政治アナリストの伊藤淳夫氏が、ラジオ番組でちょっと気になる話をしていた。
日ロ首脳会談の直前に、河野外相と会談をしたラブロフ露外相が、「北方領土という名前を変えろ」などとかなり厳しい態度を取っていたことは、以前にすでに紹介した。

それに関して「とある総理に近い人」が、
「あれはね、牽制なんだよ。本音は違うんだよ。」と言っていた、
というものだ。
なんと。
首脳会談直前に、岸田氏や甘利氏など、いわゆる自民党の重鎮たちが、
「北方領土問題、前進に期待感」
なんてマスコミを前に語っているのを見て、
「そりゃ先行き不安だ」なんてことは、自民党のメンツにかけて言えないだろうから、無理もないと思いつつも、そんなくだらないメンツ発言をいちいち記事にしなければならない新聞記者も、面倒な商売だな、などと同情していた。
ところが、この伊藤淳夫氏の話がガセでないとすると、官邸界隈は、
「プーチン大統領と安倍さんの親交の深さをもってしたら、北方領土は解決するだろう」
と、本気で思っていることになる。
これはかなりの情弱と言える。
官邸界隈が情報弱者とか・・、いったいどんな国なのだ。
これまで、「安倍さんがトランプと親友」とか「プーチンと親友」とかいうくだらない報道は、「仲が良ければ順調な外交が出来ると信じてしまう愚かな国民」向けのプロパガンダかと思って、そのたびに腹を立てていた。
が、プロパガンダであった方がまだマシ、という話なのかもしれない。
それなら政府は、やり方が汚いとは言え、冷静な状況判断ができているということだ。
で、怖いのは、その官邸の「情弱ぶり」をロシア側が察知していないはずがないということだ。
当然、交渉に利用するだろう。
通訳だけを交えた「1対1」の話し合いの場で、プーチンはこう言ったかもしれない。
「この間はうちのラブロフが失礼なことばかり言って悪かったねぇ。話し合いはやっぱり安倍さんと僕とでなきゃダメだ。僕ら二人の信頼関係を平和条約という形で、世界に大いに示そうじゃないか。北方領土?安倍さんの頼みだから、サクッと返還したいところだけどね、ロシアの世論もなかなか大変なのよ、分かってくれる?必ずそのうち何とかするからさ、キミの得意な経産省を動かして、ドーンと経済協力してよ。経済に強い安倍さんの投資力を得れば、わが国の世論もきっと変わるにちがいない。それは安倍さんにしかできないよ。外務省?ダメダメあんなの話にならない。やっぱり安倍さんだよ。だから今日の記者会見でも、北方領土には触れないほうがいいね。お互いのために。」
なんてさ。
これは100%私の想像だけど、その後の記者会見と引き比べると、辻褄が合わぬこともなくて震える。
今、最も有効なのは、交渉から撤退すことだと思う。
歴代の政治家が、60年以上もかけて、思うようにいかなかった難事業だ。
それを安倍さんの代で、おかしなラインで手打ちにすれば、他の領土問題にも影響が出かねない。
撤退あるのみ。