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検察庁法改正案、運用基準は可決のあとに議論するというトンデモ

5月13日、衆・内閣委員会、後藤祐一議員(国民民主)が、検察庁法改正案の立法事実という新たな側面から、この法案に斬りこんだ。

 

後藤議員「階先生の質疑の中で、昨年10月の段階まで、検事長が63才以降居座ることがなくても、公務に著しい支障が出ることは特段見当たらなかったと仰いましたが、それでよろしいですか?」
武田大臣「事例が見当たらなかった。」

 

ここで取れた言質は、
「2019年10月までの段階で、検事長の定年がやってきて公務に支障が出た、という具体的な事例はなかった
と確認している。

 

後藤議員「昨年10月までは、検事長が63歳以降、居残る必要がなかった、そういう公務上の障害はなかった、と答弁がありました。そして今回、検事長に63歳以降も居残れるようにしないと公務の運営に著しい障害があるとの答弁がありました。具体的にどういうケースですか?」
武田大臣「社会情勢が大きく変化して、国際的な組織犯罪やサイバー犯罪など多く発生・・・(中略)複雑困難な事件の真相を明らかにするためには時間を要することもあり、そのような事件を担当する検察官が途中で定年退職となり、別の検察官がそれを引き継ぐことになると、業務の遂行に重大な障害を生ずることがある。」
後藤議員「具体的な、現実に起きたケースがあるんじゃないですか?黒川検事長がそのケースなんじゃないですか?」
武田大臣「個別のケースは答えられない。」
後藤議員「ということは、63歳で検事長がやめられると困る、その後も居座れるという立法事実、事案はまだ発生していないということですか?」
武田大臣「事案はないんですけど、犯罪の複雑化を鑑みるとこうした事もありえる。」

 

あー武田大臣、「事案はない」と言ってしまった。
つまり、過去から去年の10月を通し、さらに今日まで、検事長の定年延長が必要になるような実際の障害は起きたことがないと答えてしまった。
このあと、「事案はないのですね?」と単純に念を押す後藤議員の質問に、武田大臣はしどろもどろになり、トンチンカンな答弁を繰り返した。
これには同じ与党の委員長も少し呆れ気味であった。

 

実は、黒川検事長の定年を延長するときに、「ゴーン氏の案件を引き続き捜査するため」と当時の法務大臣は説明している。
だから本当なら、「黒川氏の事例では、定年がゴーン氏の捜査に支障をきたしたので延長した。だから支障が出た例は、黒川氏の一件だった。」と本来答えるべきなのだが、そもそもその「ゴーン案件」という理由がもともと欺瞞である上に、ここでこの法案と黒川氏を結びつけて議論はしたくなかったのだろう。

 

事案がないのなら、では定年延長が必要と判断されるのはどういうケースなのか?

 

後藤議員「検事長を63才以降も居残れるようにする、これが可能な場合のどんな基準があるのか答えてください。」
武田大臣「国会の議論を踏まえて、法務省で判断したい。」
後藤議員「基準は具体的なものはないということでよろしいですか?」
武田大臣「ありません。」

 

えーっ、ないの?
そのくらい考えておけよ。

 

後藤議員「基準はありません、なんですかソレ。それがないと審議もできないですよ。ある程度の方針だけでも示してくださいよ。でないとこんな審議応じられないですよ」
武田大臣「施行日までにはしっかりと明らかにしていきたい。」
後藤議員「22条5項がどう運用されるかの基準が示されたら、審議の続きをやりましょう。行きましょ。」
委員長「ご・・後藤くん・・時計を・・」

 

こうして後藤議員は退席、審議は中断された。
法案の大事な部分を、採決後に省内で議論して決めるという非常識な答弁には驚くが、実は過去にも秘密保護法や共謀罪でこの異常な答弁は、たびたび使われてきた。
国会議論をなんだと思っているのだろう。
こうして13日の審議は途中で流れた。

 

5月9日から10日にかけた週末、いわゆるツイッターデモで、ハッシュタグに「#検察庁法改正案に抗議します」を付けたツイートが600万件以上書き込まれるという、政治では前例がない事象がネット上で起こった。
これにより、マスコミ各社も急にこの法案に関する報道を増やすようになり、さすがの与党もこれを無視できなくなった。
それまでは、13日に衆・内閣委員会で採決されるはずだったこの法案は、こんなふうにして13日にも審議を終えることができなかった。
15日には与党側は強行採決に出てくるという姿勢を崩さないというが、本当にやるのか?
そして世間はそれにどう反応するのか。
緊急事態宣言の解除に世間が浮き立つ中、今週はいろんなことが国会で起きそうだ。

 

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