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大学入試民間システムがまた頓挫 文科省が運営認可を取り消す

大学入試の現場が揺れている。
高校生が利用する「ジャパンeポートフォリオ」というシステムを運営する一般社団法人「教育情報管理機構」の運営許可を文科省が取り消した、というニュースだ。

 

直近の受験事情をよく知らない筆者は、なんのことかよく分からなかったので、ニュース内の分からないポイントを一つ一つ調べてみるたのだが、すると意外な全容が見えてきた。

 

まず「ジャパンeポートフォリオ」とは?

 

近年、文科省は大学入試に生徒の「主体性評価」を取り入れることを奨励し、このシステムが作られるに至った。
生徒の「主体性」の判断に使われるのが、「ジャパンeポートフォリオ」で、このシステムで生徒は高校在学中に部活動やボランティア活動、資格の取得など、積極的に取り組んできた活動を自身でシステムに入力し、システム上に保存されるされる。
そして、このシステムの「会員」となっている大学は、その生徒の主体性を「ジャパンeポートフォリオ」内のデータで評価し、入試の判断の一環に利用しようというものだ。
現在、約18万人の高校生が利用しているという。

 

どのように利用するのかと「ジャパンeポートフォリオ」のサイトの入り口に行ってみると、パスワードを要求された。
もちろん私は持っていないので、どうすれば入手できるのか調べてみて驚いた。

 

Classiという学校向けICT活用サービス提供企業のアカウントが、「ジャパンeポートフォリオ」の利用に必要だったのだ。

 

ではClassiとは?
Wikiから引用する。

 

ベネッセホールディングスとソフトバンク株式会社の合弁子会社であり、情報通信技術を活用した教育事業を手掛ける企業である。ソフトバンクグループの持つクラウド技術やタブレット活用、ネットワーク環境構築のノウハウと、ベネッセグループの持つ教育に関する知見や学校現場との信頼関係を生かし、学校教育におけるICT活用の推進を目的として設立された。

 

出たよ、ベネッセだよ。
そして気になる料金なのだが。
おそらく、営業マンが学校法人に直接売り込みに入り、サービスメニューを組んで契約をするようなので、「一校当たりいくら」という明確な料金は探し出せなかった。
ただ、生徒のほうは、学校が法人契約した上で月300円ほどの使用料をとられるらしい・・という話がネットに見られる。

 

しかしこれ、公立高校で利用しているところはあるのだろうか?
導入校は2500校(高校全体の約半数)、高校生の3人に1人が利用しているというのだが・・受験に利用するわりには少なくないか?
ここまで調べた時点で、民間英語試験の時のような(ちなみにこれもベネッセだった)、入試を取り巻く不公平が生じている気がしてならない。

 

それでだ、話を最初に戻す。
この Classi のアカウントを持ち、「ジャパンeポートフォリオ」のサイトにログインし、自ら「主体性」を入力し売り込んだ生徒が、大学によっては入試として利用できるというものだが、その「ジャパンeポートフォリオ」のシステムを運営する一般社団法人「教育情報管理機構」が債務超過となり財政上の安定が見込めず、文科省から運営認可を取り消されたというのが、今回のニュースなのである。

 

「教育情報管理機構」の公式サイトを見てみると、法人設立は2019年4月1日とある。
国から認可事業を受けるために設立した法人が、わずか1年ちょっとで債務超過とは、一体なにがあったのだろう。
同じく公式サイトの財務状況のページを見てみた。

 

 

この法人は、大学の持つ学校法人と関係企業などに会員になってもらい、その会費が収入の柱となっている。
企業法人は、そこそこの目標額を達成しているのだが、図で見る「一般会員会費」というのは、大学を持つ学校法人の会費にあたる。
つまり、高校生は約18万人がアカウントをもっているものの、その入試システムを導入したい大学は、想定よりも圧倒的に足りなかったことがよく分かる。
会費の収入を6000万円見込んでいるところに、680万円しか集まっていない。
どういう事前リサーチをしたのだろうか・・・?

 

「ジャパンeポートフォリオ」の公式サイトに訪ねると、今回の認可停止に関する運営法人の公式見解が出てくるのだが、読んでみると文科省への恨み節がすごい。

 

 

文科省が大学にシステムの利用促進を呼びかけなかったので、会員が増えずこんなことになってしまった。
文科省のせいだ!と言わんばかりの見苦しい見解・・・。

 

おそらく、文科省も当初は「まかしておけ」的なことを言いながらこの事業を始めたのだろうが、どういうわけでその利用推進をしなくなってしまったのか。
理由はよく分からないが、民間英語入試でベネッセとの癒着が問題となり、またその入試の公平性や運用の問題も相次いで指摘されたのは2019年末のことだった。

 

この頃から、あまりに露骨な入試民営化の実態が世の中に明らかになり、文科省もそれ以前のように闇雲に旗を振れなくなったのかもしれない。

 

入試の利権化の一端を見て腹が立つのだが、実はもっとも被害を受けているのは受験生自身である。
2020年度から導入されるはずだったこのシステムを使い、アカウントから自らの「主体性」をせっせと申告し、そうして来春の入試に備えてきた高校生も少なくないのだ。

 

ただでさえコロナ禍で来春の入試がどう実施されるのか不透明な中、こんなロクでもないシステムで時間を無駄にした高校生がいることは、実に気の毒だ。

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