伺いいたします。」

 

岡村参議院事務総長「昨年12月24日、安倍晋三衆議院議員から議長に対し答弁訂正に関する申し出が文書でございました。本文を読み上げます。『私が本会議及び委員会において、内閣総理大臣として行った答弁について、事実と異なる部分がありましたことが判明いたしましたので、答弁を訂正する発言を行わせていただきたいと存じます。お取り計らいのほどよろしくお願い申し上げます。』異常が文章の内容でございます。」

 

同じ申し入れは、同日衆議院議長に対しても行われた。

 

吉川氏「令和2年(2020年)12月24日衆参両院議長に対して、前内閣総理大臣から本会議や委員会で行った答弁について、事実と異なるという申し出がございました。では、会議録の訂正はどのような手続きによって行われるのか、参議院事務総長にお伺いします。」

 

総理大臣とはいえども、「間違えたから訂正しといて」などと簡単に済む話ではない。

 

岡村参議院事務総長「会議録の訂正については、参議院規則158条において、発言した議員は会議録について各議院への提供がなされた翌日の午後5時までに発言の訂正を求めることが出来る。ただし、訂正は字句に限るものとし、発言の主旨は変更することが出来ないと規定されております。」

 

吉川氏「訂正は翌日午後5時までとなっているが、期限を過ぎた場合の取り扱いは?

 

岡村参議院事務総長「期限を過ぎた場合の訂正は認められていない。」

 

ここからの吉川氏の発言が重要。

 

吉川氏「『翌日の午後以降』という規定はとっくに過ぎているので、答弁の訂正自体は法規先例上できない。ただ、24日、前内閣総理大臣から衆参両院議長に対してこのような申し入れがあったことから、その機会として立法府は翌25日、議院運営委員会にて、その申し出を受けるための委員会を開会した。私もこの問題を議院運営委員会理事会で扱い、本件につき、『どの部分を訂正したいのか』教えてくださいとお願いしましたが、この日も、その後の議運でも明らかになっていない。本件において令和元年(2019年)11月20日から令和(2020年)2年3月4日までの、衆参本会議、委員会において、
・事務所の関与の有無
・明細書の有無
・差額の補てんの有無
について答弁している回数は?」

 

正直、この日の議運で安倍前首相が答弁に立った会議の意味を、私は理解していなかった。
安倍晋三に「言い訳の場」を提供されたものだと思っていた。
そして、安倍晋三氏は実際に、議場で言い訳に終始し、具体的な「どの答弁箇所を」「どのように訂正する」といった発言をすることはなかったように記憶している。

 

衆議院佐野調査局長「3点について安倍前総理大臣の答弁を調査したところ、事務所の関与に関しては70回、明細書の有無は20回、差額補てんに関しては28回の合計118回。答弁回数のカウントは、一つの答弁で同じ内容が複数回言及されている場合や、答弁の間に委員長の議事制限の言葉が入っている場合もそれぞれ1回としてカウントした。答弁回数はどの発言を含めるのか、どの発言を1回とカウントするのかなどにより回数が変わり得る。」

 

岡村参議員事務総長「事務所の関与に関しては70回、明細書の有無は25回、差額補てんに関しては27回の合計122回。」

 

衆参で少し違う。

 

吉川氏「衆参でカウントが少し違うのは当然のこと。事実と異なる部分については答弁者たる前内閣総理大臣しか分かり得ないことだからです。つまり、事実に反する会議録がそのまま公開されてしまっている状態に相違なく、憲法に規定される会議録の信頼性が揺らいでしまいます。また、院に永久に保存される以上、後世の参照にも耐えられないと思います。法規先例上、会議録の訂正は出来ないとしても、事実に関する箇所が明らかにならなければ、説明責任を果たしたとは言えない。」

 

最近の菅政権の低迷もあって、なにかと世間に身を乗り出してくる安倍晋三氏だが、こういうデタラメな傷を国会に残し放置したまま、病気が快復したので再び活躍しようなどというのは、とんでもない話で、こうしたことも追及しないマスコミが「第3次安倍政権か」などと囃すのは、もはや反社会的とも言える

 

「もし国会で総理大臣がウソをついたら?」そんなことは、かつての憲法草案時にさえ想像もつかなかった事態で、その矛盾だけが今も「会議録」の上に傷となって残されている。
この事態を私たちは重く考えなければならない。

 

にほんブログ村 政治ブログへ