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菅義偉 出馬会見に見る次の政治像

9月2日に行われた、菅義偉氏の自民党総裁選出馬会見。
すでに党内の派閥の調整を終え、国会議員の7割方を押さえた菅氏の会見は、「出馬表明」というよりも「時期総理ほぼ決定会見」という趣であった。
現場に詰めていたマスコミたちも、そういう意識で質問等に臨んでいた人が多かったろうと思う。

 

菅氏の会見内容を大まかにまとめると、「安倍政権の続けてきたことを変更なく引き継ぐ」という意思がよく表れた内容だった。
これまで自身の政治信条を公で語ることはあまりなかった菅氏だけに、この人ほど変更なく安倍政権の仕組みを引き継いでくれそうな時期総理は他にいないのではなかろうか。
安倍政権の権力の「しくみ」にいろいろな形でぶら下がっている人たちの多くは、この会見を見て「菅氏なら安心だ」とさぞホッとしたことだろう。

 

基本的に「安倍路線継続」ではありながらも、菅氏の政治理念がチラリと覗いた部分もあった。
その箇所が、次のくだりだ。

 

菅氏「私自身、国の基本というのは、自助、共助、公助であると思っております。自分でできることはまず自分でやってみる、そして、地域や自治体が助け合う。その上で、政府が責任をもって対応する」

 

「自分でできることはまず自分でやってみる」
国家の行政の長にこれから立とうという人が、この一文を自身の「セールスポイント」として紹介していることで、彼の立ち位置から彼が見ている風景が、私たちの見ている風景と大きく違うであろうことがよく分かる。
口ではきれいなことを言いながら、本音がココにある、というのは政治ではよくあることだ。
しかし、くどいようだが彼は、これを自身の考え方の「セールスポイント」として語っているのだ。
菅氏の視界がどっちの方角に開けているのか、よく分かる。
彼の視界に、市井でつつましく生きる一般市民の姿は一人も入っていない。
この人に「公助」に関する仕事は出来ない、ということが確定した瞬間だ。

 

そして次に気になった発言がこちら。

 

菅氏「森友問題は財務省関係の処分も行われ、検察の捜査も行われ、すでに結論が出ていることでありますから、そこについては現在のままであります。また、加計学園問題についても、法令にのっとり行うプロセスで検討が進められてきたというふうに思っています。『桜を見る会』については国会でさまざまなご指摘があり、今年は中止して、これからのあり方を全面的に見直すことに致しております」

 

極めつけである。
森友・加計問題に関して「プロセスが踏まれている」と言えてしまう政治家は、今後の日本には不必要な人材だ。
安倍政権下でもっとも大きく毀損されたのは、国が踏むべき行政手続きや不文律の慣習だ。
それに対してなんの反省もないどころか、「あれは正しかった」と言えてしまう神経の持ち主を総理大臣に頂くのは、この国の将来にとって危険極まりない。

 

菅氏が安倍政権を丸ごと受け継ぐということは、こうした安倍政権が破壊してきたことをも受け次ぐということだ。
今後も、行政手続き、不文律、公文書などは、この人の下で、日々破壊されていくのだろう。

 

今回の総裁選びは、自民党員の正規の選挙ではなく、緊急時対応として国会議員だけの投票で済ますことが、二階幹事長によって発表されている。
露骨な石破外しとも取れるこの方法には、地方の党員だけならず国会議員の中にも反発がある。
その「プロセスを無視するやり方」こそが、安倍政権が7年8か月にわたって行ってきた政治のキモである。
これまで安倍政権を支えてきた地方の自民党員は、そのやり方がとうとう党内でも用いられたにすぎないことに気付いてほしいと思う。

 

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