「名簿は廃棄した」という官僚の言い訳が、独り歩きしつつある「桜を見る会」疑惑。
ここで言う「名簿」とは、各省庁から推薦されたリストを、内閣府が「まとめた」参加者全員分の名簿を指す。
共産・宮本議員が請求した同日に、シュレッダーにかけられたというあれだ。
しかし、電子保存されたデータの方は、いつ削除されたかいまだに明らかにされていない。
官僚は「サーバー上に削除の記録が残らない」システムだと主張しているが、一般的にそういうことは考えにくいので、サーバーの仕様書等を請求されれば、いずれまたボロが出てくるだろう。
一方、11月22日に公開された「黒塗りの名簿」とは、内閣府に当てて、各省庁から上がって来た推薦名簿だ。
いわゆる「正常ルート」で招待された、本物の「功労者」とされる人たちのリストである。
それによりますと、府省庁ごとの内訳は、外務省が891人、内閣府が584人、文部科学省が546人などとなっています。
(2019年11月22日NHK)
名誉ある「本物の功労者」の名前を伏せる必要はないと思うが、これは「非・功労者」の名簿を出さざるを得なくなったときに、「個人情報のため」という言い訳に正当性をもたせるための伏線だろうと思う。
この黒塗り名簿が出てきたことで、少なくとも、招待客の中に「本物の功労者」が3954人しかいないことが分かった。
実に、1万5千人が「よく分からない」事情で招待されていたということだ。
これだけでも、驚くに値する。
この「よく分からない」1万5千人は、安倍首相をはじめ、その周辺の自民党議員(地方議員も含む)によって、選挙運動に功労のあった人々が招待されていたと思われる。
それら1万5千人分の名前が載っている名簿が、冒頭で述べたシュレッダーで隠滅された名簿である。
恐ろしいもので、行政トップの安倍首相がヒラヒラと発言内容を変えている現状、と言うと聞こえがいいが、要するにその場を切り抜けるウソをつくたびに、官僚たちはそのウソの辻褄を合わせるために奔走する。
これぞ最大の税金・マンパワーの無駄遣いだと思う。
さて、この隠滅された名簿だが、11月22日のヒアリングで「決裁されていない」と官僚・中井亨内閣参事官が言い出した。
決裁文書というのは、そう簡単に捨てられないので、「捨てた」ことを正当化するためのウソである可能性も考えられる。
しかし、ここでキモになるのは、内閣府で決裁していないということは、招待客を最終的に決めたのはどこの誰なのか?という点だ。
現時点で、安倍首相とスガ官房長官はそろって、「事務所から後援会メンバーを推薦はしたが、内閣府で外される場合もある。あくまで招待する・しないを決めたのは内閣府」と主張し、公職選挙法違反に当たらない理由としている。
しかし、この主張を丸呑みするなら、当然ながら「内閣府の決裁」がなければ、辻褄が合わない。
その内閣府は「決裁はなかった」と言っている。
安倍首相サイドと内閣府サイドの言っていることの、辻褄が合わないのだ。
おそらく、今後の国会では「電子データの有無」と、この「決裁」が追及の焦点となるだろう。
まぁ、しかし、冷静になって考えてみれば、こんなウソを暴くために国会で時間が使われているのは、本当に情けないことだ。
そしてメディアには、そんなウソをいちいち気にするよりも、もっと大事な事を・・・などと、恥ずかしげもなく言って憚らない人がいる。
なぜ、ウソを追求する方が批判されるのだろう。
道理に合わない。
ウソツキ相手に、国会で重要案件を議論できるはずないではないか。
ましてや、憲法改正議論など・・。
安倍首相は、「桜を見る会」が問題になって、はじめてぶら下がりで会見した時、「国会のことは国会で決めることだが、政府としては、国会から求められれば、出て行って説明するのは当然のことだ」と言っていた。
あーこれは・・・と思ったが、その通りだった。
国会に求められるとは、「与党」が集中審議を開催すると認めた場合だ。
「国会の求め」なんぞは、ハナから安倍首相の手の内にあるということだ。
現時点で、野党による予算委員会集中審議の求めに、与党が応じる気配はない。
言ってみれば、これも「ウソ」なわけよ。
しかも、ぶら下がりの会見で、となれば、これは野党に向けてのメッセージではない。
いわゆる「国民の皆さん」に向かってだ。
私たちは、こうして何度も安倍首相に騙されているんだけど、なぜか、ウソつきの「代わりがいない」という、よく分からないロジックに、多くの国民が陥っている。
この際、「代わり」の条件は、ウソつきでないこと、だけでもよいのではないだろうか?