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農水省の官民ファンド赤字に「元祖仕分け人」が斬り込む

6月ごろから、ポツリポツリと一つずつ明らかになった事実が公表され、一般人にとっては非常に追いにくい事案となっていた、農林水産省所管の官民ファンド「農林漁業成長産業化支援機構(A―FIVE)」の件をようやく10月15日の参院予算委で蓮舫氏が取り上げた。
長い間取り上げられなかったのは、野党に問題があるわけではない。
5月から、与党の都合により予算委員会が開かれない状態がずっと続いていたからだ。
半年近くも経ってから国会で追及することになっても、一般人には何のことだったかピンと来ないだろう。

 

そんな日が来ようかと、この件についてまとめた記事がある。
役に立つ日が来てよかった。
おさらいした上で蓮舫氏の質疑を聞くと、事情を把握しやすい。

 

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蓮舫氏「今年6月機構設立当初から機構の専務取締役を務めた人物が退社をしました。なぜですか?」
江藤農水相「一身上の都合と報告を受けております。」
蓮舫氏「この前専務は、支援決定機関に投資案件はこれですと、提案する投融資検討会のメンバーで、投資案件への影響が非常に大きい人物です。この専務が、選定と投資の運営に大きく関わった『日本産農林水産物の海外におけるブランド構築プロジェクト』、これはなんでしょうか?投資後の実績はどうなっていますか?」
江藤農水相「これは『食の劇団』と呼ばれるものと認識しております」
蓮舫氏「会社名を聞いてるんじゃないんです、事業を聞いてるんです。」
江藤農水相「香港でのレストランの開業、それから、香港への農産物の輸出事業でございます。」

 

この事案は、2番目の過去記事で触れている、タニタが一部投資したとみられる件だ。
関わったタニタ自ら「実態は準備不測のまま投資先行型」だったと、内情を明かしている。

 

蓮舫氏「香港で事業を行う予定だったんですけれども、これは・・破産をしていますね。この投資をした企業が。で、この投資計画に深くかかわったA―FIVEの前専務、彼が元職である信託銀行の後輩が、この投資をした会社の設立後のわずか1週間後に、その会社の社長に就任します。そしてわずかその2週間後に6億5千万円もの投資がA―FIVEでスピード決定される。1か月後には前専務がこの会社の社外取締役に就任をした。これだけのスピード感で投資が決まるから、さぞかしリターンが大きいかと思ったら、事業は形にならず1年半後に倒産をしている。いくら回収しましたか?」

 

オトモダチというのか、この内輪で話をまとめる感がすさまじい。
機構の専務が、自分の出身銀行である後輩とやらを出資先の社長に据え、融資を決定したのち自らが社外取締役に滑り込み、1年半で事業は破綻。
とてもまじめに取り組んだ事業とは思えない上に、いろいろ中抜きしてるのではないかという疑いすら持たざるを得ない。

 

江藤農水相「回収金額は700万円でございます。」
蓮舫氏「6~7億の投資をして、事業は全く日の目を見ないで、投資に関わった専務の動きは全く報じられないで、700万円だけ回収。これ、適切な投資案件でした?」
江藤農水相「事業はやってみなければわからない、という部分があるにしても、(ここで場内ブーイング)あるにしてもですね、結果700万しか回収できなかった、やはり適切ではなかったかと思います。」
蓮舫氏「やってみなければわからない事業に、6億7億、簡単に投資を決めるのが適切ですかって聞いてるんです。」
江藤農水相「結果を見れば、適切でなかったと認識いたします。」
蓮舫氏「こんな覚書が発覚しました。」

 

そしてこれがその「覚書」

 


(2019年6月22日毎日新聞)

 

蓮舫氏「投資を決めたA―FIVEの前専務、投資先の会社社長と破産の1週間前に交わしていました。破産しても損害賠償や損失補てんの請求はしない。社長に損失や負担、一切の迷惑がかからないことにすると、約束したものです。これなんですか?」
江藤農水相「農林水産省としても、そのような覚書を交わしたことについては、大変疑問に思ったところでございます。ですから第三者的立場にある弁護士事務所による調査を行いました。その調査結果によりますと、覚書は元専務が個人の名義で作成したものであり、A―FIVEによる責任を放棄する効果はないことから、法的な問題はないという報告を受けております。」

 

法の専門家からすれば、個人名義であるから「問題ない」のだそうだ。
が、一般的な感覚からすれば、こんな覚書を個人間でやり取りすること自体が、税金をつぎ込んだこのプロジェクトがオトモダチ集団の内輪の還流であったことの証左と言えるのではないだろうか。

 

蓮舫氏「処分しました?この専務。」
江藤農水相「処分はいたしてございません。」
蓮舫氏「疑問を覚えるだけなら誰だって出来ますよ。監督官庁として、何で処分しなかったんですか?」
江藤農水相「処分をする法的根拠がないということでございます。」
蓮舫氏「今年6月に退職をして、満額の退職金を払いました。いくら払いました?」
江藤農水相「1400万円でございます。」
蓮舫氏「で、迷惑をかけたから自主返納をさせた。いくら返納させましたか?」
江藤農水相「70万円でございます。」

 

6月にことが発覚した頃は、さすがにマズいと思ったのか「保留」となっていたが、その後国会も開かれず、あまり話題にされる機会がなかったのをいいことに、たったの70万円で「自主返納」のアリバイをつくり、お茶を濁そうとしていたのだ。

 

蓮舫氏「この前専務は、この事業案件以外にも3億円、A―FIVEが出資をして国産食材を使った飲食店を展開するプロジェクトの責任者、この事業も予定から1年半たってもまだ回転の目途すら立っていないんです。こんなに国有財産を毀損した人を処分もしないで満額の退職金を払って、そして10億近い損が出てるのに、70万円で許すことが、監督官庁として適切な指導ですか?」

 

この「前専務」、他にもまだやらかしている案件があるらしい。
住友信託銀行出身である「前専務」が、これほど投資がヘタだということは、どういうことなのか。
これが本当なら、これまでよく信託銀行が破たんしなかったものだと、感心する。
これはもう、運営の目的が赤字や黒字ではなく、なにか他のところにあったとしか思えない。

 

そして今後このA―FIVEはどのように進んでいくのだろう。

 

蓮舫氏「2018年は12億円でした。2019年にその9倍の110億もの計画を立てる。もうそれがすでに出来ないって大臣が認めました。今後8年間で700億円の投資が実現し、解散する予定の2032年度には82億黒字が出る。これ、実現可能性あるんですか?初年度の上半期でつまずいてますよ?」

 

当たり前だが、出来るわけがない。
18年度までの累積損失で、すでに約92億円も出ているのだ。
それを取り返すことすら、この調子ではありえない。

 

今後の損害を縮小するためにも、こんなバカげたファンドは早々に手仕舞いするのが吉である。
世論が高まればそういう結末もアリかもしれないが、世の中は次々と台風19号の全国的な被害が明らかになっていることに関心を奪われており、残念ながら、この蓮舫氏の質疑がメディアで取り上げられることはほとんどなかった。

 

退職金を満額もらって退職した「前専務」という人物は、今後も責任を取ったり処分されることはない。
なぜなら「違法」な行為はないからだ。
信託銀行出身者や財務省の関係者が、よってたかって税金を食い物にするスキームを自分で作り上げるのだから、そこで法に触れるようなドジを踏むはずがない。
こういう行為をやめさせるには、違法性を問うのではなく、広く世間がその倫理観を問うしかないのだ。

 

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