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11月10日 岸田首相会見にツッコむ

岸田文雄氏は、11月10日、衆参本会議の首班指名にて第101代内閣総理大臣の任命を受け、岸田内閣が事実上初めて本格的な稼働を始めた。
前回の就任、第100代総理大臣は、解散するための内閣に等しかったので、今回の総理就任、そして記者会見は、事実上のスタート会見と言っていい。

 

それでは記者会見の内容から、気になったポイントをピックアップしてみよう。
まずは、冒頭の会見本文から。

 

岸田「国民の信頼と共感を得ながら、丁寧で寛容な政治を進めていく。」

 

その後の質疑応答も含めて、このセンテンスは記者会見で多用された。
岸田首相が今後の目指す政権のイメージとして維持したいテーマなのだろう。

 

コロナ対策については、時間を割いて説明した。
内容に画期的なものはないが、これに関しては、実際に感染拡大が再び起こったときに、岸田内閣がどれほどの実効性を発揮できるかにかかっていると思う。
そういう意味では未知数だが、ただ、アベスガ政権と比べるとコロナに対する関心は少し高めな印象だ。

 

コロナ禍の経済対策に関しては、公明党が提案した「18歳以下5万円+5万円商品券」に加え、低所得世帯と貧困学生に10万円を給付すると発表した。
公明党案だけでなく、岸田内閣の独自性をアピールするために、別建ててわざわざ首相会見で発表した形だ。

 

そして経済対策。
「10兆円の大学ファンド」「デジタル田園都市国家構想」「賃上げ税制による成長の果実を分配」「看護、介護、保育分野での賃上げ」というのが、岸田内閣になって独自に打ち上げた経済政策だ。
どれも正直あまり期待はできないが、ここは温く見守ろうと思う。

 

この後も「安全保障」「拉致問題」「国際的気候・環境問題」「憲法改正」などを、これまでの路線とそう変わりはないテンションでトータル的に掲げ、「国民の皆さまの力と協力が必要だ」と結んだ。
私はこうする、というよりも「皆様と」を多用するところが、これまでの首相とトーンが違ったところだ。

 

ここからは、興味深い質疑応答をピックアップする。
また、その前に、今回の記者会見の記者参加には、相変わらずこういう制限があったことを記しておく。

 

“首相会見の制限解除要請 内閣記者会、官邸は応じず”
首相官邸記者クラブ「内閣記者会」は10日、官邸で開かれる岸田文雄首相や松野博一官房長官らの記者会見について、新型コロナウイルスの感染対策として導入されている参加人数などの制限を解除するよう要請した。官邸側は「感染防止対策は危機管理の観点から極めて重要だ」と回答し、応じなかった。
(2021年11月10日共同)

 

質問【毎日新聞 コヤマ】
「GoToトラベルの再開、外国人観光客を入れる水際対策の緩和などのタイミングをどう考えるか?

 

これに対して岸田首相は、明確な期日を示さずに、そのキャンペーン内容の精査や仕組みの再考に含みを与えたうえで、専門家などの意見を聞いて慎重に対応する旨を説明した。

 

これは去年の菅政権の姿勢と比較すると非常に興味深い。
全国旅行業協会 会長の二階俊博氏の党内の影響力が、いかに低下したかがよく表れている。
去年(2020年)の菅氏の、ちょうど同じ秋口でのGoToへの前のめりっぷりを思い出すと、岸田首相のGoToへの熱意は明らかに薄い。
予算も確保してあるし、やらないわけではないが、そこに彼の「こだわり」は全く見えない。

 

質問【東京新聞 イクシマ】
総裁選で「民主主義の危機」という発言があって以来、それに関しての発言がほとんどないが、現在、危機は脱したと考えるか?モリカケ桜についてはどうお考えか?再調査は?

 

これはなかなかナイスな質問だ。

 

岸田「私は引き続き民主主義の危機の中にあると思っている。」

 

なんと。まだ危機は続いているとお考えらしい。

 

しかし、実はこの後の岸田首相の言いざまがひどい。

 

岸田首相「私は引き続き民主主義の危機の中にあると思っている。民主主義の危機にあると申し上げたのは、コロナ禍の中で、国民の皆さんの心と政治の思いがどうも乖離してしまっているのではないか。こういった声を多く聞いたということを挙げて、民主主義の危機ということを申し上げた。国民の皆さんの思いが政治に届いていないのではないか。政治の説明が国民の皆さんの心に響かない。こういった状況をもって民主主義の危機だということを申し上げた。」

 

なんと、国民の心の問題だと・・・。
国会を開かない、安倍首相が118回の虚偽答弁、文書改ざん、公文書隠匿、民主主義の危機とはこういうものであったはず。
それがいつの間にか「国民の心の在り方」ということにされてしまった。
「ヤバい政治はまだ続く」と宣告を受けたような気がした。

 

質問【産経新聞 ナガシマ】
憲法改正について自民党に指示した体制強化とは、具体的にはどのようなことを想定しているのか。また、国民との対話を促す取り組みで具体的なものはあるか

 

来ました、安定の産経。

 

それに対する回答を抜粋するとこんな感じ。

 

「国会の議論と国民の憲法改正に対する理解,
「国会の議論と国民の憲法改正に対する理解、この二つは車の両輪であると思っている。この両方がそろわないと憲法改正は実現しない。」
「国民の皆さんの理解が国会の議論を後押しするなど、・・」
「国民の皆さんの憲法改正に対する思いを盛り上げていただく工夫を、党としても行っていくことが大事であると認識している」

 

「国民の皆さんの」という言葉が、さして長くもない回答の中に4回も出てきた。
これは、「改憲する」の主語を国民にすることによって、岸田首相の消極性を表しているのではないか。
今後、政局の変動などで、岸田首相が着手せざるを得ない状況に移ることも考えられなくはないが、現時点で、岸田氏が自ら積極的に改憲運動をするとは考えにくい。
2021年衆院選では、改憲勢力の維新が議席を増やし調子に乗っているが、今後、自民の議席も脅かしかねない、その維新の口車にむざむざと乗って、ともに改憲に進むということは、当面はないだろうと思う。
ただ、政局の流れによっては、岸田氏がそうせざるを得ない場面もあり得るので、そこは慎重に見守る必要がある。

 

この会見で感じたことのまとめ。

 

・アベスガ前首相らと比べると、しゃべりにソツがない分、聞き手の精神衛生は保たれる。
・良くも悪くも大胆な政策がない。
・感染拡大や物価上昇のような、今後起きうる問題にどう機動的に対応できるか、この能力は未知数。
・GoToに象徴されるような菅政権で露骨に存在した「利権」が、岸田政権ではどこになるのかがまだ分からない。
・岸田氏の利権の軸が分からないので、そもそもどんなことに力を入れそうなのかが分からない。

 

こんなところである。

 

 

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