将来の年金が不足しているそうだ。
いや、そんなことは大部分の国民はとっくに気づいている。
しかし改めて財務省が、極めて上から目線で、「年金は足りないので、将来をしっかり考えて自力でなんとかせよ」と、とんでもないお達しを下したのだ。
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書
「高齢社会における資産形成・管理」
という文書で、PDFで56ページに及ぶ提案書だ。
オリジナルの文書に関心のある方は、リンクを張っておくので、よろしければご覧になってください。
この文書のキモの部分だけを抜き出すと、
・定年の退職金が、バブル期のピークからすでに3~4割ほど減少している
・年金だけで暮らすのは厳しく、試算では毎月約5万円ほど貯金等からの持ち出しが必要となる
・つまり100歳近くまで生きるなら、2000万円は必要なので、準備しなさい
と、こんな感じになる。
以前にこのブログでもこんなテーマを取り上げたことがある。

この時の調査では、
「貯蓄が0円~50万円以下という人が、なんと47%」
という衝撃のデータが明らかになった。
おそらくこの大部分は、非正規で働いている人だろう。
つまり退職金はないものとして考える必要がある。
さて、この人たちが、仮に35歳から60歳までに2000万円貯金するには・・・
月々8万円を貯金しなければならない。
衝撃である。
そんなことが出来るくらいなら、現時点の貯蓄が50万円以下であるはずがないではないか。
あまりにバカバカしい。
しかし、落ち着いて、今一度この金融庁の文書をよく読んでみる・・・
すると、実はここでは、国民に対して「貯金しろ」という言葉は出てこない。
そりゃそうだ。
人々がこぞって貯金をするというのは、消費が落ち、内需が縮小することに直結する。
常に増税がしたい財務省としては、国内の景気が悪くなることは、決して歓迎出来ることではない。
この文書をよく見ると、「預金」ではなく、「運用」という言葉が頻繁に出てくる。
そしてご丁寧に、「金融サービスのあり方」と銘打った、銀行に対してのアドバイスの項目も含まれるのだ。
私は、この文書のキモは、国民の老後を考えているものではなくて、長引く金融緩和で疲弊した銀行が、顧客に資産運用商品を売りやすくするためのキャンペーンを、国が張ったのではないかと読んでいる。
将来の年金の不安を煽ることで、銀行が個人資産コンサルに入り込みやすい顧客の心理状況をつくり、なんとか銀行の業績を底上げしようという意図があるのではないか。
おそらく銀行界隈では、今後、老後のための個人向け資産を長期運用する類の商品が続出するのではないだろうか。
今の政府の体質を考えればなんとなく合点がいく。
ヤツらは、国民の将来など決して心配しない。
若・中年層が老後に突入する頃、麻生大臣はもちろん、財務省のおエラ方も定年を迎え、とっくに現場からいなくなっている。
その時、世の中がどうなっていようが、そんなことに彼らは興味がないはずだ。
彼らが心配するのは、常に目先の話である。
つまり、今、銀行はそれほど窮地に立たされているのではないか、というのが私の読みである。
追記(2019年6月6日)
野党5党派が、この件について政府の関係者を呼び、ヒアリングをした。
さらに、厚生労働省に公的年金制度の現状を把握するための「財政検証」を示すよう求めたが、厚労省は「作業中だ」という回答に終始した。
(2019年6月6日FNN)
そうなのだ。
年金の「財政検証」がないままに、少子高齢化や寿命延長のデータだけをあげつらって、「足りない、足りない」と財務省が騒いでいることに、大きな違和感を覚えていた。
この一件を見て、これは年金問題ではなく、国民の将来不安を煽って金融商品の購買を上げようとする政府の仕込みではないか、との見方をする野党議員もいると知って、少し安堵している。(この読みにそれほど自信があったわけではないので。)
しかしこうなると、この「仕込み」は、「国民に一層の将来不安を与える」というリスクを承知しながら、選挙前に銀行への一定の「配慮」を示すことがより重要としてとられた対応だということになる。
つまり、安倍政権には、選挙前に国民の「将来不安」を煽っても、それが「政権の支持離れ」にはつながらないという確信があるからこそ取れる対策なのだ。
どこまで国民はバカにされているのだろう、とため息が出る。