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「年末年始17連休」の背景と西村大臣の浅慮ぶり

西村経済再生担当大臣が、年末年始の17連休提言を打ち上げたことで与党内がざわついている。

西村経済再生相 “年末年始の休暇延長を” 経済団体に要請
新型コロナウイルス対策をめぐり、西村経済再生担当大臣は楽天の三木谷社長らIT企業などでつくる経済団体の役員と会談し、年末年始の帰省や旅行を分散させるため、年始の休暇を延ばすなどの対応を検討してほしいと要請しました。
・・・この中で、西村大臣は「初詣などの行事が年始の3日間に集中することも考えられるので、例えば、1月11日の祝日までの連続休暇化などを検討してほしい」と述べ、年末年始の帰省や旅行を分散させるため、年始の休暇を延ばすなどの対応を検討してほしいと要請しました。
(2020年10月22日NHK)

 

これは22日の報道だ。
あまりに唐突だった西村大臣の発言は、ツイッター内でも「17連休」というワードがトレンド入りするほど話題になった。

 

その翌日23日には、分科会の尾身会長が年末年始の休暇延長を正式な提言として発表した。
その時の資料がこちら。

 


年末年始に関する分科会から政府への提言

 

5項目に分けているものの、言ってることは一つに近い。
1、年末年始に国家公務員が率先して年次休暇を取るように
2、強い政治力で奨励せよ
3、経済界や地方自治体にも同様に呼びかけろ
4、5、に関してはオマケみたいなもんである。

 

この分科会の提言をお墨付きにして、西村大臣は23日に「年末年始17連休」を各方面に要請したのだ。

 

西村経済再生担当大臣は記者会見で、年末年始の休暇について「国家公務員は、もともと働き方改革の一環で休みを分散して取ろうということを進めており、それをさらに進めるという意味で、この年末年始はモデルケースになる。内閣人事局を中心に呼びかけを行いたいし、それぞれの省庁でも進めてもらうよう大臣にもお願いしたい」と述べました。
(2020年10月23日NHK)

 

これについて経団連は「賛同する」とコメントを出したが、個別の企業は足並みがそろっていないようで、東芝は「慎重に対応を検討」との見解を出している。

 

さて、この17連休政策をどう見るか?

 

もっぱら多い意見としては、年次休暇をくっつけて17連休にできる公務員や大企業の正社員はそれでもいいだろうが、今や全体の4割とも言われる非正規労働者の収入が激減する、という批判。
ただでさえ全体的な収入減を起こしているこのコロナ禍に、これは至極ごもっともである。

 

では、これはGoTo政策推進のための提言であるのかと言えば、そうでもない。
むしろ、GoToのためにはマイナスですらある。
なぜなら、年次休暇というのは、基本的には年間どの時期でも取得可能であるものだからだ。
数に限りのある年次休暇を、年始年末に縛りをかけ一斉にそこで取得させることは、多くの国民に時期を分散させながらGoToを利用させようという思惑とは逆行する。

 

では一体「17連休」の真の目的とはなんなのか?

 

時間は少し戻って、ここに興味深い情報がある。
内閣府のサイト内にある、10月6日西村大臣の会見要旨というものだ。
第14回記者会見要旨:令和2年 会議結果 西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨

 

その日の経済財政諮問会議の内容をつらつらと説明したあと、以下のような追加事項を発表している。

 

それから、あと2点申し上げます。
1つは、本日、神道政治連盟、埼玉県神社庁の方々がお越しになりまして、新しい生活様式に合わせた参拝方式など、神社庁として取り組む感染防止策などについて御説明いただきました。
3密を避ける、あるいは、柄杓ではなく手水にとって流水で手を洗うなど、あるいはマスクを着用して大声を出さないといった努力を伺いました。
今後、初詣があり、多くの国民の皆さんも日本の伝統行事である初詣に是非行きたいと思っている方が多いと思います。一方で、密になることを心配されている方もおられますので、今後、安心して参拝ができるように検討を進めていきたいと考えているところです。

 

神道政治連盟、埼玉県神社庁の方々のロビー活動があったことを明かしている。
神道政治連盟といえば、日本会議の中核とも言える政治団体だ。
安倍晋三氏の側近であり、コロナで国民に会食自粛を求めている最中に、杉田水脈氏のパーティに参加していたことからも分かるように、西村大臣は日本会議とは非常に縁の深い政治家だ。
こういう団体から直々に陳情を受け、西村大臣の鼻息が荒くなるのは道理である。

 

一方で、ロビー活動をする神社さんたちにも事情がある。
来年正月は、コロナ禍で人出減少が見込まれるうえに、2021年の暦では1月4日が月曜であることだ。
4日から仕事始めになる企業が多いため、年に一度の稼ぎ時である初詣が3日間に集中することが容易に予想される。
そうなれば、蜜を避ける人々が今年の初詣を自粛し、神社が大きく収入減になるためだ。

 

この会見の中で、さらに西村大臣はこうも言っている。

 

今後、初詣を控えて、それぞれの神社に何千人、何万人という人が、多いところだと100万人単位が参拝に訪れ、かなり密になる状況も想定されます。屋外ですから、室内と違って感染リスクは少ないとは思いますが、しかしそうした中で安心して参拝いただくためにはどのような対応が必要かということをしっかり検討していきたいと考えています。

 

そう、これを受けて西村大臣は、分科会に「正月休暇延長を提言」するよう差し向けたのだと思われる。
その後の時系列は上で述べたとおりだ。

 

全国を巻き込んだ「17連休」という西村大臣の提言は、なんのことはない、支持団体である神道政治連盟から受けた陳情を叶えたものに過ぎなかったのだ。

 

・・、とここまでは、一部の団体にのみ耳を傾ける、自民党あるある行政なのだが、26日になって面白い記事が出た。

 

二階氏、年始休暇延長案に不快感
「聞いていない。真意がどこにあるのか理解していない」と不快感を示した。休暇延長は、1月の通常国会の召集日に影響しかねないことが背景にある。
(2020年10月26日共同通信)

 

それまではこの17連休に関して、西村氏は内閣担当大臣であるのだから、当然あちこちに根回しをした上での判断、発表だと思って見ていた。
ところが、どうやらそうではなかったようだ。
中央官庁の職員が率先して17連休取る、つまり11日まで省庁が完全に機能しないということは、一般的に1月中に召集される通常国会の日程に障ることになる。
ふつうに考えて、官僚の休暇明けにすぐに国会召集なんぞ出来るはずがない。
報道を見て、二階氏がこの件に関して自分が根回しをされていなかったことについて、やっかみから不快感を表していると思っている人もいるようだが、それは違う。
そんな安い感情論ではない。
2021年の通常国会の日程は、衆議院解散の戦略にも直結する問題だ。
任期が浅くまだ先の見通しが付きにくい上に、任期満了まであまり日にちがないスガ内閣にとって、国会召集の日程は何よりも重要なのである。

 

と、同時にこの二階氏の発言により、「年末年始17連休」が観光業振興のGoToと何の関係もないことも明らかになった。

 

さて、西村大臣がスタンドプレイですでに一部に周知させてしまったこの連休案件、今後いったいどうするつもりだろうか?

 

 

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