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自民党のお手盛り制度「特定枠」を独自活用する「れいわ」

また「れいわ新選組」について書くことになってしまった。
とにかく安倍政権にはウンザリなので、立憲や国民、共産といった野党たちには、もちろんそれぞれ頑張ってもらいたいと思っている。
他の野党についても何か書けたらと思ってはいるのだが、「れいわ」は、とにかく「アッ」というネタをどんどんぶつけてくる。
ブログ魂が揺さぶられて、書かずにはいられないのだ。

 

さて今回は、どんなネタで揺さぶられたかと言うと・・・

山本氏は「6年前と同じ1議席でいいのか、私は納得がいかない。1議席をより増やせるという市民の力を示していく必要がある。目標議席は5。政党要件をクリアしたい」と述べた。
また山本氏は、比例区で個人の得票に関係なく優先的に当選できる「特定枠」を活用することも表明。1位に筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の舩後靖彦氏(61)、2位に重度障害のある木村英子氏(54)を充てる。
(2019年7月3日朝日新聞)

 

「特定枠」とは、総務省の資料「参議院議員選挙制度に関する公職選挙法改正の概要」によれば、

 

優先的に当選人となるべき候補者として、その氏名及びそれらの者の間における当選人となるべき順位をその他の候補者とする者の氏名と区分して名簿に記載することができる(特定枠)。

比例名簿でいうところの上位、1位、2位ということだ。
山本自身は特定枠には入らないが、「れいわ」内で最も多く個人名で得票することが予想されるので、事実上3位になるわけだ。

 

ここでちょっと興味深いのは、この「特定枠」制度の目的だ。
同資料によれば、

全国的な支持基盤を有するとはいえないが、国政上有為な人材あるいは民意を媒介する政党が、その役割を果たす上で必要な人材が当選しやすくなるよう・・・

ふうん・・全国レベルでは無名だけど有能な人材・・・どんな人を想定して、わざわざこんな条項を作ったのか、なんとなく腑に落ちない。
それもそのはず、この能書きは、実は表向きのキレイごと。
本質はこうだ。

 

参院選での選挙区は、基本的には都道府県に分かれているのだが、2016年の選挙から、人口の少ない「鳥取・島根」「徳島・高知」が、2県で1人を選出する「合区」となった。
そしてここには、すでに各県に1人ずつ4人の現職自民議員がいる。
そこで、行き場のなくなった2人の自民党議員を救済するために設けられたのが、この条項なのだ。
実際、今回の選挙でも、それぞれの合区から1人ずつ発生したあぶれ議員2人に、「特定枠」で当選保証をしている。

 

そういう事情を踏まえて、「自民党内の調整」を目的とした、お手盛り法案だったのだ。
国会審議では、ずいぶんと野党のブーイングにあったものの、ここは自民党の通常運転、数の力で可決した。

 

また、「特定枠」候補には、選挙運動の制限もある。

特定枠に記載されている候補者の選挙運動
特定枠に記載されている候補者には、参議院名簿登載者個人としての選挙運動(選挙事務所、自動車、ビラ、ポスター、個人演説会等)を認めない

 

なぜ制限が必要かというと、合区で「特定枠」指定されなかった候補者は、おとなりの県も駆けずり回って運動しなくてはならない。
そこで「元」候補者に、地元で選挙運動をされては、有権者・支援者も混乱する。
なにもかも、自民党の内輪のために考えられた制度なのだ。

 

当然、今回の選挙でも、こんな制度をわざわざ使うのは自民党くらいのものだろうと思われてきた。
ところがどうだろう。
山本太郎が、ここに重度障碍者の候補者を当ててきたのだ。
なんだろうこの、得も言えぬ皮肉さは。

 

木村英子氏の出馬会見では、「街頭演説などは、どうするのでしょう?」と質問した記者がいた。
山本は、「体調もありますし・・」などと回答を濁していたが、その頃にはもう「特定枠」の話は決まっていたのだろう。

 

おそらくこれで、特定枠1位の舩後(ふなご)氏は当選確実と言える。
自民党が、お手盛り法案の体裁を整えるためにラベリングしたキレイ事、「全国的な支持基盤を有するとはいえないが、国政上有為な人材」が、現実に1人国会に送られることになる。
なんだ、このワクワク感は。
そして参院は、早急にバリアフリーを求められることになる。

 

ただ、ここで山本太郎のコアなファンたちには、とてもハードルの高い要求を突きつけられることになった。
山本を含め、比例で3人以上当選させるには、最低でも300万票必要だとされる想定もある。
300万票集めないと、山本自身が国会から撤退することになってしまう。
次の衆院というチャンスもあるものの、それにはまだ2年近くの時間がある。
選挙といえば、いつもはふんぞり返って偉そうにしている政治家たちが、このときばかりは「お願いします」「よろしく」と、ペコペコするシーンが想像されるが、山本の場合はそうではなくて、本当にコアなファンに向かって、「オレを国会に送りたければ、おまえら、300万票集めてみろ!」と、檄を飛ばされたかのように感じる。
これは、支援する側の「本気度」も試される。

 

はてさて、4日からはいよいよ公示になるわけだが、ここから約2週間でどんなふうに世の中は動くのか。
奇跡は起こるのか?
今回の選挙、いつになくワクワク感がある。

 

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