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「週休3日制度」は誰のため?

あまり目立たないが、気になっているニュースがある。

 

自民党の一億総活躍推進本部(猪口邦子本部長)は3日、正社員らが週休3日制を選択できる制度について企業からの聞き取りに入った。育児や介護と仕事の両立を実現する選択肢として政策提言をめざし、4月半ばをめどに中間報告をまとめる。地方自治体や有識者らからも意見を聞く。
・・中略・・
党一億総活躍推進本部は週休3日制を選択できる制度の普及に向け、政府に政策提言する方針だ。人材が限られる中小企業が対象の奨励金創設などを検討する。休日に地方で兼業する人を増やす施策など地方創生の視点も探る。
(2021年2月4日日経)

 

まだ自民党内で検討されているに過ぎない段階だが、コロナ禍で業績が厳しくなる企業が増えてくることが予想される中で、この制度が労働者をだまし討ちにするような形で導入されることを危惧している。

 

同じニュースを、テレ朝の夕方の番組はこんな見出しで報じている。

 

「週休3日制・・・夢のような、さりとて実現できるのか?」

 

夢?
悪夢の間違いではないのか、と思った。
番組の構成を見ると、まず街頭インタビューでサラリーマンらしき人に意見を聞いている。

 

質問「週休3日制について」

 

実際にどう質問をしたのかは知らないが、背景を知らずに唐突に「週休3日制をどう思うか?」と聞かれたら、それは大部分の人が「それはいいねえ」と答えるだろう。
街頭インタビューでも、そのように質問されたのではないかと思われる。

 

20代男性アパレル「単純に時間が増えるので、新しいことを始められる。そこはうれしい。」
40代男性営業職「心から休めればいいですけど、なかなかそうはいかない状況で・・。」
40代不動産業女性「うれしいけど、3日も休むのは(仕事が多いので)難しい。」

 

みなさん、「休むつもり」でいるところが、失礼だが笑ってしまう。

 

しかし、上で引いた日経の記事も、このテレビ番組の報道も決定的な欠陥がある。
それは、報道内容に次のような重要な記述が欠けていることだ。

 

ただ、週休3日制によって労働時間が減る場合、給料が2割程度減るのが一般的で、家計に影響が出てくることから慎重論も出ています。
(2021年2月3日ABEMA)

 

そう、これは「お休みが増える」などという、うれしい話ではなく、リストラの一環となり得る話なのだ。
導入の理由について、猪口議員はこう説明している。

 

その理由についてコロナ禍でのテレワーク促進によって、子育てや介護、または大学院への進学や故郷での副業などを仕事と両立させたいという個人のニーズが高まったと説明しています。
(2021年2月3日ABEMA)

 

「ニーズが高まっている」
本当だろうか?
ちょうどこの時期可決された「特措法改正」の罰則規定では、政府は一貫して「多数の要望」があったことを根拠としていたが、つぶさに調べて見ると、専門家会議の議事録から要望どころか懸念が多かったことが露呈し、現場である保健所からはむしろそれに反対する意見が大多数であったことが問題となった。
たとえ給料が減ってでも週休3日制度があれば使いたい、という「ニーズ」もなくはないのだろうが、制度変更が必要なほど多数のニーズとは思えない。
まして、政府が助成金まで出してその旗振りをするというのは、いささか腑に落ちない。
政府は、こういう都合のいい制度を導入するにあたって、架空の「ニーズ」を捏造する時がある。
気を付けなければならない。

 

この怪しい「週休3日制」を多くの企業が導入するようになり、減った2割程度の収入を副業で得ようとすれば、それは週休3日どころではなく、週休ゼロにもなりかねない。
現時点では希望者に限って適用されることが前提であるが、いずれ会社の方から宣告する形で労働時間を減らされるようなことになりかねない。

 

4月中には菅総理に提出されるというこの提案、コロナ禍で企業が苦しくなっていく中で、マスコミが報道するような「おいしい」話ではないということを、注意しながら見守る必要がある。

 

猪口(いのぐち)邦子氏、筋金入りの新自由主義者だ。

 

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