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緊急事態宣言とはなんだったのか?

1か月と少し続いた緊急事態宣言が、一部地域を除いて解除された。

 

緊急事態宣言、39県で解除…残る8都道府県は21日めどに再判断
安倍首相は14日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言を39県で解除することを決めた。
(2020年5月14日読売新聞)

 

解除されて改めて思う。
「緊急事態宣言」とはいったい何だったのか?

 

国内の感染者が勢いをつけて増えつつあった3月末、国民の新型コロナウィルスに対する不安は相当に高まっていて、私権の制限とかナントカより「早く宣言を!」という前のめりな世論があった。
なぜ前のめりだったかというと、そこには「宣言を出す」=「政府が本格的な対策に乗り出す」という暗黙の期待があったからに違いない。
この「新型インフルエンザ特措法」に基づく緊急事態宣言には、注目されていた「通常」にはない法的措置が二つあった。

 

1.マスクなど医薬品や食料品の売り渡しを業者らに求められる。応じない場合は罰則を科す。
2.病院の外にテントやプレハブなど「臨時の医療施設」をつくろうとする場合、知事は土地や建物の所有者の同意がなくても使うことができる。

 

さて、解除された今、これらを振り返ってみる。
果たして活用されたのだろうか?

 

緊急事態宣言が出された4月初旬は、街中の商店からマスクが姿を消し、一般的な商店でマスクを入手することはほぼ不可能であった時期だ。
政府、または自治体の権限でマスクを業者から強制的に買い取ることが出来れば、転売ヤーに不当に商品が流れることもなく、マスク危機は収まるのではないかと多くの人が考えたことだろう。

 

実際はどうだったか?
マスクはいつまでたっても通常の流通経路に姿を現すことはなく、挙句の果てに「アベノマスク」などという届いてもうれしくもない代物を政府に送り付けられることとなった。
それどころか、自ら転売ヤーとなった現役国会議員(前環境大臣の原田義昭参議院議員)まで現れ、週刊誌を賑わせた。
マスクだけではない。
医療物資に関しても、強制的な買取が出来るはずなのだが、そうしたルートで調達された物資が医療機関に支給されたなどという話は聞いたことがない。

 

5月半ばを過ぎた今、いまだにアベノマスクが届かいない人が大半な上に、自然の流れでマスクの流通も復旧し、どこでも購入できるようになった。
つまり、この政府による物資強制買取という緊急事態宣言ならではの「目玉措置」が、全く使われなかったのだ。

 

さて、2番目の土地の強制借用だが、この措置も実際に適用されたという話は聞いたことがない。
そもそもPCR検査すらしたがらなかった行政が、医療テントを作る必要が全くないのだ。

 

改めて考える。
では、「緊急事態宣言」とは、いったいなんだったのか。

 

唯一使われたのは、自治体への商業施設の営業や、個人への外出を抑制を「要請が出来る」という部分だ。
ここだけは大いに使われた。
すでにご存じだろうから、いちいち例に挙げるまでもないだろう。

 

そして今般、政府の独自統計をもとに、緊急事態宣言は解除されることになった。
ここで、宣言を解除した際の、5月14日の総理記者会見の一部を見てみよう。

 

これまでの努力を無駄にしないために、解除された地域の皆さんに3つのお願いがあります。
・・・
もはや外出自粛はお願いいたしません。それでも、最初は人との面会は避ける、電話で済むものは済ませるなど、人との接触をできる限り減らす努力は続けていただきたいと思います。解除された地域の中でも、県をまたいだ移動については、少なくとも今月中は、可能な限り控えていただきたい
・・・
特に3つの密が濃厚な形で重なる夜の繁華街の接待を伴う飲食店、バーやナイトクラブ、カラオケ、ライブハウスへの出入りは、今後とも控えていただきますようにお願いいたします

 

これは「要請」ではないのか?
緊急事態宣言中、「営業自粛の要請」(そもそもこの言葉の建て付けにも問題があるのだが)がされてきたのだが、今般、宣言解除となり、もはやこのような「要請」は法的には出来なくなったはずだ。
その一方で、「バーやナイトクラブ、カラオケ、ライブハウス」などと、ここまで具体的に業態名を挙げて、客としての出入りは「控えろ」と、総理大臣が個人に「要請」している。

 

もちろん、コロナが完全終息していない中で、こうした店での活動が感染抑制によくないことは十分承知している。
だが、緊急事態宣言下に限って特例だったはずの行政による店舗への「要請」が、宣言が解除されると今度は個人への「お願い」という形で、緊急事態宣言中と同じ状態が求められるのは、あまりにそれらの店舗にとってアンフェアではないだろうか。

 

安倍首相が最初に緊急事態宣言を発令した時、彼の頭の中に「補償」という言葉はなかった。
それは、宣言発令後に世論やマスコミの煽りを受けて、後手後手に給付金対応したところからもよく分かる。
「宣言」というのは、簡単に総理のやってる感を演出できると軽く考えていたのだろうが、実際に初めて見ると経済がどんどん痛んでいく。
かといって、補償はしたくない。
「ではもう解除しよう」

 

安倍首相の「緊急事態宣言」とは、つまりこういうものだったのではないかと思っている。

 

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