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「GoToキャンペーン」悪びれることなく用いられる官製談合の手口 

2020年度一次補正予算に盛り込んだ、GoToキャンペーン(予算額1兆6794億円)の外部委託事務経費が総予算の約2割に当たる3095億円にのぼり、その高額な経費が問題視されている。

 

持続化給付金の給付事務事業を、サービスデザイン推進協議会が769億円で受託し、それを749億円で電通に再委託をした案件が「中抜き」と批判を浴びる中で、同様に巨大事業が不透明な形で入札されることに国民の不信が高まっている。

 

そんな中、6月3日の衆・国土交通委員会で矢上雅義議員から質疑があった。
政府に対する「質問」としてだけでなく、公共事業受注にあまり詳しくない一般人向けの「解説」としてもありがたい内容になっている。

 

矢上議員「今回の公募について、『企画提案型』という公募には二通りあって、総合評価の落札方式による入札と、今回の規格競争方式がある。総合評価落札方式は入札金額も提示するが、今回の規格競争方式は予算額3000億円以内であれば、そこを上限として行われるもので、契約内容の多寡は要求されていない。あくまでも契約内容の優劣を競うというものなのだが、そういう理解でよいか?」
経産省・島田大臣官房審議官「(要約)事業者からさまざまな提案を受けた上で、契約をする形式でございます。」

 

あくまで、巨額事業の「規格の中身」を問う入札なのですね?と確認。

 

矢上議員「お答えにくいでしょうね。別の観点から聞きます。今回のような1兆5千億円規模の巨大かつ複雑な事業であるにもかかわらず、公募が5月26日。オンライン説明会が6月1日。オンラインですよ、面前でなく。締め切りは6月8日。特に今回は今までと違って、地域の中間段階での中小の事業委託も介在する、非常に複雑な仕組みであります。一週間以内で1兆5千億円規模の企画書を提出するということは、ふつうできますか?これは、規格の内容を事前に知り得る立場の事業者でなければ、到底不可能だと思いますが。」
島田審議官「(要約)7月末には実施したく、時間がない。5月26日から14日の公募期間を確保しているので、法令通りだ。」

 

これに対して長々と答弁する役人だが、要約すれば言いたいことはこんな感じだ。
矢上議員に公募の時間が短すぎること、それに十分に応えられる事業者がいることの不自然さを問われたものの、我々のやったことは「法令範囲内」ということを強調する。

 

矢上議員「一般論として契約形式自体は合法性を装いながら、申込期間を不合理なまでに短期間に設定することにより、特定の事業者のために競争性を排除していると批判されても仕方のない仕組みになっている。1つ聞くが、慣例として『随意契約の場合は2社以上の専門業者に業務内容を提示したうえで見積もりを聴取し、それを予定価格に反映させて予算を作る』という方法が昔からあるが、この時に見積もり作成に中心になって協力した見積もり業者が、いわゆる『汗かきルール』によって落札する傾向が高いと言われているが、『汗かきルール』一度でも聞いたことございますか?」

 

場内がざわっとし、笑っているような声も聞こえる。

 

島田審議官「大変恐縮です。私は・・今回初めて聞きました。」
どっと笑い声。

 

「汗かきルール」をネットで調べてみたところ、赤旗新聞の2006年汚泥処理の談合疑惑事件の記事がヒットした。
その説明を引用すると、

 

一連の談合では、施設の設計を受注した設計コンサルタントに最も協力した企業を受注予定社とする「汗かきルール」と呼ばれるシステムが確立していたことが判明しています。・・・官民癒着そのものです。
(2006年5月24日赤旗新聞 談合へ“汗かきルール”“設計コンサル協力度”で受注)

 

とある。
つまり、これは官製談合に使われる典型的な手口なのだ。
答弁に立った島田審議官は、マスクで顔の半分が隠れているので判定が難しいが、おそらく40代くらいの人物だ。
議場で起こった笑い声の主は、おそらく「常識」としてこのルールを知っていた年配者のものだったのだろうと想像する。

 

矢上議員「今日は入札契約のプロを寄越すからということで楽しみにしてたんですけど、まぁ、時間ですので総括します。今回の時間のないイベントで、経産省内もバタバタしていることは分かる。役所の事情を代弁しましょうか?軽くね。そもそもこのような複雑な実務を処理する専門的な人材もいないし、頭数もそろわない。また、民間企業に一括で業務委託すれば、複雑な会計処理も不要であり、会計検査院の検査を受けるにあたっても、なにも心配はいらないと。そういうお気持ちで行われたんでしょうけど、ではメリットのほかに、デメリットを言いましょう。」

 

ここからは若い官僚へ、政治キャリアの長い矢上氏から、穏やかにそして厳しい説教が始まる。

 

矢上議員「もしトンネル法人に元請けをさせて、その下請けで汗かいた人たちがどんどん下請けに入ったらですね、『汗かきルール』が実現して、要するに官製談合が脱法行為的に出来上がっている。それと、トンネル法人の構成員を、汗かいた人たちのグループで構成したら、みんなで仕事をぐるぐる回せるんですよ。しかもそれ、あくまでも民間取引でのやり取りですから、刑事上での罰則はないんですね。汗かきルールとか継続ルールとか言われているものをバンバンやれるんですよ。あとね、トンネル法人を随意契約の対象にするってことは、会計法とか財務法の通知に反するんですね。そもそも高度な専門知識とか特殊な技術を要するものを選ぶために随意契約、企画競争型の方式として選ぶのに、何ら実体のないトンネル法人を入れるということは、会計法に反するんですよ。もし今後、皆さん方が今回のような大きな事業で、役所レベルで対応できないようなことがあれば、率直に制度改正するなり、前向きにやらないと、今回のような大きな問題になってきますよ。ここは国土委員会ですけど、経産省のやってることは昭和の時代の官製談合を令和に持ち込んできたみたいな話で、みんな迷惑する話なんですよ。ですからきちんと是正してほしいと思います。以上です。」

 

「法令違反でなければなにをしてもいい」という昨今の、特に安倍政権下で染みついた官僚の倫理観に年長者として教え諭したかのような質疑だった。
昭和の頃、主に土木事業などでこうしたことは行われてきたそうだが、令和時代とはっきりと違うのは、やっている彼らに「後ろめたさ」が全くないことだ。
入札は公平・公正でなければならない、事業に絡んだ情報は公開されなければならないというような、行政としての基本中の基本の観念を、この役人たちが取り戻すのにどれほどの年月が必要となるのだろうか。

 

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