スガ内閣が誕生し、河野太郎氏が改革担当大臣に任命されたのは昨日のことだ。
スガ氏は自身の初の総理記者会見で河野氏の人事について触れ、その際、行政の縦割り問題について国民から意見を募る「縦割り110番」のようなものができないか提案したことを明らかにした。
新総理にここまで言われて気負ったのか、河野氏は翌日には行動を始めた。
それがこれだ。
(2020年9月17日NHK)
問題は「みずからのウェブサイト」、つまり河野氏が個人的に運営する私的HPということだ。
行政としての意見公募を、大臣が個人的なサイト上で募る公私混同も甚だしい行為だ。
問題はここだけにはとどまらない。
(2020年9月17日NHK)
河野氏のツイッターアカウントは、大量の人がブロックされていることで有名だ。
過去に少しでも河野氏に批判的なツイートをした人、またはそれをリツイートした人などは悉くブロックされている。
ツイッターをよく知らない人のために補足すると、特定の人をブロックすることで、相手は自分の書き込みを一切見られなくなるという機能だ。
ちなみに、これはアメリカの話だが、トランプ大統領が自分に批判的な書き込みをしたアカウントをブロックしたことで、憲法違反の判決を受けた事例がある。
トランプ氏側は、自身のツイッターアカウントは「私的で個人的なアカウントで、その権利を行使しただけだ」と主張してきた。控訴審判決は、トランプ氏は大統領になって以後、ツイッターを統治ツールとして継続的に使っているとして、トランプ氏のアカウントは公共的な性格が強い、と指摘した。
(2019年7月10日朝日新聞)
話は本邦に戻るが、ここでもう一つ問題なのは河野氏の場合、意見公募をブロック多用しているツイッターで呼びかけたことだ。
つまり、行政としての呼びかけが、河野氏にブロックされている国民は見たくても見ることが出来ないのだ。
さらに言えば、ツイッターだけで呼びかけることにも問題がある。
内閣府のサイトなどで呼びかけて、ツイッターやフェイスブック(行政の公式アカウントに限る)も併用するというのなら話は別だが、ツイッターユーザー限定で、政府が意見公募を、しかも大臣の個人アカウントを使って呼びかけるなど、愚かしいにもほどがある。
この件は、さっそく加藤・新官房長官の会見にて質問されたが、その回答もあまりにメチャクチャで呆れてしまう。
そのうえで、記者団が「個人のホームページでは、情報流出の懸念もあるのではないか」と質問したのに対し、「投稿される方は、セキュリティーの状況も踏まえながら投稿されるんだろう。河野大臣も、これをベースにしながら次の展開も考えているのではないか」と述べました。
(2020年9月17日NHK)
あきれて言葉が出ない。
「やるべきことを一つ一つ進めていくという意味では」というが、一つ一つ進めていく「手続き」が全く取られていないのが、今回の問題だ。
さらに呆れるのは、記者団の質問である。
「情報流出の懸念」・・・・
そこか?そこなのか?そこじゃないだろ。
こんな簡単な問題を提起できない記者の程度も相当低いと言わざるを得ない。
余談だが、これに対して、セキュリティは投稿者の責任としている加藤官房長官の答えも、今回の件では問題点を異にするが、驚くべき発言だ。
そしてこの問題で最も残念なのは、NHKをはじめ、朝日新聞、毎日新聞、共同通信、時事通信、どれもこの件を取り上げながら、公私混同の点に全く触れていないことだ。
こういう風景を見ていると、一部の無能な大臣だけでなく日本社会全体が「公」と「私」の区別を付けられなくなっているのではないかと心配になる。
安倍政権で公文書が散逸してしまったことが重く捉えられているが、公私の区別も判断できない大臣やマスコミを頂いて、一般有権者がそれをチェックすることは可能なのだろうか。
たかが目安箱と言うかもしれない。
河野氏自身も、省内の公式サイトが完成すれば、個人サイトで受けたものはすべて移行する云々説明しているが、そういう問題ではない。
スピード感などといえば聞こえはいいが、行政には取らなければならない、取るべき「手続き」というものがある。
これを軽んじてスピード感などという感性だけで向き合っていると、いずれ社会として取り返しのつかないものを失うことになる。
非常に危惧している。