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れいわ新選組、候補者に新たな「当事者」

山本太郎の政治団体「れいわ新選組」が、今日また、新しい公認候補者を披露した。
正直、度肝を抜かれた。
蓮池透氏、安冨歩氏と続いたので、そこそこ知名度のある人物が、また出てくるのだろうと思っていた。

 

でも、もっと驚いたのは会見中継を見ていた人よりも、取材に来ていたメディアの人たちかもしれない。
会見は、まず山本太郎が1人で出てきて、「新たな候補者を紹介します」という前置きを述べてから、スタッフが目の前にあったパーテーションを取り除くと候補者が現れる、という形で始まった。

 

現れたのは、木村英子氏という、首から下はほとんど動かせない重度の障がいを持った女性だった。
介助者がいなければ、生きることそのものが難しいというレベルの障がいだ。
誤解を恐れずに言うと、「候補に立つのはいいとしても、この人にいったい何が出来るのだろう」と、私は最初に思った。

 

山本太郎が、彼女を簡単に紹介すると、木村英子氏は立候補のあいさつとして、あらかじめ用意した文章を読み始めた。
興味のある方は、Youtube検索で「木村英子」を打ち込むと、トップに会見動画が出てくるので、ぜひ見ていただきたいと思う。

 

「障碍者も地域生活がしたい」彼女はそう訴えた。
「地域生活」?
とっさには意味が分からなかった。
話を聞いているうちに、「地域生活」とは、施設に閉じ込められている生活ではなく、自宅で生活し、時には外出したりする、いわゆる健常者が当たり前としている生活のことを指すのだと、分かってきた。
当事者と関わったことがない者には、なかなか想像がつかない世界だ。

 

山本太郎も言っていたことだが、木村英子氏というのは、単に「障碍者だから」という理由で推されたわけではない。
会見を聞いて、彼女には、論理的に問題を指摘し、伝える能力があることが分かった。
これまでも関係省庁の役人を相手に、様々な交渉をしてきた経験があるという。

 

一通りの出馬表明あいさつが終わり、質疑応答に入ると、一瞬会場はシン・・とした。
記者たちから、即座に質問が上がらなかったのだ。
ビデオカメラは記者たちの後ろにあるので、動画視聴者は、会見が始まってからの記者席の表情は窺うことが出来ない。
しかし、記者たちの戸惑いは伝わってきた。
そりゃそうだろう。
もし事前に候補者の事情を知っていれば、下調べなりして、気の利いた質問も用意できたのだろうが、突然「質問どうぞ」と言われても、記者はオロオロするばかりだ。
下手な質問をしてネットで炎上したりしたら、かなわない。

 

やがてポツポツと挙手があり、1人の記者から、「もし重度障碍の方が入られた場合、国会に受け入れられる態勢がないのでは?」という質問が出た。
山本が答える。
「国会には車いすではいれる議員席もなければ、議員ではない介助者が付き添うことも許されない。700人も国会議員がいて、今まで障碍者の当事者が1人もいなかった、ってことでしょ。おかしいんですよ。当事者抜きで当事者のことを決めてるんですよ。なによりも国会がまずバリアフリーであるべき。」
「企業の代弁者は山ほどいるのに、多くの方が苦しんでいる、その当事者の代弁者が1人もいないのかって話なんですよ。」

 

ここまで聞いて、最初に私が、「この人に何ができるのだろう」と考えたことが思い出された。
「何ができるか」どころか、「この人にしかできないこと」がある。
それはなにより「当事者」であることだ。

 

「当事者抜き」といえば、真っ先にこの出来事が思いだされる。
過去に、神奈川県が組織した女性活躍推進委員会が、オッサン構成員だけ、という話が疑問視されて、ネットで話題になったことがある。
これは、まさに同じ例と言えるのではないか。

一時、ネットで疑問の声が高まったものの、現時点で世の中を変えられるポジションにいるのは男性だけなので、女性に理解のある社会に作り変えていくことも、現時点で男性にしかできないとして、3年ほどたった今でも、このオッサンだけの方針は貫かれている

 

「もっと女性議員を」という動きが、ようやく可視化されてきた昨今だが、「当事者を」という意味では、山本太郎は政界では、他よりもさらに一歩先を見ているという点が、この会見で明らかになった。

 

ところで話は変わるが、ちょうど日を同じくして、大阪ではG20が開催され、世界中の要人が集合する中で、安倍首相がホスト役として夕食会を前にスピーチを行っていた。
その一部を紹介する。

110年前の明治維新の混乱で、大阪城の大半は消失しましたが、天守閣は今から約90年前に、16世紀のものが忠実に復元されました。
しかし、1つだけ、大きなミスを犯してしまいました。
エレベーターまでつけてしまいました

ちなみに、「そのミステイクのおかげで、大阪城は史跡としてはじめてのバリアフリーになりました」とか、そういうオチは一切ない。
「エレベーターを作り込んでしまった痛恨のミス」という部分が、あくまでオチなのだ。

 

バリアフリーが盛んに言われる昨今、この部分でどういう笑いを取る算段だったのだろう。
しかも、聴衆は世界の名だたるトップたちだ。
痛恨のミスを犯したのは、90年前の人ではなく、この「オチ」をG20のために用意した、安倍首相およびスピーチライターだ。
この一文は、パラリンピック開催を来年に控える国のトップの、その無理解ぶりを世界にアピールするのに十分すぎる威力を発揮してしまった。

 

国を代表する政権与党のトップと、タレント上がりのイロモノ扱いを受ける一議員と、その対照的な言動が、同じ日に発信されたというのは、なんとも言えぬ因縁を感じる偶然だった。

れいわ新選組立ち上げの時の記事はコチラ。

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