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「2000万円不足」案件で白熱した決算委員会

久しぶりに国会に各党の大御所たちが集った。
6月10日、衆議院決算委員会。
今日は、当然と言えば当然だが、野党議員からは「老後に2000万円貯金せよ」問題に、質問が集中した。
質疑に立つ野党議員は、蓮舫議員(立憲)、大塚耕平議員(国民)、小池晃議員(共産)だ。

いつものことだが、与党にとって切羽詰まったテーマが議題に上がると、安倍首相は意味のない話で時間を延々と稼ぎ、「意味がない」と遮ると、「話をさせろ」と委員長の注意を受けるまで駄々をこねる。
今日は、「民主党政権では・・」を、複数回聞いた。
なにを血迷ったか、小池晃氏への答弁でも言った。

「・・・民主党じゃないですから、私。(議場、笑いに包まれる)そういう無意味な反論しないで下さいよ。」

そりゃそうだ。

そんなジタバタと、往生際の悪い答弁が一貫して行われたのだが、この日の報道は極めて静かだ。
首相は、報告書の「表現が」不適切だった、誤解を与えるものだったと、論理的に釈明したかのような形で、粛々と報道されている。

いやもう、日本では、テレビ報道を通してその日の国会の出来事を知ることは、不可能なんだと思い知らされた。
国会でなにがあったか知るには、国会のノーカット動画を見るしかない。
そうでないと、国でなにが起こっているか、知ることが出来ない。
大変な国になったものである。

ここでは、すべて書き起こすのは、書く方も読む方も難儀なので、ハイライトだけ抜き出そうと思う。

「蓮舫」編

麻生氏答弁で、いきなりビックリ発言が。

蓮舫「この報告書・・読みました?」(「2000万円が必要」とあった問題の金融庁の報告書)
麻生「冒頭の部分一部、目を通させていただきました。全体を読んでいるわけではありません。」

議場は、「え~っ!?」というどよめきに包まれた。
私だって驚いた。
これほど日本を騒がせた報告書について、質疑を受けることを分かっていながら、読まないで国会に挑んだのか?
蓮舫氏も、よくこれを聞いたな、と思う。
まさか、麻生大臣なら、読んでないかもしれないと、想像していたのだろうか。
それとも、議場のやり取りで「読んでないのではないか?」と感じ取って、アドリブで聞いたのか?

 

やり取りは続く

蓮舫「これだけ国民に怒りが蔓延して、大問題になってる。読んだら5分で終わる報告書を、読んでいない??この報告書のどこに『豊かな生活のために5万円足りない』って書いてありますか?」

麻生「これはいわゆる年金の・・勉強するグループで出されており・・」

蓮舫「間違ってます。勉強するためのグループが話したものじゃなくて、麻生大臣が諮問をした審議会のワーキンググループですよ。しかも、この報告書には「豊かな老後のために」なんて一行も書いてません。

麻生大臣は、報告書を読んでいない上に、諮問委員会を勉強会などと言い換えて、この報告書と自身の関わりを出来るだけ少なく見せようとしている態度が見て取れる。
そもそも、中身を読んでいないのに、「表現が不適切でありました」って、いや、読んでから言えよって話だ。

対安倍首相の質疑をもっと紹介したいのだけれど、とてもではないが書き起こしに堪えられるやり取りではない。
とにかく、聞かれてもいない自論をダラダラと語り、「もういい」「やめろ」とヤジが飛ぶと、「あなたたちに都合の悪い答弁はさせないのですか」などと気色ばんで反応する。

本当にひどい。

「大塚耕平」編

大塚議員の質疑からは、まるで詐欺のような、ウソではないけれどゆるく人を陥れる厚労省の汚い手口が明らかになった。

大塚「繰り上げ・下げ制度というのがあってですね、年金受給をふつうは65歳から開始されるのを、70歳まで繰り下げることが出来る。
・・(略)・・・繰り上げて60歳からもらうと30%年金額が『減少』する。
一方、70歳に繰り下げる場合は、受給額が『増える』と。
(略)そして今年の4月から、年金定期便にこの案内がされるようになったんですよ。
その『繰り下げ』について聞いているところを、クローズアップしたのがこのパネルなんですよ。(下図)

大塚「受け取る年金を『増額させますか?』と聞いたら何と答えますか?
人情として、『増額させる』って選びますよね。
そして矢印を進むと、『両方を』『どちらかを』と聞いてくる。
・・・こういうアンケート用紙が来たら、『増額させる』『両方を』という方向にいくんですよ。
そうすると、このなかなか面倒くさい、『年金請求書』を提出不用と書いてあるんですよ。
便利ですねぇ。
これ、提出不用の方を選びます。
面倒くさいから。これで提出をしなかったら、この方の年金受給はどうなるのですか?根本大臣」
ここで根本大臣はしどろもどろ。速記が止まる。
大塚「大臣、国民の皆さんで結構ご存じない方多いんですよ。
増額ならうれしいから、提出不用、とこの書類をポンと置いたままにすると、その方の受給は70歳になる。いややっぱり68歳、67歳から欲しいとなった場合は、自ら申請に行かなきゃいけないんですよ。
そのことをご存じないまま提出不用になっている方が多いから聞いてるんです。
本来、65歳から年金をもらえる制度なんだから、提出不用の場合は65歳支給開始にすると変えたほうがいいんじゃないですか?」根本大臣「今、大塚議員が言ったことは、書いてあります!」(根本大臣逆ギレ)
大塚「変えたほうがいいんじゃないかと、提案してるんです。」

「小池晃」編

この質疑での安倍首相の答弁は、ムダに自信を示すだけで、言ってることはスカスカなので、ここに記しておくだけの価値がない。
小池晃氏の最後の締めの演説だけ、紹介しようと思う。

小池「実際安倍政権になってから、年金6%削ってるんですよ。なにを胸張って言ってるんですか。
さらにこれからだって、減るわけでしょ。マクロ経済スライドで。
それをこの報告書では正直に言ったのに、慌ててまた隠してる。
こういう姿勢こそが年金不安を煽っていくんだと思いますよ。
正直に認めるべきですよ、これから年金はどんどん目減りしていきます、と。
今の生活水準は保証できなくなりますと。(略)
そういうことを問うて、じゃあF35 に一兆円使うとか、・・笑ってる場合じゃないでしょ、スガさん。
(え、ここでスガ官房長官が笑ってるの?どういう流れで?)
税金の使い方、見直さなきゃいけないでしょ。
(略)
私は今必要なのは、税金の集め方、使い方を根本から切り替えて、大企業にちゃんと物言って、内部留保400兆円があるんだから、しっかり負担をしてもらうべきじゃないですか。
株で大儲けをしている人たちには、所得1億円を超えると所得税の負担が下がっていく、こんな逆転現象やめようじゃないですか。そうしてきちんと財源を作っていく。
本格的にこれからの日本の年金制度をどうするのかということを、今回の金融庁のこの報告を期に、私は真剣に考えるべきだと思いますよ。」

今回の野党の各質疑で、安倍首相の答弁はいつもより多かったし、長かったように思う。
ふつうはもっと大臣にしゃべらせるところが、「オレが、オレが」という感じで前のめりに答弁に立った。
選挙が近いので、たくさん発言して「強い安倍」をテレビ中継で強調したかったのかもしれない。
でもいつもなら、煙に巻くような意味不明な答弁もでも、今日のテーマは年金である。
国会中継の視聴者は、たぶん比較的高齢の人が多いだろうから、自分の経験を重ねてみた人も少なくなかったろう。
安倍首相は一貫して、「年金が足りないことはない」「伸びている」「増えている」ようなことを、得意な自信に満ちた話法でとうとうと述べていたけど、安保や難しい行政の話ではなく、テーマは「年金」だ。
安倍首相が「年金の支給額は十分です」と言ったところで、「いや、私は足りてないですが」というテレビの前の人もきっと多かったに違いない。

選挙が目前になったタイミングで、「年金」「老後の不安」というテーマが急に浮上してきたことは、政局を大きく転換させるかもしれない。
他の法案と違い、国民全員の現世利益に直結する話だからだ。

これを機に、一人でも多くの人が、次の選挙に関心を持つことを願うばかり。

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