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注目の選挙区、やっぱりおもしろかった

ネットでは熱かった選挙、現実世界ではマスコミが徹底して選挙の話題を取り上げないことで、その存在すら知らずスルーしてしまった人もいたのではないかという、見事なシラケぶりだった。
朝日新聞の集計では投票率は48.8%、50%を割り込むのは、1995年以来のことで、戦後2番目の低さだったそうだ。
なんということだろう。
ちなみにドイツの国政選挙ではどのくらいの投票率かというと、平均的な値が75%くらい。
日本なんて、民主党に政権交代が起きた話題の2009年の選挙ですら、69%だったというのだから、少々情けなくなる。

 

それでも今回は、注目されていた1人区では、低投票率とは思えないほどの面白い与野党の戦いが見られた。
事前に「注目」として記事にしておいた選挙区は、接戦が多く、開票速報をドキドキしながら楽しむことが出来たと思う。
選挙前の記事を引用しつつ、結果をお伝えしたい。

秋田県 1人区

自民党・中泉松司氏は地元の県議を経て当選1回。
選挙区以外ではほとんど知名度のない、自民党の末端議員と言っていい。
しかしここには、昔からの強い自民党の地盤があるので、今回も安全圏と思われていた。
そこに起きてしまったのが、「陸上イージス」問題だ。

 

秋田県の見どころは、安全圏と言われていた情勢が、選挙戦スタートの少し前に明らかになったイージス問題で、少々の差とはいうものの、逆転からのスタートになったところだ。
立憲・寺田氏は、最終日まで逆転を維持し続けられるかどうか、イージス問題を思いながら情勢を窺うのが見どころ。

 

結果

当選 寺田静

選挙中には、自民党である佐竹県知事が、昼休みに職員を動員して、県庁の前で「エイエイオー」と言わせるという問題なんかも起こり、情勢は常に接戦だったものの、東北としては、比較的早い段階で当確が出た。

宮城県 1人区

愛知治郎氏は当選3回なので議員歴は18年になる。
ベテランと言ってもいいキャリアだと思うが、全国的にはそれほど知名度があるわけでもない、自民党内では中堅的な議員と言えるのではないだろうか。
ただ、18年間のキャリアとその地盤は堅固で、宮城県内の主な市町村長はほぼ自民党に与している情勢だ。

 

こういう状況の中で、なかなか無茶とも言えるケンカを挑んだのが、立憲・石垣のりこ氏だ。
FM仙台のアナウンサーで、もともと地元での知名度はある程度あったそうだが、国会議員に挑戦するのは初めてのこと。

 

結果

当選 石垣のり子

情勢調査も常に接戦だったが、開票中も何度も順位は入れ替わり、時には5票差なんていう僅差で見ている方をハラハラさせたが、郊外の開票を終えて、仙台市内の比較的都市部の開票が進むと一気に石垣氏が逃げ切った。開票が90%以上進んでもNHKが当確を出さないという大接戦だった。
それにしても、3回生の3代目議員を新人が蹴落とすとは、なんと小気味のいい結果だろう。

新潟県 1人区

言うまでもないが、塚田一郎氏は、今年の4月に「私はどんどん忖度します」とのスピーチでやらかした、元国交副大臣だ。
6年に1回しか改選されない自身の参院選の直前にやらかしてしまうとは、なんともウカツである。
向かうは、立憲の新人、打越さくら氏だ。
副大臣を務める現職議員に、野党共闘の新人が挑むという、なかなか厳しい戦いが強いられると思っていたが、忖度副大臣の失言で、グッと距離を縮めてのスタートとなった。
選挙期間中に、打越候補がアタマを出せるかどうか、見ごたえのある接戦になりそうだ。

 

結果

当選 打越さくら

NHKの開票速報の番組で、選挙運動中、塚田氏が地元の飲食店に支持のお願いに伺ったところ、「よくそのツラ下げてノコノコ来れるもんだ。恥ずかしくないのか。帰れ。」と店内で罵倒されるシーンが流れ、さすがに見ていて気の毒にすら思った。
選挙直前に、調子に乗って言ってしまった、あの「たった一言」が彼の人生を大きく変えることになってしまった。
打越氏は北海道出身の落下傘候補だが、森ゆう子氏や菊田まきこ氏など、地元に顔の広い野党の現役女性議員が奔走したことも、功を奏したのであろう。

広島県 2人区

マスコミも取り上げる話題なので、御存知の方も多いかもしれない。
ポスト安倍と言われる岸田氏のお膝元、広島県。

 

自民党は現職、溝手顕正候補、当選5回、安定のベテランだ。

 

同じく自民党新人の河井案里氏は、首相補佐官も務める、非常に官邸に近い人物、河井克行氏の妻だ。
官邸が、あまり必要のない広島県区に身近な人物を候補にねじ込んできたことは、岸田氏にあまり愉快でない思いを抱かせている。

森本真治氏は、国民民主党で1期務めた現職議員であるが、今回は、共産党を除いた立憲・国民・社民の共闘候補として、出るため無所属として立候補。

 

この3名の三つ巴の戦いになりそうだ。
7月6日時点では、毎日と朝日の情勢調査にですでに順位の違いが生じているので、この3名がかなりギリギリのところで1人を蹴落とすゲームになりそうだ。
溝手氏が落ちれば、自民党内に大きな禍根ができるし、河井氏が落ちれば元の鞘、森本氏が落ちれば、広島県からは自民議員が2人になる自民党大躍進の選挙区になる。
今後、どんなふうに勢力が動くのか見逃せない。

 

結果

当選 森本真治氏・河井案里

情勢調査では、森本氏は常に2~3番手にいたので、自民党のどちらかと森本氏が2議席目を争うのだろうと思っていたのだが、開票速報の早い段階で、森本氏にNHKの当確が出た。これには驚いた。
つまり、最後の議席を自民党同士で取り合うことになるのだ。
結局、その勝負は河井氏が勝ち取った。
しかし、溝手氏は岸田派の地元から立候補する岸田派の議員だ。
今後、対立が深まるのではないだろうか、と考えていたのだが、岸田氏は、安倍首相が河井氏を応援するために広島入りした時、ヘラヘラ笑って同じ選挙カーに乗って手を振っていた、というのだ。
岸田・・大丈夫か?
岸田派からは今後人離れが起きて、派閥として継続していけなくなるのでは、という予感がする。

 

静岡県 2人区

トップを走る自民の牧野氏は置いといて。
見どころは、2人目に誰が入るかだ。
ここは野党と野党の争いになる。
榛葉賀津也氏は当選3回の現職議員、国民民主党の参議院幹事長。
全国的にも名前を知られる国民民主党の幹部だ。

 

対するは立憲民主党の徳川家広氏。
こんな面白い人が出ているのに、なぜかテレビが取り上げた様子はない。
徳川というのは、正真正銘の本名だ。
徳川家広氏は、あの将軍家の徳川宗家19代目の主である。
今回の出馬について問われ、16代目のひいおじいさんが明治時代に東京市選挙に担ぎ出されそうになったとき、勝海舟から「徳川は、国によほどのことがない限り政治に携わるべきでない」と諭され断念したという逸話を紹介しながら、今が日本の「よほどのこと」だというのが動機だと述べたり、出馬に臨んで幕臣の末裔が登場したり、実に面白い人物だ。

 

結果

当選 牧野京夫氏・榛葉賀津也

徳川氏が取れなかった。
なんとも口惜しい選挙区の一つ。
国民民主党の榛葉氏は、野党と言えど、非常に官邸に近い人物である。
今回、改憲の発議に必要な3分の2にはわずかに足りなかったものの、自公維が、野党側から誰かを取り込むとしたら、真っ先に白羽の矢が立つ人物だ。
野党のような顔をしているが、いつ与党のために働きだすか分からない人物として、今後も動向を注視する必要がある。

 

選挙は面白いのだ。
少しだけ予習をすれば、という条件があるが。
今回のように、マスコミが各地の選挙情勢から、こういう野次馬的な面白さを拾って報じないと、低投票率になってしまう。
どこかのマスコミが、「選挙では視聴率が取れない」と言っていたが、そうではない。
番組の作り方が悪いのだ。
素人の私が探しただけでも、これだけのネタがあるのだから。
実際に現地を取材できるマスコミが、選挙を面白くする報道を出来ないはずがないのだ。

選挙で祭りのように盛り上がることは、この国にはもうないのだろうか?

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