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NZ無差別乱射事件から「普通」の人が持つ「憎悪」を考える

3月15日、ニュージーランドのクライストチャーチにあるモスクで、凄惨な無差別殺人事件があった。
これまでの死者が49人と、数ある過去の銃撃事件と比べても、ことさらに被害者の数が大きい。

また、フェイスブックで一部始終をネット中継され、動画が拡散されたことも、これまでには例のないことだ。
現在、凄惨な動画を当局やSNS運営会社などが躍起になって消去しているそうだが、すべてのインターネットからの完全消去は、おそらく不可能だろう。

犯人は「反移民主義」「白人至上主義」「極右」なのか?

犯人の声明文から、男が「白人至上主義」「反移民主義」などと報道されているが、私は少し違うと考えている。

ヨーロッパを旅行して、犯行の意思を固めたというが、世界的にも報道されている通り、確かに、欧州では「移民」「難民」が過去5年ほどで大きな問題になっている。

ドイツでは、シリア難民を大量に受け入れてからというもの、極右政党が立ち上がり、ぐんぐんと支持率を伸ばしはじめた。
報道ではよく「反移民・難民」と言う言葉が使われるが、主な憎悪は、日本人も含めた「外国人」ではなく、ムスリムに向けられているのが実態だ。
地域性から、シリア難民は、そのほとんどがムスリムの人々だったので、彼らに向けられた憎悪の主張が、「反イスラム」なのか「反難民」なのかは、ドイツで生活している人にも、ピンと来ないかもしれない。
まして、日本にいる人には、なかなか伝わりにくい実情かもしれない。

理由は分からないが、メディアも「反イスラム」という言葉をあまり使いたがらない。
実際、あまり聞くことはない。
白人の中に、「キリスト教とイスラム教」という構図にしたくないという、潜在意識があるのだろうか?
それとも、政治的に不都合があるのだろうか?
ちょっと私にはわからない。

いずれにしても、欧州旅行がきっかけで、その後あえて「モスク」という場所を選んだことからも、この男は「移民」を憎んでいたわけではなく、「ムスリム」を憎んでいたのだ、と想像する

考えてもみてほしい。
主犯の男性は、オーストラリア人だという。
「移民」を不満に思うのに、対象が最も数の多い中国人ではないところが、なんとも辻褄が合わない。
狙ったのが、「モスク」だったというところに、犯人の憎悪が一般に言う「移民」に向けられたものではないことが、はっきりする。

「普通」に込められた意味

ところで、この犯人は、70ページ以上に及ぶ犯行声明を出しているのだが、この中にどうしても気になる部分がある。

彼が、自分のことを“ordinary white man” 「普通の白人男性」と称していることだ。

ツイッターで政治的なアカウントをフォローしている人は、ハッと思うかもしれない。
ネトウヨと言われる人たち、つまり、在日の東アジア各国の人、または東アジアの近隣国を、過激な言葉で罵る人たちが、
プロフィールで好んで使う言葉が「普通の日本人」なのだ。

モスクで大量殺人を犯したこの犯人が、自分を「普通」と名乗る、この異様な共通点に、寒気すら覚えた。

「普通」、つまり自分がマジョリティーであると示すことで、歪んだ言動の「正当性」「正義性」を誇示したいのかもしれない。

この事件を受けて、「日本はこれから移民が増えるから、こういう事件も他人ごとではない」などと、「移民」というワードから、将来を危ぶむ人を、ネットでたまに見かけたが、それは違うと思う。

同じような火種は、「普通の日本人」という独特の表現に、すでに潜んでいると言っていい。

銃撃事件を受けた、安倍首相のメッセージがちょっとおかしい件

この事件を受けて、安倍首相は同日夜に、アーダーン首相にメッセージを送った。
被害者ヘの哀悼の意とお見舞い・・まではいい。
その後のくだりが、ちょっとおかしい。

「テロはいかなる理由でも決して許されず、日本はニュージーランドや国際社会と手を携えてテロと断固として戦う決意だ」

戦う決意?
ナニと、どうやって?戦うとお考えなのだろうか?

官邸には、外国でテロ事件が起きた場合の声明文のひな形があって、そのまま名称だけ入れ替えて使いまわしているのではないか、と疑いたくなるくらい、適さない文言だ。

犯人は、政治組織や思想団体、武装集団といったものを背景に犯行を行ったわけではない。
IRAとかISのような、戦うべき相手組織はないのだ。

唯一、今回のテロで戦うとしたら、最大の敵は「ヘイトクライム」だろう。

正直言って、今の総理大臣ほど、ヘイトクライムに甘い人はいない。
さすがに本人がヘイトスピーチをすることはないけれど、「普通の日本人」を名乗るヘイトスピーカーを中心に絶大な支持を受けているのが、今の安倍首相なのだ。

今回のテロを受けて、
安倍さん、あなたが戦わなければならない相手というのは、間違いなくこうした、あなた自身が後押ししている「憎悪」ですよ。

そういうことを全く理解せずに、「テロと断固として戦う決意」などと、今回の事件に関して、トンチンカンな声明を発表する現首相に、頭痛がし、羞恥を感じ、反発を覚える。

 

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