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安倍政権は不景気と少子化問題に対策できるのか?

12月5日に閣議決定された「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」によれば、現時点での日本経済が置かれている状況は、「日本経済が緩やかな回復基調を保つ中で、先行きリスクが視界に入りつつある・・・」のだそうだ。

 

ネーミングといい、その内容といい、いろんな意味で「寒い」広報だ。
先行きリスクが視界に入りつつあるのなら、なぜこのタイミングで消費増税なんかしたのだろう。

 

消費税10%のせいで小売業全体の売り上げが、かつて2014年の消費増税5%→8%が実行された時よりも、さらに落ち込んだという10月の商業動態統計の速報値は、すでに多くのマスコミによって報じられている。

 

13日になると、その不景気の風が労働市場にも吹き始めたとのニュースが流れて来た。

 

製造業の新規の求人数は、ことし2月から前の年の水準を下回るようになっています。特に、夏以降は8月が15.9%、9月が11%、10月が15.6%、それぞれ少なくなりました。
(2019年12月13日NHK)

 

消費税が景気を押し下げたというより、すでに不景気入りしているところに、まるでとどめを刺すようなタイミングで導入されたと言ったほうがいいのかもしれない。

 

東京にある人材派遣会社「アウトソーシング」は、自動車や機械メーカーなどさまざまな業種に2万人以上を派遣している業界大手です。
しかし、会社によりますと、製造業ではことしの夏から期間従業員の新規の募集を見合わせるメーカーが増え始めているということです。会社がことし10月に「自動車・重機・バイク」の工場に派遣した人の数は、前の年より40%以上少なくなりました。
(2019年12月13日NHK)

 

工場に限った話とはいえ、「前の年より40%以上減少」というのは恐ろしい数字だ。
この「非正規」と言われえる人たちの間で、「去年はあった仕事に、今年はあり付けない」という現象が、かなりの人の身の上に降りかかっているに違いない。

 

他にも、大企業の製造業の景気判断の指数である「日銀短観」が4期連続悪化。
10月の「機械受注統計」が4か月連続でマイナス。
最も景気に敏感だと言われる飲食店は、帝国データバンクによれば、2019年の倒産件数が、このままいけば過去最多を記録しそうだという。

 

ひたすらマズい題材しか出てこない。
それなのに、株価だけはグングン上昇する不気味さ。

 

こういう状況を、官邸は分かってか、分からないでか、実に内容のない経済対策を打とうとしている。
お得意の「やってる感」でごまかそうという話だろうが、一つ一つ見ると、あまりに内容がヒドイ。

 

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この先どんな厳しい経済状況になろうと、安倍政権は大企業の苦しみはやわらげようとはするかもしれないが、全体が救われる対策を打つ発想はないように思う。
このまま景気が冷え込み、国内消費が落ち込めば、それが原因で業績が悪くなった大企業を救済するほうにのみ力を注ぐだろう。

 

消費を押し上げることを先に考えなければ、どんなに企業を救っても、消費者がいない世界で全体は報われない。
それどころか、どんどん負のスパイラルに陥る。
安倍首相には、残念ながら「全体」のことを考える力がない。
全体主義はお好きなようだが。
ポスト安倍とか言われている岸田氏は、先日どこかで「首相の器は耐えること」なんて言っていた。
それ、平成の発想でしょう。
令和になって、人口分布も今後さらに変わってくるし、世界の潮流も変わってくる。
今までと同じ方法を、ただ「耐えて」続けていたのでは、いつかどこかで破綻する。

 

高齢者を不遇な目に合わせないようにしながら、あまり遠くない未来に高齢者となる「就職氷河期世代」への底上げも必要だし、子育て世代に安定した収入を保証することも必要と、やるべきことはあまりに多い。
救いが必要な世代が全世代に及ぶので、どうしても「生産」をしなくなった高齢者層の生活の安定を軽視する傾向も見られる。
しかし、高齢者への待遇は、高齢者自身だけの話にはとどまらない。
そのすぐ下の中年層から若年層までの人々には、「今の高齢者」の姿が、自分の老後の「未来図」として映るからだ。
今現在の高齢者が厳しい待遇を受けていれば、それは数十年後の自分の姿として投影され、「将来不安」に結びつく。
若い世代の「将来不安」は、まっすぐに少子化に繋がる。

 

こう考えると、経団連会長なんかを内閣府に呼んで、その提案を丸呑みしているような場合ではないのだ。
財界・産業界の「おじいちゃん」たちが、その実を結ぶまで数十年かかる「少子化対策」なんてするわけがないだろう。
少なくとも、そのおじいちゃんたちが、若いときにすでに分かっていた「少子化」を無視し続けて来たことも原因になっているのだから、これから新たに少子化について真剣に考えるとは到底思えない。

 

安倍政権が揺らいでいる今、次の政権がどうなるのか、自民党内から代わりが出るのか、他からか?そうした政局は、あまり問題でない。
一番重要なことは、30年後、50年後を考えられる人が国の中枢に必要だということだ。
現時点で「この人」というのは明確には浮かばないが、多くの人がそういう人物を望むと、不思議なことにどこからともなく表れるものだ。

 

今の世論に必要なのは、「安倍首相の代わり」という誰かに依存した期待よりも、誰とは分からないが「こういうことを考えられる人」というような具体的な理想像ではないだろうか。

 

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