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【英語民間試験】教育以前に、行政の公正さが危うい

英語民間試験の実施延期を受けて、4人の参考人が招致された衆議院文部科学委員会を聞いてみた。
招致された4人のキャラ説明をすると、だいたい次のような感じになる。

 

私立中高学校連合会会長 吉田晋氏:
英語試験の民間移行には賛成、推進をしてきた立場。ただ、今回の資格検定試験をそのまま入試に用いる手法は、格差の問題などに疑問を持っていた。(言い訳がましいが、基本は賛成派)

全国高等学校長協会会長 萩原聡氏:
資格検定導入はやむを得ないという立場。実施期限が迫っても、準備がモタモタしていたので最終局面ではストップを申し出たが受け入れられなかった。(現場の立場として、その声が受け入れられなかったことに不満)

ベネッセ 学校カンパニー長 山﨑昌樹氏:
格差などの問題解決に向けて一生懸命調整していたなど、ベネッセの努力を訴える。営業マン的立場。

京都工芸繊維大学 羽藤由美氏:
大学の立場から、営利追及の民間試験に入試を丸投げすることにとんでもない。なにからなにまで出鱈目だとメチャクチャ怒っている。

 

自民、公明、立国民会派、維新の4人が質問に立ったが、議論をするわけではないので白熱するシーンはない。
ただ、私学連合とベネッセが、民間試験導入にだいぶ前のめりだということは、確認できた。
参考人はみな教育関係者であるので、それぞれの立場の「教育」という視点からの発言が多かったわけだが、私はこの件の核は、実はそういうところにはないと思っている。

 

それを裏付ける説明が羽藤氏から出た。

 

羽藤氏「対照表なんですけれども、試験はそれぞれ測る能力が違います。異なる試験の成績を比べることはできません。・・(中略)・・なのでGTECと英検の成績を比べて、どちらが英語力が高いというのは、なかなか言えないわけです。
そのことは非常に早い時期に、今回の政策決定の過程で活躍された研究者の数名の先生方も、2015年あたりには公然と「できない」とおっしゃられてました。
それがなぜかこういうい形で進んできたわけですけれども、この対照表を見ていただいたら、右肩に「文科省」の名前が入っていますし、それこそお墨付きの絶対大丈夫なものと思うかもしれないけれど。
例えばですね、英検とGTECの間の関係というのは、一切(考慮)されてないわけですよ。
各試験団体が、それぞれCEFRの6段階に対応付けた。(中略)
だから、ケンブリッジと英検の関連ていうのは、分からないわけです。
そういう致命的な欠陥のある表なんです。

 

ちょっとここで解説しよう。
羽藤氏が言う、「CEFR対照表」とは上図のことだ。
つまり6つの異なる民間試験があり、その各試験での得点を、文科省が割ったA1~C2までの6段階スケールに当てはめることができる。
ケンブリッジで150点の成績と英検で2000点の成績を取ったことは、この文科省のスケールで、「同等の成績」とみなされるのだ。
が、それぞれのテスト同士の相関関係は、学術的に明らかになっていない。
大学入試とは思えないテキトーさに驚く。
しかし、大事なのはここからだ。

 

羽藤氏「これをオーソライズしたのが、文科省にある『英語の資格検定試験とCEFRとの対応に関する作業部会』というところです。
その作業部会で完成させて、最終的に各試験団体が申告して来た対応付けを確認して、この表を完成させたんですけど、その会の構成員が、主査は吉田ケンサク先生という上智大学の教授ですけれども、(表の中の)TEAPというテストの開発者です。
東京外国語大学のネギシ先生とトウノ先生というお二人がいらっしゃいます。
この三人を以て、柴山前大臣は研究者の科学的検証を経たとおっしゃいましたけれども、このお二方はGTECの対応付けをされた方です。
まさしくオウンゴール、自作自演です。
あとの5人はそれぞれ民間試験団体の代表者です。
つまりCEFRの表を科学的検証をしたと文科省がおっしゃる会に、第三者は誰も入ってなかったんです。」

 

これだよ、これ。
日本政府の通常運転。
大学入試とは、英語教育とはどうあるべきか、そんなことは問題の核じゃない。
この国の政府の問題を起こしたときは、いつもこうして第三者のいない、利益相反する身内だけの諮問会議を経て、なにか立派な検証がされたかのように偽装した経緯が必ず途中のプロセスに隠されている。

 

この英語民間試験の検証は、教育の観点からではなく、公正なプロセスに則って行われてきたのかどうかに絞られるべきである。
決定までにどういう有識者会議が組まれてきたのか。
委員はどこの何者か。
議事録は。
ここを明らかにすれば、いかにこの話が「利権」を中心に進められてきたかということが、あっという間に検証されるだろう。
公正な手続きを踏まずに作られた試験制度が、公平であるはずがない。
いま日本で起きる政治の問題は、いつも原点が同じだ。

 

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