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英語民間試験だけじゃない、典型的な安倍政権スキーム

11月1日、「身の丈失言」で、格差を容認するともいえる態度を示してしまった萩生田文科大臣が、渦中の英語民間試験実施の延期を表明した。
わずか一週間の間に、菅原経産相が「メロン・香典」疑惑で辞任、河井法務相が妻の選挙違反疑惑で辞任、と相次ぐ不祥事と並行して問題になった萩生田文科相の失言には、政府の対応も速く、問題の試験制度はあっという間に引っ込められた。
ただこれは政府というよりも、延期に対してグズグズ言っていた文科省に、官邸がトップダウンで延期を命じたいう見方が報じられている。

 

このようなゆがんだ試験制度が、なぜ導入されたのかと多くの人が疑問に思っているかもしれない。
だが、これが安倍政権の通常運転だということを、もっと一般に知られる必要がある。
今回はたまたま、制度によるゆがみが、受験生にダイレクトに悪影響を与えるものであったから、深刻な「当事者」が多くいて、反発が大きかった。
いい加減な組閣で、次々と辞任者を出した時合いもあって、官邸はこの政策を引っ込めざるを得なかった。
これが少し前の話であれば、世間がどう騒ごうが、与野党の数の差で強行されていたであろう。

 

安倍首相界隈と関係の深い業者を特別に優遇して、莫大な利益を誘導するシステムといえば、これまでもいろいろなアヤシイ事業がたくさんあった。
加計学園で話題になった、「国家戦略特区」もその一つだ。
安倍首相が、官邸に私的諮問機関を開き、利益相反者を「有識者」として集めて儲け話としての政策を練らせる。
(そもそも、官邸に「私的」って、どういうことなのだ。)
公私の区別が限りなくゼロに近い、安倍政権の特徴を表している。
こういうめちゃくちゃな国家行政で、日本は安倍政権の間にずいぶんと疲弊した。

 

今回の民間試験制度の出所を探っていくと、これまでの「国家戦略特区」とその性質はほとんど変わらないことが分かる。
安倍首相のもとに、私的諮問機関として「教育再生実行会議」を置き、利益相反する「有識者」たちを集め、いかに儲かる利権システムを作るかに血道を上げる。
典型的な安倍政権での利権誘導スキームなのだ。

 

しかしこれまで、人々はそういう安倍政権の悪政にあまり関心を示してこなかった。
それは、その政策で直ちに多くの人が大きな迷惑を被るという性質のものではなかったからかもしれない。
税金がどこかに回されるとか、どこかの企業が優遇されるとかいうのは、直ちに個人的に災いが降りかかるものではない。
見なかった、知らなかったことにして無関心でいようと思えば、無関心でいられなくもない。

 

ただ、今回は違った。
一生を左右する受験制度のゆがみは、全国の受験生一人一人に災いをなす。
これまで、「国家戦略特区」で好きなように仲間に利権をばら撒いてきた安倍政権は、「なにをしても世の中は騒がない」とタカをくくって、手荒に「入試」という部門に手を突っ込んだ。
それが今回のような顛末を呼んだのだろう。

 

それでも一部の学生たちは、民間試験導入に対しては、以前からずいぶんと抵抗をしていた。
8月の参院選で、応援演説をしていた柴山文科大臣(当時)をヤジって、警察に排除された学生を覚えているだろうか。
あれは、まさにこの民間試験に反対しての行動だった。

 

柴山文科相 ヤジ大学生を警察によって排除
埼玉県知事選の応援演説会場で起きた、ヤジをとばした大学生が警察に乱暴に排除された件、ツイッターではずいぶんと話題になっていたのだが、ついにマスコミに取り上げられた。 朝日新聞の記事を見ると、文科相の定例会見での発言のようだったので、動画を...

 

萩生田文科相が延期を表明した1日には、多くの高校生が国会議事堂に集まったという。
この日、野党は「延期」を受けて、「野党緊急全議員集会」というものを開いた。
こんな集会、今までにあっただろうか?
私の記憶の限りでは、ないと思う。
集会のもようを動画で見ると、野党各党の代表が短いスピーチをし、民間試験延期の結果に鬨の声を上げ、内閣総辞職に向けて与党を追い込もうという結集大会だった。
その後、国会に来ていた高校生たちが野党議員にお礼を言う、というイベントもあったようで、野党議員全員の集会は、これまでにないくらい士気が上がっていた。

 

安倍政権になって以来、官邸トップダウンで進めた政策が、こんな形で頓挫したのは初めてのことではないだろうか。
これはひょっとしたら、安倍政権の求心力が下がってきたという兆候なのかもしれない。
また、今回のことで、学生が抗議集会などを催し、「政治への働きかけで、政治は変えられる」というシーンを実感できたことも大きい。
これが、安倍政権落日の第一歩となるといいのだが。

 

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