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「検事長の定年延長」立法当時の議事録に「検察官は含まない」

2020年2月10日、衆・予算委から、山尾志桜里議員の大事な指摘があった。

 

テーマは、検事長の定年延長の閣議決定は違法である、という件。

 

山尾議員「検察官に国家公務員法を適用して、定年延長を認めるというのは、検察庁という組織の本質に反しますし、法の根拠がない違法な措置だと思いますので、しっかり議論したいです。」

 

元検事だけあって、自信と迫力に満ち満ちている。
まずは、この時系列を抑えておこう。

 

検察庁法22条で検察官の定年が定められたのは昭和22年
国家公務員法の改正で定年・定年延長を定めたのは、昭和56年(改正、昭和60年施行)

 

森まさ子大臣の主張は、国家公務員法の改正で定年・定年延長を定めた昭和60年から、検察官の定年は延長できると法解釈する、というもの。
そこで山尾議員。

 

山尾議員「一般公務員は、この年齢に達したら定年ですという条項と、プラス延長の条文、定年に達した職員が、前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合延長できる、という風にこの改正で書いたわけです。もし、検察官も、この定年延長を認めるとその時の立法者が判断したなら、『前条第一項の規定により』と書かずに、定年に達した職員が退職すべきこととなる場合に、と書きますよね。」

 

つまり、延長が出来るとしている対象は、『前条第一項の規定により』定年すべき、とされた者になるので、この場合、国家公務員法の中の定年を定めた条文により定年を迎える人、と読むのが普通の読み方だ。
ちなみに、検察官の定年は、国家公務員法ではなく、検察庁法で定められている。
今回、渦中の人となっている黒川検事長は、「検察庁法の定年規程」により、定年を迎える者であって、国家公務員法の「前条一項の規定」により定年を迎えるわけではない。
仮に、国家公務員法の改正で定年条項を作った立法者に、検察官も含めるという意思があるなら、『前条第一項の規定により』などという書き方はしない、というのが山尾議員の主張だ。
納得が出来る。

 

山尾議員「この週末、ずっと議事録を調べていました。国家公務員法改正の議事録から、昭和56年4月28日、衆・内閣委員会、当時民社党のカンダマコトさんという議員が『定年制の導入は、当然指定職にある職員にも適用されることになるのか。例えば一般職にありましては、検事総長その他の検察官、これらについてどういう風にお考えになりますか。』と、聞いてます。それに対して小野政府員(人事院の事務総局の人)、『検察官と大学教官につきましては、現在すでに定年が定められております。今回の定年制は適用されないことになっております。』こういう風に答弁してますよ。」

 

ふつうなら、ここで議論は「詰み」だ。

 

山尾議員「大臣、この議事録、読まれました?」
森まさ子大臣「その議事録の詳細は存じ上げません」
山尾議員「この議事録、読んでいただかないことには、検察官に、戦後初の定年延長を、国家公務員法で読み込めるかっていう解釈、理解はできないと思いますよ。きちんと読んで、ご自身の人事が法的根拠を持つものなのかどうか再確認していただきたい。少なくとも、この当時の議事録では、国家公務員法の定年制度は検察官には適用されないことになっておりますと、言っております。違法だと思いますよ。政府の統一見解を求めたいと思います。
森まさ子大臣「いずれにしましても、」←いずれにしましても??
森まさ子大臣「検察庁を所管する立場で申し上げると・・・(要するに、合法であると)解しております。」

 

森大臣のこの後の答弁は、要約すれば、そうした過去の事情はよく知らないが、とにかく私はそう解釈している、といった、なんの説得性もない自己主張に終始した。
まぁ、要するに、この議事録を「知らない」という人が、大臣という肩書だけで、特例的な独自解釈なんてしてもらっちゃ困るのだよ、というところに話は落ちる。
この、山尾議員の鋭い指摘に、後日政府がどう反応するのか、どう考えても議論としては詰みの状況なのだが、「桜を見る会」も詰みのまま延々と追及が続いているので、この先どうなるのか、想像がつかない。

 

最後に、山尾議員の言葉。

 

山尾議員「今回のやり方は法的根拠がない。違法な措置です。私は検事をやってましたけれども、検察庁一体の原則というのを教わってきました。検察庁というのは、金太郎飴みたいな組織だと教わった。切っても切っても同じ顔が現れて、替えが効くということこそが、検察庁の最大の強みだと。替えが効く、この人にしかできないとか、この人じゃないとダメだとか、そういうことがない、属人性がないということが、この検察庁の正義であり一番の強みだ、と。その大原則を押し切って、黒川検事長にしかできない、替えがきかない仕事ってなんですか?と、聞いたとしたら、それが仮にあるなら、政府から延長してくれという願いを毅然とはねのけて、検察庁の政府からの独立と法の支配を守るということ、これが黒川検事長にしかできない、最後の仕事ではないかと思います。」

 

この言葉、果たして黒川検事長に届くのだろうか?

 

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