金融庁が出した「老後2000万円不足」報告書が決算委員会でも野党の追及を受け、世の中の反応は日増しに大きくなるばかり。
選挙が近づいていることもあって、自民党の重鎮からさまざまな火消しの声が出ている。
しかし、よく聞いてみると、「ちょっとそれはないんじゃないの」という発言も少なくない。
この記事では、与党重鎮たちの「火消し発言」を一つ一つ追ってみようと思う。
2000万円問題で、紛糾した国会について書いた記事はこちら。

まずはこれ。
報告書を提出したのは、麻生大臣が自ら諮問した「有識者」の審議会。
それを、中身が気に入らないから「受け取らない」なんてことがあっていいのだろうか。
有識者たちの提案を、政策に盛り込むか否かはさておき、気に入らない内容なら報告書そのものを拒否するのであれば、そもそも何のために有識者を集めて意見を聞くのか。
それにしたってこの人、報告書が公開された翌日あたりは上機嫌で、「アンタら、オレが生まれたころの平均寿命知ってるか?42歳だよ。」「へー」なんて驚いて見せる若い記者の前で例によってエラそうにしてた。
「100まで生きる前提で退職金を計算してみたころあるか?普通の人はないよ、たぶん。」
「今のうちからそういうことを考えておかないといかんのですよ。」
まるで教え諭すかのように知った顔で言ってたけど、あれも報告書を読まずにコメントしてたのか。
最近ではすっかり影の薄い岸田氏だが、「ずさん」とはあんまりではないのか。
報ステが、その諮問委員会のメンバーにインタビューしている。
政府統計そのものに疑義がかかるような昨今なのでアレだが、曲がりなりにも「総務省」の政府統計をもとに「有識者」がだしたものを「ずさん」とぶった切るのはどうなのか。
この人も中身を読んじゃいないのではないかと疑いたくなる。
さて、実はもっとも気になる発言をしているのがこの人、二階氏。
最初は各社マスコミの記事を複数チェックして、発言の全容をつかもうと思ったのだけれど、なにか要領を得ない。
文脈がよく見えないのでノーカットを探してみたら、意外にも自民党のオフィシャルアカウントに動画があった。
この会見は「緊急ぶらさがり」というものだったそうだ。
「そういう有識者会議とかいうことに名を借りてね、色んなことを言うわけですよ。金融庁そのものが関わってなきゃ、こんな発言は出てこないでしょ。これ有識者、その人らだけが勝手に言ってんじゃないの。関わってるはずですよ。これからはね、十分慎重に考えてもらいたい。自分たちがおかれている立場ってことをね、もっと真剣に考えなきゃならない。厳重に注意しておきます。」
この報告書に関して、「選挙を控えているからダメ」と、はっきり言っているのが、なんとも恥知らず。
そりゃあ、選挙を気にしているのは誰でも想像がつくことだけれど、うわべだけでも選挙ではない、国民優先を装ったなにかほかのことを言えなかったものかね。
それこそ「選挙前」なのだから。
また、一層気になるのは、「有識者会議の名を借りて」「いろんなことを言う」「金融庁が・・・関わってるはずですよ。」という部分。
金融庁が出してきた報告書なんだから、金融庁が関わってるに決まってるはず。
え?え?
二階氏はなにが言いたいのだろう・・?
金融庁の陰謀とか?
安倍政権と金融庁は、なにか確執があるのだろうか??
ここの文脈が、ノーカットを見てもさっぱりわからない。
「自分たちがおかれてる立場」を考えろ、っていうのは、金融庁の官僚に言ってる言葉なのか?
報復人事があるから気を付けろ、ということかな。
そんな権力を振りかざすようなセリフが、それこそ選挙前に政権幹部から出るってのは、実におだやかでない。
二階氏の、この「緊急ぶら下がり」からは、主語がはっきりせず、「恨み」「報復心」だけしか伝わってこない。
「緊急」と称してまで発信した幹部コメントのわりには、その発信対象が国民になっていないところも、非常に不可解だ。
大政党の幹部コメントとは思えない。
12日、もう一人の幹部発言を追加。
これもね・・稚拙の極み。
政府はこの報告書を正式に受け取っていないので、よって報告書は行政文書とは言えず、よって予算委員会で釈明する必要性もない、よって集中審議は開かない。
・・・ということを言いたいんだろうけど。
それは、あくまでも「野党」を相手にしたロジックだよ。
国民にしたら、そんな理屈は知ったことではない。
ここでも、国民の存在がお留守の、残念な与党幹部コメントになっている。
どの自民党幹部の発言を見ても、とても火消しになるとは思えない、なんとも稚拙なコメントばかりだ。
それほど与党は動揺している、ということなのか。