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汚染水を大阪湾へ、という妄言

松井一郎氏が妙なことを言い出した。

 

福島第一原発でたまり続ける処理済みの汚染水をめぐり、大阪市の松井一郎市長(日本維新の会代表)は17日午前、市役所で記者団に「政府が科学的根拠を示して海洋放出する決断をすべきだ」と述べた。大阪湾で放出する可能性についても「持ってきて流すなら、(協力の余地は)ある」と述べたが、大量の水を大阪まで運ぶのは困難で、実現可能性は低そうだ。
(2019年9月17日朝日新聞)

 

どういう経緯でこんなことを言い出したのか。
発端は、元大阪市長の橋下氏がテレビ番組で小泉Jr.環境相をダメ出しする際に、続けて語った「僕は福島の海に放出するだけでなく全国の海、それこそ大阪湾に放出してもらいたい」という発言を受けて、NHKの記者が、維新の松井市長はこれをどうお考えか?と尋ねたものだった。

 

ちょっと聞くが、大阪湾は松井氏個人の持ち物か?
1000トン以上の汚染水を、わざわざ大阪まで運んで、そこで放出するなんていうバカバカしいことをするはずないし、出来るわけがないとタカをくくっての発言なのか。
そもそも大阪に持ってって捨てられるようなものなら、なぜ東電は1000基ものタンクを建てて、何年にもわたって汚染水を保管しているのか?
流せない理由があるからこそ、そこまでするのだ。
漁民が風評被害で反対するからという理由だけで、東電が資金を投入してあれほどタンク施設を作るはずがない。

 

ツイッターではとある著名人が、「原発の処理水はどこの国も流している」などと、無知なのか知ってて人々をたぶらかしているのか、目的が分からない妄言を吐いていた。
あのタンクに詰められた「汚染水」(マスコミでは「処理水」、NHKでは「水」と表現していたらしいが!驚)は、通常の原発からでる処理水とは全く性質が違う。
故障していない通常運転の原発から出る処理水は、厳密には安全とはいいがたいが、確かに海や川などに放出されている。
ただ、事故を起こした福島原発から出てくるものは、その「処理水」とは明らかに性質が違う。

 

内陸から海に向かって流れてくる大量の地下水が、メルトダウンして底が抜け、どうなっているかよく分からない原発建屋の下部分を通り抜けて出て来た水なのだ。
徹底的な管理の下に、原発施設のパイプの中だけを伝わって流される「水」とは、比較の対象にすらならない。

 

それほどに汚染された水を、政府はどういう言い訳で放出しようとしているかというと、水で薄めて濃度を下げて放出すると言っている。
それって何か意味があるのか?
「1Lのコーラを2倍に薄めて2L飲んだら、太らない」という主張と同じだ。

 

「汚染水は福島第一原発の港湾内に完全にブロックされている」
そう言いきって五輪招致した安倍首相だが、「完全にブロックされている」ものを「放出します」は、果たして世界に通用するのか。

 

今回、維新の人たちが、急に汚染水がどうのこうのと言い出したのは、韓国がこれに関して懸念の書簡をIAEAに届けたことを受けて、嫌韓世論を横目に見た発言だったのかもしれないが、この「汚染水問題」を気にかけているのは、韓国だけではない。
前大臣の原田氏が「海洋放出するしかない」と発言したときは、世界中のメディアが取り上げた。
もしこの汚染水問題を、「韓国が文句をつけている」という視点でとらえていたら、それは明らかな間違いである。
海でつながっている世界中が、厳しい目で見守っているのだ。

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