「大学無償化」法(東京新聞)
高等教育無償化法(時事)
大学無償化法(共同)
「高等教育無償化」法(朝日)
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大学等修学支援法(読売)
低所得世帯の高等教育負担を軽減する法案(NHK)
いやあ、いろんな呼び名があるものの、きれいに2つに分かれたね。
法案が通って、報道の表現がこんなふうに異なることも珍しい。
安倍首相が、所信表明演説などで、「保育の無償化」と並列して、「無償化」を連発していたことで、多くの人は「無償化」と聞いたほうが、「あれのことか」とピンときやすいのは確かだが、その内容は本当に「無償化なのか?」と子細に見てみると、「無償化」という表現からはほど遠く、誇大広告と言ってもいいレベルだ。
身近に年頃の子供がいない人の中には、ニュースや報道の見出しをちらりと見て、「ああ、大学が無料になるのか」と誤解している人もいるのだはないだろうか?
ちなみに、法案の正式名称は
「大学等における修学の支援に関する法律案」
で、「無償」という言葉は含まれていない。
そういう意味では、読売とNHKの見出しの表現の方が、はるかに正確だ。
ことにNHKの「低所得世代の~負担を軽減」というところは、かなり正確に表している。
政権に近いとされるメディアのほうが、政権の思いから距離を置いた名称を起用しているというのは、理由はよく分からないが、なんとも不思議な話である。
また、これも不思議なのだが、NHKがこの法案の問題点をしっかりと書いている。
1つは支援の対象が限定的だという点です。対象となる学生は、住民税が非課税の世帯かそれに準ずる世帯に限られます。
(2019年5月10日NHK)
「住民税が非課税の世帯」とは、どのくらいの収入の世帯なのか?
家族の人数や構成者の状況により異なるのだが、産経によれば、だいたい
「夫婦と子供2人(1人が大学生)の家庭の場合、年収270万円未満が目安」
なのだそうだ。
いくらなんでも、対象世帯の年収、低すぎやしませんか?
逆に言えば、そこまでカツカツの生活をしているくらい貧しくなければ、支援はない、ということだ。
これを「無償化」という神経が分からない。
さらにNHKは二つ目の問題として、次のように指摘している。
(2019年5月10日NHK)
ん?すべての「大学」じゃないのか??
「実務経験のある教員」とは?
この部分、産経新聞には違う表現で書いてあった。
「理事や教員への外部人材活用」
これ、どう見ても、「天下り」とか、政府が推す「有識者系」の人の受け入れでしょ。
こういう人を、政府の希望通りに一定以上受け入れなければ、
「学生が支援してもらえない」
って、おかしいだろ。
つまり、政府が推すクソみたいな人材を教員として採用するのを拒否した場合、
文科省により「支援を受ける指定校」から外されることになるわけだ。
本当に、最近の政府は油断も隙もない。
「無償化」という、看板に偽りアリという問題だけでなく、
こうも巧妙に、大学自治に手を突っ込むための条項を、シレっと潜り込ませているのだ。
あまりにひどい。