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「検事長定年延長」問題、閣議決定に必死で寄せる大臣と官僚

コロナウィルスの感染拡大で日本中の関心がそちらに持っていかれる中、国会では黒川検事の定年延長問題という、「行政と法」に関わる、深刻な問題が議論されている。
ここで議論されている「与党政府の理屈」が通れば、今後日本では、行政が思うように法の解釈を変更することが可能になり得る。
昨今の奇妙な「閣議決定」を見て、すでに直感的に感じ取られている方も少なくないと思うが、この「検事長定年問題」の流れから、まさに官邸の都合で放たれたウソに、大臣が強弁し、法制局が調整し、行政官が口裏を合わせるといった、異常な経緯を垣間見ることが出来る。

 

まずは2月19日の衆・予算委、山尾志桜里議員の質疑から。

 

序文で、この問題を整理、分かりやすい。

 

山尾議員「黒川検事長の定年延長は2重に違法。1に、安倍内閣による解釈変更は、本来は法改正でなすべきもので、行政の裁量の範囲を超えて違法。第2に、人事の時点、1月31日の時点で、本当は解釈はなされていなかったので違法。」

 

山尾氏は、近藤正春内閣法制局長に、この閣議決定が、なぜ法案審議を伴わず「法解釈」だけで変更が可能なのか尋ねるが、マトモな回答は得られるはずがない。
近藤氏は、通産省出身の、いわば官邸筋のクサイ息がたくさんかかった法制局長なのだ。
そして、今度は司法行政である検事総長に、クサイ息がたっぷりかかった人物をねじ込もうというのが、つまり今回の検事長定年延長の閣議決定だ。

 

山尾議員「過去に『適用外』と明確に除外しているものを『適用内』と変更するのは、解釈変更では足らない。(中略)検察官というのは行政官でありながら準司法官、そういう検察官の中立性を制度上、どう担保するのかというのは極めて重要な論点。これについて、総理の采配で検察官の定年を左右できるようなら、政治家に対する犯罪捜査のインセンティブが下がるでしょ?」

 

次の問題は、人事の時点で(閣議決定時)国家公務員法の解釈変更など、まだされていなかったのでは?という点。

 

山尾議員「森大臣、安倍内閣として最終的に『解釈変更』したのはいつですか?」

 

この質問が、どう「鋭い」のかというと、実は、森大臣は2月10日の山尾議員の質問で、国家公務員法の定年条文の部分を改正する立法時、人事院の官僚が、「検察官はこれに含まない」と答弁していたことを知らなかったのだ。
つまり、そうした事実を政府全体が知らないまま、内閣法制局がOKを出し、閣議決定をした、というところが問題となる。
森大臣と、その後出てくる人事院の官僚は、その部分を必死になって辻褄をあわせようとする。
この予算委は、そういうストーリー仕立てになっている。
森大臣が、過去の人事院答弁を知らなかった事件は、下のブログに詳しくある。

 

「検事長の定年延長」立法当時の議事録に「検察官は含まない」
2020年2月10日、衆・予算委から、山尾志桜里議員の大事な指摘があった。 テーマは、検事長の定年延長の閣議決定は違法である、という件。 山尾議員「検察官に国家公務員法を適用して、定年延長を認めるというのは、検察庁と...

 

森大臣は、この「最終的に『解釈変更』したのはいつ」という質問になかなか答えない。
そりゃそうだ。
解釈変更は、そのずっとあと、山尾議員の指摘で初めて気づいて慌ててしたのだから。

 

タイムテーブル
・・・
1月17日~21日 法制局と内閣府、応接記録
1月22日~24日 法務省と人事院、協議
1月29日 閣議の請議
1月31日 黒川検事の定年延長を閣議決定
2月10日 衆・予算委で山尾氏質問、森大臣、立法時(昭和56)の「検察官適用除外」知らず
2月12日 衆・予算委で後藤氏質問、松尾氏答弁「人事院の法解釈変わらず」
2月13日 安倍首相、衆・本会議で「法解釈を変更した」

 

森大臣は、法解釈をしたのは、人事院が了承をした1月24日と、苦し紛れに答弁する。

 

山尾議員「では、大臣が『昔は適用外だった』ということを知ったのはいつですか?」
森大臣「1月の下旬です。」
山尾議員「違うでしょ?w 誰が見ても2月10日に、私がここで紹介して初めて知ったでしょ?はっきり言うけど。ではなぜ2月10日に、『こういう解釈変更をしたんです』と言わなかったんですか?」

 

そうなのだ。
森大臣は、この後もグダグダと言い訳をするのだが、筋が通らないのだ。
上で紹介した前記事を読んで頂ければ分かるのだが、2月10日、森大臣は明らかに、この過去の人事院の答弁を知らなかったのだ。

 

そして、質問は人事院に向けられる。

 

山尾議員「『人事院としては特に異論はない』というペーパーがある。異論がないと法務省に回答したのはいつか?」
人事院給与局長松尾恵美子氏「1月24日です。」
山尾議員「だったらどうして、2月12日の議論で『現在までも特にそれについて議論はなかったので、同じ解釈を引きついています』と答弁したのですか?」
人事院「(要約)1月22日には、法務省と法解釈変更の議論があった。」
山尾議員「(要約)だったら、2月12日の『現在まで同じ解釈を引き継いでいる』って答弁は何?」
人事院「『現在』という言葉が不適切でした。撤回します。」←まじかー

問題は、「現在までも」を撤回したところで、「議論はなかったので変更ない」という文脈を変えることは無理なのだ。
あまりに苦しい。
アップアップになった松尾氏はトチ狂ってこんな答弁をする。
「2月12日に『現在』と申し上げたのは、1月22日までのこと」←ウソだろ!?
完全にぶっ壊れている。
さすがにここで長いタイムが入り、議場は一時休憩となる。
タイムが明け、答弁は「1月22日までは議論がなくこれまでの解釈を引き継いでいたが、」と答弁を変更した

 

山尾議員「なぜこんな間違えようのないところを間違えたのですか?」
人事院松尾氏「つい、言い間違えた。」

 

これが、強引に閣議決定をした後の、大臣や関係省庁による必死のつじつま合わせである。
最後の山尾議員の質疑で驚いたが、閣議決定前1月22日~24日の法務省と人事院の協議で、法務省側は検察庁法の定年延長可能だけでなく、ついでに「定年者の再任用」をも認めるように交渉していたという。
今のところ、これは人事院が難色を示したことで頓挫しているが、それにしても、何ということであろうか。

 

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