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船頭が多すぎるワクチン事業、その行方は?

船頭が多すぎる日本のワクチン事業。
菅政権、自民党にとっては選挙アピールにも使えるマターなので、事実よりもはるかに前のめり過ぎると感じられる発言が相次いでいる。
日本におけるワクチン接種事業は、菅政権の言っている通りに進むのか。
事実ベースと関係閣僚等の発言を時系列を追いつつ検証する。

 

まずは船頭から紹介しよう。

 

菅首相・・なんといっても総理大臣。
田村厚労大臣・・本来の管轄割なら中心となるはずの役職
河野ワクチン担当大臣・・2020年末に鳴り物入りで菅首相に指名された特別職
武田総務大臣・・接種運営の主体となる自治体を指揮すべき管轄

 

サブ船頭として

西村コロナ担当大臣・・直接ワクチン担当ではないが、国会でワクチンに関して答弁することもしばしば
下村博文自民政調会長・・閣外から菅政権に不利な発信をしまくる政権にとっての獅子身中の虫。

 

菅首相は、4月17日にバイデン大領との日米首脳会談のために訪米、このとき、ファイザー社CEOブーラ氏と『電話会談』を行ったところから、ワクチンに関する発言が増えた。

 


4月16日午前、突然湧いて出た「菅×ブーラ電話会談案」について、記者会見で問われて嬉しそうに語る河野大臣

 

想定外に良いニュースが飛び込んできて、菅首相の支持率が爆上がりするのではと身を構えたが、状況は一転。
菅首相が帰国し、懸命に膨らました成果のアピールのみに終始する。

 

 

訪米の成果を報告した翌月曜日(4月19日)、「要請をした」「実質合意に至った」「目途が立った」と発言するが、同日の国会で、田村厚労大臣から「書面による合意はない」との答弁があり、すべてが単なる菅首相の思い込みに近いことが明らかになる。
その直前の河野大臣の「お楽しみ」発言の根拠は一体何だったのか?
それはいまだに謎である。

 

日を同じくし、今度は下村博文自民政調会長から横やりも入る。

 

自民党の下村博文政調会長は19日、高齢者向けの新型コロナウイルスワクチン接種が年内に終わらない可能性に言及した。「自治体によっては医療関係者の協力が足らず、65歳以上に限定しても場合によっては来年までかかるのではないか」と述べた。
(2021年4月19日 日経)

 

安倍派に身を置く下村氏は、自民党内では菅氏の仇敵なのかもしれないが、それにしても同じ自民党からこのタイミングで、このような水を差す意見が出ることは、少なくともワクチン案件が自民党内で政局の材料となっていることを想像させる。
(そういう場合か?)
しかし、政局発言ではあるものの、今回ばかりは下村氏発言は現実に即していると見てもいい。

 

そしてその同じ週、折からの関西方面における感染拡大と医療崩壊、東京地域の変異株拡大が深刻になり、菅首相は、それまでの「まん延防止等措置法」から、」緊急事態宣言」に切り替えることを決断した。
その時の記者会見(4月23日)で次のようにブチ上げる。

 

ワクチンの接種が始まっています。多くの方々に速やかに受けていただくため、できることは全てやる覚悟で取り組んでいます。まずは医療従事者への接種を早急に終えます。そして、ゴールデンウィーク明けまでには約700万回分、それ以降は毎週約1,000万回分を全国の自治体に配布し、6月末までには合計1億回分を配布できるようにいたします。その上で、接種のスケジュールについては、希望する高齢者に、7月末を念頭に各自治体が2回の接種を終えることができるよう、政府を挙げて取り組んでまいります。
自治体の多くで課題とされる人材確保のために、全国の接種会場への看護師の派遣と歯科医師による接種を可能とします。先般の訪米では、ファイザー社のCEOに要請を行い、本年9月までに全ての対象者に確実に供給できるめどが立ちました。高齢者への接種の状況を踏まえ、必要とする全ての方々への速やかな接種が済むよう、取り組んでまいります。
(首相会見書き起こし 官邸HPより)

 

最も注目を浴びたのはこの点だ。
「希望する高齢者に、7月末を念頭に各自治体が2回の接種を終えることができるよう」
※「希望する」という言葉を巧妙に潜り込ませているところには、なんらかの意図を感じる。

 

7月末までの90日間で、高齢者3600万人×2回接種をざっくり割り算すると、5月からは休みなしで毎日80万回の接種が行われる必要がある。
このような巨大事業の仕組みを日本政府、各自治体行政は作れるのか?
PCR検査の仕組みも作れないこれまでの働きを見ると、大いに疑問に思う。

 

この打ち上げ花火が上がって以降、閣僚による発言が活発になる。
そしていきなり出たのがこれ。

 

 

自治体のワクチンの需要に供給が追い付かない見通しです。
“ワクチン接種担当”河野大臣:「すみません。オーバーフロー致しました。これだけオーバーしてしまうと、傾斜配分をせざるを得なくなりますんで、そこはちょっと申し訳なく思っております」
河野大臣は供給が潤沢になると話していた来月10日から2週間分のワクチンについて、需要が供給を上回ったことを明らかにしました。
河野大臣は来月になれば供給が潤沢になるとしていましたが、10日から2週間分のワクチンとして準備していた約1800万回分に対して自治体からの要望が2300万回を超えたということです。
河野大臣は「在庫が積み上がるのではないか」と述べていて、自治体間の融通をあっせんする意向を示しました。
(2021年4月22日 テレビ朝日)

 

※傾斜配分とは・・・配当金や予算などを均等に配分するのではなく、実績や現状などから判断して、それぞれに割り当てられる量を決めること。

 

余談だが、やってるフリをしている武田大臣の動きも見逃せない。

 

武田良太総務相は24日までに、高齢者を対象とした新型コロナウイルスのワクチン接種について、7月末までを念頭に終えられるよう協力を求めるメールを、全国の首長に出した。メールでは「自治体が抱える課題を丁寧に伺い、ワクチン接種が円滑に進むようしっかり支援する」と記した。
(2021年4月24日時事)

 

大臣がメールを送信して「やってる感」とは、あまりにもナメている。

 

7月末まに(希望する)全高齢者2回接種を断言した菅首相の断言を受けて、政府もようやく本腰を入れ始めた感がある。
くどいようだが、この達成には最低でも毎日80万回の接種回数が必要になる。

 

国、1日1万人規模のワクチン会場運営へ 東京、大阪を想定
政府は新型コロナウイルスのワクチン接種に関し、自治体が運営するのとは別に、大規模な接種会場を運営する方向で検討に入った。国が会場を開設し、1日1万人規模の対応を可能とする。東京、大阪への設置を想定し、世界的にも遅れているとされるワクチン接種を加速させる考えだ。打ち手不足に対応するため、医師の資格を持つ自衛隊員らの活用も検討する。政府関係者が25日、明らかにした。
(2021年4月25日毎日新聞)

 

1万人の会場(2会場合わせて1万か?)を設営したところで、80万回の目標には程遠いのだが、それでも懸念点はいくつかある。

 

・“自治体が運営するのとは別”・・・供給、集計が自治体とは別ラインになる。同時並行ラインを管理できるのか?
“打ち手不足に対応”・・・五輪の医療スタッフ調達の時期と一部重なる。耐えられるのか?
・“政府関係者が25日、明らかにした”・・・誰?厚労省?内閣府?物流を管理する河野太郎は承知の話なのか?

 

見るからに難航しそうなプランである。
国におけるワクチン事業は、ほぼあきらめの境地と言ってもいいレベルだと思うのだが、無能な政権政府が、どれほど無能なのかを計るのに、これほどもってこいのテスト事業はない。
そういう目で一連のワクチン事業を見守っている。

追記

 

田村大臣は、4月25日のフジテレビの番組で7月中に一般接種が始まる可能性があるという見通しを示した。

 

 

田村厚労相「ワクチンの量があれば、並走してということも可能性はあると思う。ワクチンの量がどれぐらい入ってくるかが非常に重要で、それに合わせて、なるべく早く一般の人にも打ちたいというのが菅総理の思い

 

7月末までに高齢者が完全接種終了という菅首相の突然の数値目標に、国独自のの接種会場はできるわ、一般接種も始まるわ、といろんなことを並行して「スタート」だけ見せようという思惑がちらつく。
厚労大臣がなんの現場調整もなしに「首相の思い」などという情緒的な根拠で、このようなことをテレビで宣伝してしまっていることを、河野太郎氏はどこまで承知しているのか?
また一人の船頭が、山に向けて舟を漕ぎ出した。

 

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