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「水際対策は十分です」菅首相の言葉は信じられるのか?

イギリスで新型コロナの変異種が急速に拡大していることを受け、ボリス・ジョンソン首相が再びロックダウン措置を表明したのは、12月19日(日本時間では翌日20日)のことだった。
それを受けて、21日にはヨーロッパを中心に世界中が国を挙げて対策措置を講じ始めた。
以下の記事でその対策の強力ぶりが分かる。

 

変異した新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、世界各国がイギリスからの入国を停止する措置をとる中、イギリスとヨーロッパ大陸を結ぶ物流の大動脈であるドーバー海峡の周辺では輸送に混乱が生じる事態となっています。
・・・
世界各国がイギリスから旅客機の受け入れを停止するなどの措置をとっているほか、フランスは、物流の大動脈であるドーバー海峡を経由するトラックなどを含むイギリスからの入国を21日から停止しました。
・・・
公共放送BBCは、ヨーロッパをはじめ、世界40の国と地域でイギリスからの航空便の受け入れを停止するなどの措置がとられていると伝えています。
(2020年12月22日NHK)

 

こうした世界の動きを受けて、菅首相がこれをどう受け止めているのか、21日にTBSのNEWS23に出演した際に星浩キャスターが質問している。

菅首相 ノーカット単独インタビュー【news23】リンク

 

星氏「ヨーロッパとか中東で入国停止措置をやっていますよね。そこは日本はどうですか?」
菅首相「ここはあのぅ、イギリス政府の緊密に連携しながら・・ただですね、現時点において上陸拒否対象国にいまなってますんで、特別な方に限りですね、日本に入って来れるのは。例えば日本人の方でイギリスに住んでらっしゃる方とか。一日1人か2人だそうです。そしたらもちろん検査します。陰性でも14日間隔離していると。まぁ、そういう体制でありますので、そこは大丈夫だという風に思ってます。」
小川氏「では今後、水際対策を強化されるというお考えは今のところは・・?」
菅首相「あのぅ、ですから、今のままの中で・・・一日1人くらいですから。そこは今対応できますから。さらに厳しくする方向というのは、当然いまイギリスとの間で交渉してます。」
小川氏「なるほど。はい。」

 

インタビュー動画から、関連部分だけを忠実に書き起こした。
これを見た時に、日本人だけを考えても英国からの入国者が、一日1人か2人なんてことはあるだろうか?
在独の筆者が周りを見ても、ドイツから日本に帰国する邦人はもっといるように思う。
まして、さらに日本人の渡航が多いイギリスで、コロナ禍とはいえ、一日1人ってそんなことはあるだろうか?と引っかかっていた。
そのモヤモヤを解消するやり取りが、12月22日の野党ヒアリングであった。

2020年12月22日 野党合同国対ヒアリング「感染実態、GoToトラベル」 リンク

 

山井氏「現状としてイギリスからの方々は入ってきているのか、入国禁止をするのか、また聞くところによると、1週間に15便、直行便が羽田とロンドンであるそうですけど、このまま続けていくのか?」

 

もう面倒だから書かないが、これに対して入管庁はあんな対策やこんな対策をしていると長々説明する。
外務省は、貨物を除けば往来は禁止しているので、人の物理的往来は出来ないはず、と回答。
なにか色々ずれている。

 

山井氏「では、旅客機が15便飛んでいる、ここを説明してください。」
国交省「日英間の航空便につきましては、・・今週は15便となっております。ただ、その中のお客様の属性についてはですね、物理的に止まっていることかと思います。」

 

は?「属性については止まっている」?意味が分からない。どういうこと?

 

山井氏「正確には明かせないと思いますが、だいたい、1便何人くらい乗っているのですか?」
国交省「規模感で言うと数十人。」
山井氏「ということはね、数十人で15便ということは、1週間に1000人弱の人が、これトランジット(乗り換え)入れたらもっとですからね、直行便だけで1000人弱来てるということなんです。それで、昨日菅首相が、民放に出演してこう言ってるんですね。(前段で紹介した菅首相発言部分を朗読)これ、事実誤認があるんじゃないですか。事実関係いかがですか?」
原口氏「菅氏にちゃんとした情報は上がっているのか。
黒岩氏「数字を総理は明確に言ってるんですよ。1人だ、と。なにかを根拠に言ってるんですよ。思い付きじゃないから。」

 

ここで川内議員から重要な指摘がはいる。

 

川内氏「コロナ本部で昨日の総理の会見の手持ち資料を、どのセクションがレクしているのか。どういう根拠に基づいて言ったのか、確認してもらいたい。しかも『14日間隔離する』って言っちゃってますからね。これ『要請』するだけですからね。一国の行政の責任者が事実誤認に基づいてテレビで発言をし、『大丈夫ですよ』ということをアナウンスするということの問題点を明らかにするためにも、そのセクションが、どういう資料でこのテレビ出演に当たってレクしていたのかというのは、本当に明らかにしないと、今後もこういうことが起きると大変なことになる。」
内閣府コロナ室「私どもは感染症対応と特措法対応をやっておりますが、水際の対応ももちろんコロナなんですが、それぞれ所管がありまして・・・」

 

野党議員らの前に、それぞれの省庁から出席した官僚がずらりと並んでいるのだが、その彼らが「担当は誰?」と言わんばかりにザワザワしている。

 

ここで厚労省が自発的に発言する。

 

厚労省「推測になりますが、11月29日から12月5日の一週間で、イギリスに滞在歴のあった方の空港での検査数が692、うち陽性となった方が2名です。なのでおそらく総理の発言は、陽性の数字を述べておられたのではないか。」

 

この厚労省の官僚が言ったことが、おそらく当たりだろう。
支持率急降下中に万全を期してテレビ出演をし、そのために揃えた資料がこうも杜撰だということは、菅官邸の仕事の甘さを窺うに足りる出来事だ。

 

1便に数十人というのは、11月から12月にかけての週の数だが、年末に向けて多くの駐在員やその家族が帰国する。ドイツ発を例にとってもクリスマス前後の羽田への直行便は、これまでの月とは違いそれなりに予約が埋まっていると、関係者から聞いている。イギリスからもこれまでより多くの「英国滞在履歴」のある人が日本に入国するだろう。
それに対して、こんな仕事のレベルできちんと対策が打てるのか?

甚だ疑問である。

 

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