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「ふるさと納税」はすぐに廃止すべき

ふるさと納税に関する問題が、あちらこちらで小さく吹き上がっている。
が、一つ一つの問題が分散しているうえに、それぞれが話題として扱いが小さく、総体的な問題の大きさが分かりにくい。

今回はひとつ、それらの小さな記事をかき集めて、実は日本全体にわたる大きな問題であることを、確かめてみようと思う。

高額納税者に対する優遇にしかならない

このシステムは、所得税・住民税の納税額をマックスに、「返礼品」という名の、お得ショッピングに参加できる仕組み、とも言い換えてもいい。
本来なら「徴税」という形で取られ、何のリターンもない(納税なんだからそりゃそう)支出であるものが、このシステムにより、2000円だけ自己負担すれば、納税額の4割、5割に相当する返礼品を手に入れることが出来るのだ。

「高額納税者救済システム」と言っても過言でないくらい、逆に言えば、低額納税者には無縁のシステムなのだ。

徴収方法が、鬼のように非効率

「返礼品」の高額化、換金性が問題になり、2019年春からは「寄付額の3割まで」という規制が出来た。
4割5割以上の高額品を返礼品としていた自治体が、大部分だった。
また、多くの制度利用者は、さまざまな自治体の返礼品を紹介するポータルサイトを経て、比較し、寄付先を選択する。
このとき、「手数料・成約料」として寄付額の10%相当が抜かれることは、一般的だという。

ざっと見ても、すでに40%が消えいている。
他にも自治体は、寄付金を集めるために、ネットに広告を掲載する、チラシなどの紙媒体も作るなどの諸経費もかけている。
国の言う通りに、寄付額の30%に返礼品のコストを抑えても、実際の収入は約半分くらいになってしまうのが、この制度なのだ。

このストーリーをもう少し俯瞰して見ると、
自治体Aに住む人が、自治体Bに10万円寄付をすることで、

自治体A→10万円の減収▼
自治体B→5万円の増収△

日本全体で見れば、あったはずの地方税の収入が、この制度を経た分だけ50%減少してしまうのだ。
くどいようだが、これはあくまで、自治体Bが、寄付額30%までの返礼品という、今年度からのルールを守った前提だ。

それで誰が得したかというと、

・本来、なかった税収が得られるようになった、自治体B
・返礼品の分だけ得をした、制度利用者
・広告業者、ポータルサイトの運営企業等、利用者と自治体の間に入って抜いた業者

ということになる。

2019年の2月には、とうとう世田谷区が、この制度によって税収が53億円も減少し、円滑な区の行政運営に支障が起きかねないと、事態の深刻さを発表した。

苦しんでいるのは、首都圏ばかりではない。

朝日新聞によれば、

全国の自治体の約6割で前年度より悪化したことが朝日新聞の調べでわかった。大都市から地方への税収移転を狙った制度だが、返礼品競争の過熱で特定の自治体に寄付が集中。本来、恩恵を得られるはずの地方の町村でも、住民がよそへ寄付することによる税収流出に苦しんでいる。(2018年12月28日)

ということも起きている。
特に、人口がさほど多くない地方自治体では、少ない高額納税者がこの制度でよその自治体に寄付してしまった時の損失は、さらに大きいだろう。

これらの混乱を踏まえて、政府は2018年頃から、
過度に高額な返礼品や、換金性の高い商品、自治体と何の関係もない産品を返礼品とする、「自粛」を求めたが、カネの競争が始まったら、人に「自粛」などというブレーキが利くはずがない。

大阪府泉佐野市が、「アマゾンギフト券100億円キャンペーン」をぶち上げるなど、「自粛」どころか、加熱は増すばかり。
とうとう、政府は、ふるさと納税高収入の泉佐野市をはじめとした4自治体に対して、特別交付税を配分しないという、荒業まで使わざるを得なくなった。

この制度は、税収をあげる制度ではなく、自治体AからBに移行するだけの制度だ。
決まったパイの中で、自治体同士が熾烈なパイの奪い合いになることは、誰だって想像がつく。
いったい、このシステムの発案者は、なにをしたかったのだろう。
広告業界のためだろうか。

他にも、地方には混乱が出ている。
愛知県春日井市では、23万円相当のドイツ製自転車を返礼品に予定していたが、政府からの30%ルールに則り、これを中止したため、すでにまとまった台数を納品準備していた輸入業者が大損害を被り、市を相手に訴えた。

また、香川県三木町では、町と関係のない高級毛ガニを返礼品としていたが、地場産品というルールを
守ったところ、寄付金が激減し、総事業費約9億円で予定していた、「子育て支援施設建設」計画がとん挫した。
最近は「子育て」と名を付ければ、なんでも公共に貢献しているかのイメージがあるが、そもそも、人口2万7千人の小さな町に、9億円の子育てハコモノが必要なのか?

普通に徴税して、地方で本当に必要な自治体があれば、分配する。
そういう当たり前の徴税システムであれば、倍以上の金額が本来は有効に動かせるのだ。

返礼品代金だの広告代だの中間マージンだので、手取りがやせ細る税制など、愚かに尽きる。

最後にもう一つ

知らない間に「企業版ふるさと納税」なるものが誕生していた。

東北電力が東通村に「企業版ふるさと納税」で約4億円を寄付する方針を示したことについて、
世耕経済産業大臣は一定の理解を示しました。
東北電力は企業版ふるさと納税を利用して東通村の経済を活性化させるとしています。
(2019年3月22日テレビ朝日)

原発応援。
許されるのか・・・こんなの。
これも、東北電力が本社を置く仙台市で、4億円分控除を受けるのだろうか?
これでは企業が堂々と、地方の町村に札びらでビンタを食らわせることが可能になってしまう。

色んな意味で害しかない、広告業と高額納税者しかいい思いが出来ない税制は、さっさと凍結すべきだ。
あまりに恩恵を受ける人が少なすぎる。

 

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