11月6日の衆議院予算委員会集中審議は、言うまでもなく「英語民間試験導入の延期」に関して、野党が政府を追及した。
野党各議員の質問は、それぞれ鋭いものではあったけれど、この問題を「受験生がかわいそう」「受験生を傷つけた」などと感情的な側面から大臣の責任問題として切り込むと、核心にたどり着けない恐れがある。
ドミノ辞任を恐れる与党に、次なる萩生田文科相の辞任に照準を当てたい野党の気持ちは分かるのだが、「受験生がひどい目に遭ったから責任を取れ」という戦法は、私はあまり賛成できない。
しかし、共産党の塩川鉄也議員は、情緒的な議論をすることなく、クールに「政府と企業の癒着」という厳しい視点からこの問題の本当の核心に触れた。
冒頭から「教育再生実行会議」を持ち出して、安倍首相に「私は関係ない」と言わせないための伏線を張っておくとところなどは、なかなかだ。
「はい」と回答すればいいだけの、この簡単な質問に、なぜか安倍総理は左右をキョロキョロとする。
後ろの座席を振り返るとすべて空席で官僚はいない。
ワタワタしているところに数人の官僚が大急ぎでフォローに駆けつける様子に、場内は少しざわついた。
「あ、あのう・・わたくしが議長を務めております。」
それがどう繋がっていくのだろう、と不安げな表情にも見えた。
安倍首相にとっては、意表を突かれた質問だったのだろうか?(私は想定内の質問だと思うが)
そうそう、本丸はそこなのだ。
これはとても大事な点だけれど、このような質問に安倍首相がまっすぐ回答するわけがない。
この政策は文科大臣の下で進められているからという理屈で、答弁を文科相に丸投げしようとする。
文科省官僚ハクイ氏「・・略・・株式会社 学力評価研究機構が・・契約金額約62億で締結され、正式に決定されました。」
塩川議員「学力評価研究機構はベネッセのグループ企業ということでよろしいですか?」
文科相高等局長ハクイ氏「ベネッセが出資している会社でございます。」
塩川議員「学力評価研究機構はベネッセの子会社であります。ベネッセは7種類の英語民間試験の一つであるGTECも運営しております。すでに2017年度、2018年度のプレテストの採点もベネッセが受託をしているところです。パネルをご覧いただきたいのですが、ベネッセの中期経営計画でございます。」
しかし「学力評価研究機構」というネーミングからしてあざとい。
なにかの非営利団体のように聞こえるが、正式名は「株式会社 学力評価研究機構」であり、ベネッセホールディング傘下100%出資の立派な営利団体、子会社だ。
そして、そのパネルというのがこれ。
今日の予算委員会集中審議で使ったパネルです。
パネル2枚目「ベネッセの中期経営計画」
<スタッフ> pic.twitter.com/eAbqUuOHP5— 塩川鉄也 (@ShiokawaTetsuya) 2019年11月6日
教育・入試改革がベネッセの最大の事業機会、ビジネスチャンスとなっている、このことを総理はご存知ですか?」
安倍首相「あの、わたくしは承知をしておりません。」
事業計画までは知らないかもしれないが、この入試改革がベネッセの大きなビジネスチャンスになっていることくらいは知っているはずだ。
テストを出題する事業者が、その試験の対策本で利益を上げることができる。公的な大学入試制度を利用して、営利を追求するやり方で、どうして公平・公正性が確保できるのでしょうか。」
萩生田文科相、入試問題を作成する部署と問題集を作成する部署は分離されているので大丈夫、という趣旨の答弁。
そのパネルがこれ。
今日の予算委員会集中審議で使ったパネルです。
パネル3枚目「ベネッセ(GTEC)関連法人の主な役員」
<スタッフ> pic.twitter.com/BQYN330Z43— 塩川鉄也 (@ShiokawaTetsuya) 2019年11月6日
とうとう言った!
そこだよ。
この一件は、安倍官邸トップダウンで始まり、文科省と企業の癒着によって進められてきた政策だ。
安倍首相は、無関係なんかではないのだ。
安倍首相「あの・・私はその、ベネッセ・・いわば今、委員が挙げられた名前ですが、詳細については全く存じ上げておりませんので、答弁することは差し控えさせていただきます。」
そりゃ、答弁できないだろう。
民間試験問題を追及するのに、安倍首相が関係者の一人となることを指摘したこの質疑は大きいと思う。
残念ながら、マスコミに報じられた本日の国会は、安倍首相のヤジと任命責任に対する言い訳くらいでしかない。
この日の塩川議員の追及は、今後のさらなる追求の布石ともなり得ることから、このブログに保存しておこうと思う。
やはり共産党は頼りになる。