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自民党総裁選・三者会見の雑感

2020年9月8日、自民党の開催する総裁選候補の三者会見が行われた。

 

参加したのは言うまでもなく、菅義偉氏、石破茂氏、岸田文雄氏の三者である。
この中でスガ氏が当選するのは既定路線だが、3方がどんな気質、ビジョンの持ち主なのか、来年迎える本チャンの総裁選でも参考になるだろうと思い書き留めておく。

 

まずは、穏やかな外貌でテレビ映りは最も有利な岸田文雄氏。

 

彼は安倍政権の問題点をよく整理し、理解していると思われる。
とは言え、私物化と言われる権力のあり方、アベノミクスで開いた格差などの安倍政権における代表的な問題について、それをあからさまに言及することはない。
禅譲をただただ期待して、長い間安倍首相の傍らに、文句も言わず付き添ってきた立場もあるのだろう。
岸田氏の欠点は、それらの問題点を理解しながら、「どうにかしなければならない」「議論する必要がある」という言葉ばかりが結論で、その問題を「どう」解決するかという提案は一切ない。
遅ればせながら「岸田ビジョン」という本が慌ただしく出版されたが、総裁選を機にメディア露出が増えたにもかかわらず、この「どう」の部分に言及が一切ないということは、非常に残念な点だ。

 

次はテレビに出ると、とにかく顔が怖い石破茂氏。

 

この人も安倍政権の欠点をよく知っている。
経済で最も重視しているのは、アベノミクスによる地方の疲弊。
安倍政権の権力の使い方、さまざまな不祥事にも具体的に斬りこんだ。
河井事件の1億5千万円の原資は政党交付金であり税金からでていること、カジノ汚職で逮捕された秋元議員は離党しても自民党が公認を付けて出馬させた責任があること、などを億すことなく言葉にする。
安倍政権とは距離を取っていた人だけあって、現在政権がスキャンダルとして抱えている問題には遠慮なく切り込む姿勢を崩さない。
また、安全保障に話が及ぶと、軍事マニアの彼は驚くほど饒舌になり、立て板に水とばかりに専門用語を交えながら自論を語る。
あらゆるジャンルにおいて、話術としての説得性、論理性は、3人の中では最も優れていると思った。

 

最後は、ほぼ当選確実と言われている菅義偉氏。

 

官房長官として、安倍政権中枢の陰の部分を担ってきたこの人は、当たり前だが安倍政権の欠点ということを一切口に出さない。
安倍政権はすべてがうまくいった政権で、それをそのまま引き継ぐというのが、彼の態度だ。
こういうスタンスであるから、新政権でなにか改善されるという期待はゼロである。
コロナ禍で傷んだ経済を早急に立て直す必要があると、スガ氏は言うものの、どう立て直すかというプランは全く提示しない。
コロナ対策も同様だ。
そもそも、経済の危機的状況が遠くない将来に確実に訪れると言われている新政権を担うのに、施策のセールスポイントが「自助・共助・公助」なのだから、危機が来る前から「おまえら、自分でうまくやれよ」と言われているようなもので、これを支持するという人は、どうかしているとしか思えない。

菅氏は、長きに渡って連日のように官房長官会見を行ってきたわけだが、官房長官会見というのは自身の意見を述べるところではない。
政府の代表として、政府見解を答えるのが任務なので、総理大臣が会見するのとは気構えが全く違う。
ふつう、人は自身の意見を語るよりも、組織の代表として組織の見解を語る方がプレッシャーが少ないものだ。
そういう意味で菅氏は、会見には慣れているかもしれないが、自分の意見を自分のものとして語ることは決して得意ではないということが、会見を見ていてわかった。

 

菅氏が総理大臣になって、マスコミで自分の意見を自分のこととして語る局面が増えてきた場合、官房長官のノリでこれを続けると、世間のイメージは今期待されているほど高くはならないのではないだろうか。

 

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