2月8日衆・予算委員会、立憲・山井議員の質疑で野党議員が退席し、審議が一時中断するという珍事が起きた。
原因は、安倍政権から綿々と続く国会運営の悪癖にある。
何が問題なのか見てみよう。
下記の発言録は「書き起こし」ではなく、不要な部分を省いて主旨を抜き出した。
〇秋本芳徳局長「国家公務員倫理審査会、総務省内閣官房懲戒処分担当の調査対象となっているため答弁を控える。」
〇山井議員「調査しているのは今回の件。それ以前に何回くらいあったのか?」
〇秋本氏「会合の経緯や背景も調査対象なので、回答できない。」
山井議員は、同時に接待を受けていた湯本審議官にも同じ質問をするが、同じ理由で答弁を拒否される。
〇秋本氏「過去の件も含めて調査対象なので答えられない。」
〇秋本氏「調査は始まっている。」
秋本氏、「何回」とは答えずに、指摘を振り切って席に帰るが、もう一度出てきて「調査を受ける身で調査に関することは答えられない」と再び答弁拒否をする。
山井氏「今回が初めてなんですか?今までにも会食したことがあるんですか?」
頑として秋本氏が答弁を拒否したことで議場は紛糾、山井議員はきちんと答弁させるよう金田委員長に申し出た。
そして野党側の理事たちも委員長席に集まる。
「ここは立法府ですよ」という女性理事の声が聞こえた。
時計を回したまま、金田委員長は「その問題は・・・ええ・・・」と采配に詰まる。
「時計を止めろー」の怒号も。
〇秋本氏「(答弁できないという理由を長々グダグダと述べた上で)調査中なのでお答えできない。」
〇金田委員長「この問題について・・だから・・う・・あ・・のちに、理事会で後刻協議をします。質問は続行してください。」
この間も時計はどんどん回る。
〇秋本氏「(答弁できないという理由を長々グダグダと述べた上で)調査中なのでお答えできない。」←その前と全く同じ内容
議場はガヤガヤとして収拾がつかない。
野党の理事たちも議場も、これでは収まらない。
国会議員の基本的な質問に対して、官僚があれこれ理由を付けて答弁しないのは、桜を見る会の問題の時からまるで国会の慣習のように続いてきた光景だ。
安倍政権の8年間は、さまざまな問題が起きる度に国会での「言い逃れ」と「はぐらかし」によって維持されてきたようなものだ。
そんなはぐらかしを許さないとする野党側の態度と、委員長が金田勝年という極めて低能な人間だったことが相まって、議場は収拾がつかなくなった。
金田委員長は「理事会で・・理事会で・・」を繰り返すばかりだ。
この間も審議時間の時計はどんどん回っている。
答えない官僚も問題だが、委員長の一方的に政府を利する運営は、これまで安倍政権下でイヤというほど見てきた。
無駄なやり取りで質疑時間を浪費してくれることは、与党にとって最も喜ばしいことなのだ。
最近の国会には、こういう悪い慣習が定着しつつある。
能力の低い金田氏には、とにかく少しでも長く時計を回すことを使命に頑張っているのだろう。
采配するのではなく、ただひたすら時計を回すことに専念する姿は、委員長としてあまりに能力の低い異常な姿にしか見えない。
何を言ってるか分からない・・。
野党議員らは、審議継続不能としてここで退室した。
時間を置いて、次のような委員長の言葉で審議は再開した。
ごめんなさい、と言ったわけではないが、委員長の議事進行に問題があったことを認めた形で再開されたのは大きな結果だ。
長い紛糾を経て、これだけのことがやっと出てきた。
直接利権に絡んでいないとしても、秋田2区選出の金田氏には、秋田県の企業である東北新社と秋田出身の菅首相への批判を反らすことは大きな意味があるのだろう。
菅首相は秋田繋がりで金田氏を予算委員長に取り立てたのだろうが、いくらなんでも金田氏にはその能力がなさすぎる。
金田氏は共謀罪の審議の時には、法務大臣として「私の頭脳ではちょっと対応できない」という珍答弁が記録されており、その能力の低さ考えると、菅内閣の人事の質にも疑問が及ぶ。
日を同じくして、赤旗によって次のようが事実が報じられた。
・・・菅首相は、総務副大臣、総務相を歴任。自著『政治家の覚悟』では、「人事権は大臣に与えられた大きな権限です」として、意に沿わないNHK担当課長を更迭したことを自慢していますが、その課長の後任に抜てきされたのが、今回、接待されていた一人、吉田真人総務審議官です。
(2021年2月8日赤旗)
支持率も下がっている中で、予算委員会を小手先でいじるだけでは、この問題を「桜を見る会」のようにスルーすることは難しいだろう。
渦中の総務官僚がなんらかの懲罰を受けることは避けられないと報じるメディアも多い。
そこに東北新社と菅首相を直接結び付ける話までが出てきた。
今後の展開が気になる。