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「携帯料金値下げ」はいつからコロナ対策になったのか

スガ首相が標榜している携帯料金値下げ。
これはずいぶん前からスガ首相が訴えてきた政策だが、最も国内で知られることとなったのは、2018年9月の沖縄県知事選ではないだろうか。

 

 

現デニー知事の対抗馬として立候補したさきま氏が、当時官房長官のスガ氏のてこ入れを受け、なんとも奇妙な話だが、沖縄知事選の公約として「携帯料金の値下げ」を掲げた。
が、この時さきま氏は落選した。

 

さて、携帯料金値下げの裏には、携帯キャリア会社の暴利とか、テレビ局をも含めた利用電波帯域の小競り合い等があると言われているが、今回それはあえて横に置こうと思う。
それは、10月10日時点でこの「携帯料金値下げ」案件に、思わぬラッピングが施されるようになってきたためだ。

 

まずは、違和感を感じた最近のニュースを10月08日の時事通信から紹介しよう。

 

菅義偉首相が求める携帯電話料金引き下げをめぐり、武田良太総務相は8日夕、総務省で利用者との意見交換会を開いた。利用者側からは新型コロナウイルス禍で携帯料金負担が重くなっているとの意見が相次いだ。武田氏は終了後、記者団に対し「公正な市場競争が可能になる環境整備に努めたい」と値下げ実現に改めて意欲を示した。

 

総理大臣になってスガ氏は、この値下げ推進を非常に急ぐようになった。
担当するのは、武田良太総務大臣。
九州での地方選挙をめぐって麻生太郎氏とバチバチになっている人物を、スガ氏は重要政策の担当省庁である総務省に据え、また武田氏の方もこの重要な役回りを果たそうと懸命になる。
武家社会の「御恩と奉公」みたいだが、まあそれは余談である。

 

気になるのはここからだ。

 

意見交換会は非公開で行われ、主婦連合会、全国消費生活相談員協会のほか、シングルマザー、高齢者、フリーランスの各団体代表が出席。総務省によると、会合では「自動配信される動画に通信容量を割かれ、高い料金が負担となっている」「支払いを延滞すると、信用上、その後のローンにも響く」と切実な声が多かった。

 

自動配信される動画は、ユーザー側で設定しブロックすればいいのではないか?
また、携帯料金を延滞してしまうような人が組んでいるローンとは何だろう。車?家?リボ払い?
これらの問題は、携帯電話の料金値下げとはあまり関係のないところにあるように思う。

 

同省が普及を目指している格安スマートフォンについても「利用を始めるにはハードルが高い」と分かりづらさが指摘された。一方で、「料金値下げにより品質やサービスの低下があっても困る」との注文も出た。

 

格安スマホのハードルとは、多分SIMカードを自分で調達したり、それをスマホの裏蓋から自分で入れて初期設定をする等の作業が、一部の人にとって面倒、或いは難しいという話だと思う。
携帯ショップですぐに使える状態にセットアップしてもらう、というサービスが入れば値段が上がるのは当然のことのように思う。
武田大臣が催したこの「意見交換会」で出てきた意見から見える問題のほとんどが、携帯料金の多寡ではなく、別のところにあるように思えて仕方ない。

 

いや、私は別に大手キャリアの回し者でもなければ、値下げそのものに反対する理由は全くない。
ただどうも気にかかるのは、「意見交換会」から出たというこれらの意見が、政府が民間企業に介入して値下げを強要する根拠づけにあまりなっていない点だ。

 

しばらくして今度はこんな報道があった。

 

武田良太総務相は10日、テレビ西日本(福岡市)の番組に出演し、菅義偉首相が掲げる携帯電話料金の引き下げについて、携帯大手3社に早期の取り組みを促した。
武田氏は、携帯料金が家計の負担になっているとして「これはコロナ対策でもある」と強調。値下げの方向性を出す時期について「私が目標を申すべきではない」としつつも、「一刻も早くコロナに打ち勝ってもとの日本経済を取り戻すためにも、一日も早く家計に力を持ってもらう。そのためには(携帯大手3社に)一日も早く努力をしてもらいたい」と述べた。
(2020年10月10日朝日新聞)

 

数年前から言われてきた携帯料金値下げ案件が、いつの間にか「コロナ対策」になっていた。
コロナ禍で傷んでいる家計を携帯料金の値下げ分でカバーしようというつもりなのだろうか。
いったい何割下げさせるつもりなのだろう。
と、同時に、コロナ禍で傷んでいる世帯収入を財務省からの支出なしに、民間で補おうとしている信じがたい政府の態度が見える。
これが、スガ氏の主張する「自助、共助、公助」なのか。

 

また、携帯キャリアの企業にとっては、「これはコロナ対策である」と強調されれば、政府の言うがままにならない場合には、コロナ禍に協力しない不届きな存在と世間から謗られかねない。

 

実現すれば、多くの人が大なり小なり恩恵を受ける携帯値下げではあるものの、どうも現時点で政府のやろうとしていることには、なにか「歪み」を感じずにはいられない。

 

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