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南ドイツ新聞が報じた木村英子氏の当選(日本語訳)

何気なく紹介したドイツの新聞記事、予想を超えるリツイートがあったのと、中身を知りたいという反応が多かったので、ザクザクと訳してみました。

当該記事のリンク

日本語訳

日本で初めて障がい者国会議員が選出される

54歳の脳性麻痺をもつ木村英子氏の当選が明らかになり、参議院運営委員会は、彼女が車いすで支障なく登庁出来るよう10日間での受け入れ準備を迫られることになった。彼女の電動車いすは、「イス」というより横になる「ベッド」に近い。両足と左手がほぼ完全に麻痺してるからだ。また、イギリスのスティーヴン・ホーキング博士と同じ病気ALSの患者である、ふなごやすひこ氏も一緒に当選し、日本で初めて二人の重度障がい者の国会議員が誕生した。

 

木村氏は、生後8か月で歩行器ごと玄関に落ちたケガがもとで、脊髄を損傷したときから麻痺を患っている。彼女は少女時代のほとんどを横浜にある特別施設で過ごしたが、まだその頃は松葉杖を使って歩行ができた。高校時代を終えると、東京の多摩で、重度障がい者の自立生活を支援するプロジェクトを立ち上げた。のちに、大学の教育学を修め、共著で自身を題材にした本『生きている!殺すな』の出版もした。

 

彼女は選挙を通して、障がい者の人権、なかでも介護・介助を受ける権利を訴えている。木村氏自身が、若い頃は3時間が3日間というわずかな時間しか付き添い介護が得られなった。家族が彼女を閉じ込め、自身は障がいを恥ずかしいと思ったあの頃から、日本の障がい者を取り巻く環境はあまり変わってはいない。木村氏の若い頃、勇気を出して外に出ると、人々は遠巻きに見たり、ビックリしたり、という反応をする。人々の方も、これまで障がい者と接したことがないので、どうしたいいかわからない。交通機関にエレベーターはないし、役所さえ玄関を超えるのが困難だった。

 

2020年のパラリンピックを誘致したことで、東京はだいぶ改善されたというものの、人々の偏見はまだ拭い去れない。従業員数の2.2%を障がい者雇用することを、大企業の目標とした法が整備されているが、省庁自らが、そのパーセンテージを水増し申告していたということも、明らかになった。

 

選挙活動中、木村氏は車いすで障がい者施設などをめぐるのではなく、他の候補者のように、駅前の街頭演説に現れた。そして、彼女の当選が確定となった月曜日の明け方、障がい者と支持者への「重い重い一票」と、その責任を重さを語った。

 

この選挙戦略の背景には、福島原発事故を機にテレビ関連の仕事をすべて投げ打って反原発を訴えた、著名な俳優、山本太郎がいる。6年前、彼は参院選に立ち、さまざまな功績を上げて来た。今年4月には自身の政党「れいわ新選組」を立ち上げた。「れいわ」とは、日本の天皇に由来する元号である。山本氏は、木村氏、ふなご氏ら9人を彼の政党の比例候補名簿に載せた。山本自身は、障がい者である両氏よりも多数得票したが、彼らを優先させることで、自身の当選は放棄した。

 

メディアは、今回の選挙を「市民選挙」と位置づけた。当選した障碍者の木村氏をはじめ、東京からは共産党女性議員、同性愛者、反原発、そして28名のこれまで以上に多い女性候補者が名を連ねた。これほど大きな「市民選挙」は、これまでの日本では見られなかった現象だ。
(クリストフ・ナイドハルト)

訳はここまで。

あまり日本のことを知らないドイツ人読者にも、分かりやすく全体像を説明しているいい記事だと思った。
最後の部分で、東京で共産党の吉良よし子氏が当選した件に触れているのは、日本人にとっては別段珍しいことでもないが、ドイツでは「日本に共産党という政党が存在すること」を知らない人が多く、意外に驚かれることが多いからかもしれない。
しかし、日本のメディアに、木村氏とふなご氏に関して、ここまで掘り下げた記事を書いているところはあるだろうか?
彼らの当選は、今後もいろんな意味で、日本社会に多くの問題提起を起こすことになるだろう。

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