3月15日に起きた、ニュージーランドのクライストチャーチのモスク襲撃事件から1週間ほどが経った。
拘束された「男女4人」のうち3人は誤認逮捕、つまり犯人は単独で、オーストラリア出身の28歳の男性だった。
頭部に付けた小型カメラで、残虐な犯行の一部始終をフェイスブックで生中継していたこと、犯行前に「声明文」とされる74ページに及ぶドキュメントを、これもまたフェイスブックに掲載していたことから、SNSの運営に問題提起が及んでいる。
また21日のウォールストリートジャーナルの報道では、
犯行の中継開始から30分後に、利用者による通報が入ったにもかかわらず、同社が削除するまでさらに30分が経過、計1時間もの間、手つかずで残虐動画がネットにさらされたことも明らかになった。
これは批判を受けるのは避けられないだろう。
事件後、彼のフェイスブックアカウントは、すぐに凍結されたので、犯行以前にどんな書き込みをしていたかは、明らかになっていない。
が、これまでのことから、この男性がフェイスブックのコアなユーザーだったことは疑う余地がない。
白人至上主義か、或いはムスリム排外主義か、いずれにせよ、そうしたエクストリームな思想を持った世界中の人たちと繋がっていた可能性もある。
そんな流れを受けて、犯人の出身地であるオーストラリアのモリソン首相が、おそらく、たぶん、いやかなりの確率で、安倍首相を悩ますであろうある提案をした。
モリソン首相は自らのツイッターアカウントで、安倍首相に送った書簡を公表している。
I’ve written to Japanese PM @AbeShinzo as G20 President to have the leaders of the world’s biggest economies ensure social media companies implement better safeguards to ensure their platforms can’t be exploited by terrorists or to spread hate speech. pic.twitter.com/LEQacLqSYi
— Scott Morrison (@ScottMorrisonMP) 2019年3月18日
経済大国のトップが集まる大阪G20で、SNSがテロリストに利用されたり、ヘイトスピーチを拡散させたりすることを防ぐ手立てについて、話し合いをしたいので、ぜひ議題に乗せてくれ、というお願いだ。
21日時点では、安倍首相は、はっきりとした回答は避け、「参加各国と緊密に連携しながら適切に対応していく考えだ」と、だけコメントしている。
いわゆる紛争地域の武装テロリスト集団についてなら、安倍首相は一も二もなく即答するだろう。
ただ、今回ニュージーランドで起きた大量殺害事件は、一個人、自身が語るところの「普通の白人男性」が起こしたものである。
今回の事件を下敷きにした話し合いがなされれば、人種差別や宗教差別に基づくヘイトスピーチが話題に上がるのは、ほぼ間違いがない。
それに関して、何らかの合意がG20でなされれば、安倍首相の取り巻きともいえる著名人や、多くの支持者である自称「普通の日本人」のヘイト発言が、SNSから削除される事態にもなりかねない。
さらに興味深いのは、この件に関する各社報道が、主に「テロ」と「SNS」「規制」というワードしか、頑として使わないことだ。
これも忖度だろうか?
「ヘイトスピーチ」「憎悪」という表記を出して報道しているのは、Googleで調べたが、日本のメディアには一つもない。
記事の最後で「即答を避ける」と結んでも、背景が分からない読者は、なぜ避けるのかわからないだろう。
さて、安倍首相、これに何と答えるのか。