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ドイツの新聞が日本の選挙を取り上げた意味

先日、南ドイツ新聞に取り上げられた「れいわ」に関する記事を翻訳してブログに載せたところ、大変多くの方にサイトに訪問いただき、ツイッターの方には、翻訳の労をねぎらうコメントや感想など、たくさんの反応もいただいた。
一つ一つ返事はできなかったけれど、コメントを書いてくださった皆さんに、改めてお礼を申し上げたい。
「ありがとうございました」

 

その記事は、こちら。

南ドイツ新聞が報じた木村英子氏の当選(日本語訳)
22日、南ドイツ新聞が、木村英子さんの当選と代表・山本太郎について、かなり詳しく報道している。 — 毛ば部とる子 (@kaori_sakai) July 22, 2019 何気なく紹介したドイツの新聞記事、予想を超えるリツイ...

 

そのたくさんのメッセージを読んで、実は引っかかったことが一つある。
翻訳した記事は、日本で初めて重度障がいを持つ議員が誕生したこと、その背景には、山本太郎が立ち上げた「れいわ新選組」という新政党があったこと、他にも市民が関わる候補者が多かったことなどに触れた、日本であった国政選挙の経過を、ドイツ人がドイツ人向けに書いた小さな記事である。

 

それだけの話だ。
それ以上でもなければ、それ以下でもない。

 

が、頂いた感想の中には、「ドイツがれいわに注目している」「日本の選挙が注目された」「世界が見ている」「外圧を」などの意見が、一定の割合で見られた。
大変な誤解をしていると感じたけれど、一件一件コメントするには件数がありすぎたので、これはブログに書くしかないな、と思った。

 

はっきり言うが、注目なんかされていない。

 

そもそもこの記事は、紙面トップでもない。
日本に置き換えてたとえると、朝日新聞の5ページ目くらいの国際欄に、全面の5分の1くらいの面積で掲載された程度の記事だ。
ふつうは、この扱いを「注目」などとは言わない。
これを読んで、ガッカリする人がいらしたら、本当に気の毒だが、致し方がない。

 

そんなことを考えていたら、ちょっと今の日本の世論は、「世界」というものに対して、なにかズレた感覚を持っていないか、と改めて思わされるに至った。
直近の例では、こんなことがあった。

 

先日、アニメスタジオが放火され、多数の死者を出す痛ましい事件が起きた。
実に凄惨で、ひどい事件だったと思う。
そのニュースを扱った情報番組等を見ると、コメンテーターの多くが、「世界に誇る日本のアニメ」「世界から哀悼の意」「世界の、世界の」というコメントが、あまりに多かった。
外国で日本のアニメが人気が出てきたのは事実だし、世界に悲しむ人がたくさんいたのも事実だ。
しかし、いちいち「世界」を引っ張り出してこの事件を悼むさまに、私は何とも言えない違和感を感じる。
仮にこれが、世界に誇るものでもない、平凡な弁当工場とかだったら、この人たちは、どんな言葉でこの事件を悼むのだろう。

 

現実の「国際社会」からはちょっとズレた、世界視点でコメントし、日本という限られた空間の中でコメンテーターと視聴者が互いに満足しあう様子は、長く日本を離れていてそういう感覚になじみのない私から見れば、少々気味の悪い世界に見える。
大部分の人は、そんな表現があったことにも気づかず、スルーしていしまっているだろう。
至極当然だ。
長期にわたって、毎日そういうものに触れていたら、人がそこに違和感を持つことは難しい。

 

巷では、ヨーロッパは寿司ブームだという。
それは、間違いではない。
近ごろは、スーパーなどでも、寿司パックが置いてあるほどポピュラーな食品になったし、町のすし店も以前より増えた。
ただ、すし職人や店のオーナーは、非日本人が多いし、だいいちみんなが寿司を食べながら「日本」を感じているわけではない。
私たちが、いちいちイタリアのことを考えながら、スパゲッティを食べたりはしないのと同じだ。

 

寿司やアニメなどが、欧州でもなじみが出てきたのは間違いないけれど、一部のコアなファンは除いて、それは消費活動の一環に過ぎない。
そのファンたちが、いちいち「日本」を認識しながら消費活動をしていると考えるのは、あまりに自意識が過剰と言ってもいい。

 

そういう心配から不安が大きくなるのが、今起きている、韓国との貿易紛争だ。
世論調査で7割もの人が「適切」「もっとやれ」と回答をしていることは、驚くべきことだ。
韓国が、昔から変わらない、貧しくて小さな隣国のままであると信じている人が多いのだろう。
また、なんの根拠もないのに、日本政府の言い分だけを信じて、「世界各国は日本に味方するはず」と疑いを持たない世論に危機感を感じる。

 

「海外在住者から見た日本。世界が注目している。大人気の日本。」などと書けば、読むだけで気持ちがよくなるブログとして、千客万来の快適なブログ運営が出来るのかもしれないが、私の性分がそれを許さない。
心地よい内容とは程遠いが、ドイツくんだりでこんなことを書いているのも、私なりの愛国心なのである。

 

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