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質問通告で答弁代筆を強いられる官僚が、野党議員にキレる筋違い

森ゆうこ参議院議員が、15日に参議院予算委で質問に立つにあたって提出された、質問通告の内容が漏えいしたという問題が、ネットを中心に吹き上がり、一般メディアでも騒がれるようになった。

 

実はこの話を理解するには、もう少し時間をさかのぼる必要がある。
11日金曜日の夜、自称官僚の「夢見る官僚」というツイッターアカウントが、「森ゆうこ氏の質問通告が定刻までに提出されないので帰宅できない。今夜も深夜残業か」という趣旨の内容を投稿した。
折も折、巨大台風19号が関東に迫っている夜だった。
これが事実だとしたら、「働き方」の問題として、しかるべく検討される必要があるとは思う。
ただ、このアカウントは、プロフィール欄で官僚を名乗っているものの、匿名アカウントで、実際にこの人が官僚で、書いてある内容が真実であるという確証はない。
現在、このアカウントはすでに削除されている。
そんな中、産経新聞が、「森ゆうこ議員、質問通告遅れる?」という見出しで、この不確実なツイッターをもとに記事を上げた。
見出しに「?」がついていることからも、これを書いた記者が事実関係について確信がないことが分かる。
森氏によれば、「時間に遅れた事実はない」ということだ。
が、そもそも質問通告を受けて、大臣がするべき答弁の下準備をすべて官僚がお膳立てすることは、野党議員に文句を言う筋合いなのか?
匿名官僚氏は、「深夜まで答弁の準備を強いられた」と、苦情を投稿していたそうだが、原因はなにより、朗読するしか能のない閣僚のせいではないのか?
最初に私がツイッターでこの投稿を見かけたとき、「言いやすい方」「弱い方」に向けてしか思ったことを言えない、卑屈な気の小ささを感じた。
官僚として、与党への不満をネットに書き込んだりしたら、どう追跡され、どんな懲罰を受けるか考えただけでも恐ろしいだろう。
野党議員が相手なら、なにを言ってもいいし、場合によっては一部のネットユーザーが盛り上がって加勢してくれるだろう。
そんな風に考えたのではないだろうか?

 

思惑通り、「一部のネットユーザー」を代表する新聞社、産経新聞が喜々としてこの話題を取り上げた。
ツイッターをもとに記事を書くなど、新聞社として恥じるべき行為だが、なにせ産経新聞のことだ。
こういう程度の低い記事は、この社には残念ながらよくあることなのだ。

 

実は、話題になっている質問通告漏えい問題には、こうした序段があった。

 

そして日付は14日。
内閣参与の高橋洋一氏は、虎の門ニュースというネットの安倍礼賛番組で、「通告書を見ましたよ」と言って、その内容を番組内で批判した。

 

内閣府の説明によると、15日の参院予算委員会での森氏の質問内容について、内閣府の事務局が11日夜、森氏が参考人招致を求めていた国家戦略特区ワーキンググループの原英史・座長代理に対し、原氏に関連しない質問も含めたすべての質問内容をメールで送付した。原氏はその後、知り合いの大学教授に質問内容を電話とメールで連絡したという。
(2019年10月18日朝日新聞)

 

当初は、内閣府の職員から「聞いた」としていた高橋氏だが、上で報じられているようなルートで伝わったらしい。
しかも、原英史氏は14日付で、質問通告の内容に関して反論する記事をアゴラに寄稿までしている。
まだ国会で質疑をしていないのに、準備していた質問内容を詳細に知る人がネットにあふれているのを知った森ゆうこ氏は、さぞ驚いたことだろう。

 

自民党の森山裕国対委員長も同日、「事前に質問通告が漏れて、それが質問の前に批判にさらされるようなことがあっては、国会議員の質問権という問題を考えるときに遺憾だ」と記者団に語った。
(2019年10月18日朝日新聞)

 

森山氏は、一応見識のある見解を表明しているものの、では何か手を打ってくれるかというと、あまり期待はできない。
相手は民間人とはいえ、官邸の後ろ盾が厚い人たちだ。

 

野党は、いっそのこと「質問通告」なんぞやめたらいい。
スキルの低い現内閣では、まともな答弁も期待できず、審議は滞るかもしれないが、閣僚たちの程度の低さを国民に示すことも必要だと思う。
事前通告は慣例に過ぎず、提出が規定されているわけではない。
「xxxについて」と項目だけ示せば十分だろう。
そう思ったら、実は野党時代の自民党の質問通告が、実際そういうさっぱりしたものだったことを、今回初めて知った。

 

 

これで十分だと思う。
審議に、過去の統計の正確な数値などが必要な場合は、その旨だけ通告すればいい。
国会を見るものとしては、議員間の知性と見識を武器にした熱いディベートをぜひ見せていただきたい。
ある意味、今回の事件は、そういう国会を目指すのにいいきっかけになるのではないだろうか。

 

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