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宮迫会見とは無関係じゃない国家の腐敗

ネットが宮迫の「引退会見」の話題でもちきりだ。
個人的には、芸能人の「闇営業」には、さほど興味がなかった。
これが吉本芸人の「闇営業」について、だけで終わる案件なら、ここに取り上げることもなかっただろう。
しかし、宮迫の会見を聞いてみたところ、今の日本が抱えている病の縮図が見えるような気がしてならない。

 

田村さんが「記者会見をやらしてください」と主張したが、吉本興業の岡本社長から「お前らテープ回してないやろうな」と確認された上で、「亮、ええよおまえ辞めてひとりで会見したらええわ。やってもええけどほんなら全員連帯責任でクビにするからな。俺にはおまえら全員クビにする力がある」と言われ、全員なにも言えなくなったと語った。
(2019年7月20日朝日新聞)

このくだりは、典型的なパワハラ案だ。
そもそも、紙の契約書を交わさず、吉本の事務所とは「口約束」しかされていない関係で、クビとはどういうことか。
「連帯責任」とは、いつの時代の話か。

「オマエが会社に逆らって好き勝手すると、友達のアイツが苦しい思いをするぞ。」
そういう話だ。
こういう光景は、ブラックバイトをやめたくてもやめられない若者が、「オマエがバイトを抜ければ、バイト仲間の彼らに、オマエのせいで負担がかかる。それでもいいのか。」と、言われる光景にも似ている。

 

今の日本、パワーを持つものが不条理にその権力を使い、下の者を脅し、従わせる、そんな光景があらゆるところで横行している。
政治を見てもそうだ。
自民党の執行部(=官邸)の意向に逆らえば、次の選挙で公認をもらえなくなる、選挙資金を回してもらえなくなる、といった圧力で、あんな「トンデモ本」を配布することにさえ、異議を唱えられる者が党内にはいない。
異常だ。

 

こういう社会が今のような政治を容認するに至ったのか、今のような政治がこういう社会を作り上げたのか、そのどちらが先かは、私には分からない。
ただ、ここに見られる政治と社会の共通点は、偶然に起きたわけではないはずだ。

 

老若男女問わず、なんらかの形でパワーを持つものに、首根っこを押さえられ、それを締められることに戦々恐々としながら生きている人が少なくないのではないか。
自分の身近な小さな権力に、日ごろからキュウキュウにされている人が、「清き一票で国家権力をひっくり返す」なんて、想像が出来ないのも無理はない。

そういえば最近、共感できるこんなツイートが流れて来たので紹介したい。

 

 

「自己肯定感の低さ」と「投票率の低さ」という、秀逸の「気づき」だと思った。

 

ところで、宮迫会見で、もう一つ気になった点がある。

 

2日前に吉本から突然、引退会見か契約解除を選ぶよう通告され、会社主導の会見を求められたとした。亮はネット視聴なども可能にしてほしいと希望したが、吉本から「いやいや、そんなんこっちで決める」と言われたとした。また「在京在阪5社のテレビ局は吉本の株主だから大丈夫やから」とも言われたとした。
(2019年7月20日デイリースポーツ)

 

会見のこの部分に注目して報道したのが、テレビはもちろん一般のマスコミではなく、「スポーツ紙」だというところにも、その意味が隠されている。
実際に吉本をWikiで引いて、「株主」の欄を見るとこんなことになっている。
画像の上部だけ引用するが、下の欄には他のマスコミ、広告会社なども続いて出てくる。

 

 

要するに、「主なテレビ局は株主だから、コントロールが効く」という意味だろう。
テレビ局をコントロールすると言えば、「萩生田文書」「総務省の電波管理による脅迫」などの、政府がマスコミに対して圧力をかけた事件を思い出す。
最近そうした圧力が、あまり目に見えて出てこないな、とは思っていたが、考えてみれば、官邸が吉本芸人に急接近したのも、水面下でこうした動きがあったからなのかもしれない。

 

現に吉本は、ここ何年かで、急速にクールジャパンのような「公共事業」の受注を伸ばしている。
最近に至っては、NTTとの教育コンテンツ作りの会社を立ち上げ、その資金の8割に及ぶ100億円が国庫から出ているという案件もある。
そういった事業の省庁内で事前に開かれる有識者会議では、たいていの場合、吉本の人間が「有識者」として入り込み、事業獲得に活躍している。
まさに、労働案件の事業の有識者委員となり、自社パソナに利益を誘導した、あの竹中平蔵のやり方だ。

 

今回の宮迫の一件で思うのは、いわゆるヤクザ的であるかどうかは、吉本という企業自体にかかるべき嫌疑で、そういう企業と官邸が近しい間にあり、また公共事業をバンバン受注して業績を伸ばしつつあるというのは、社会的にはもちろん政治的にも問題があるということだ。
大手マスコミ各社自身が、少なからず当事者として関わる問題であることから、テレビなどでこの問題が周知されるのは困難であろう。
なんとも口惜しい。
腐っているのは政権ばかりではない。
こういう反社会的な企業に対して、積極的に公共事業を回している行政も、正気を失っているレベルというのが現実だ。

 

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