スガ首相が標榜している携帯料金値下げ。
これはずいぶん前からスガ首相が訴えてきた政策だが、最も国内で知られることとなったのは、2018年9月の沖縄県知事選ではないだろうか。
サキマ氏の携帯料金4割減の話は、要するに「値下げをスガさんに私からしっかりお願いする」っていう約束なんだけど、これとアベ氏の「拉致問題解決をトランプ大統領に私からしっかりお願いする」っていう姿勢とキャラ的にかぶる。この二人はちょっと似ているところがあるように思う。 pic.twitter.com/xOWZeEBMd7
— 毛ば部とる子 (@kaori_sakai) September 25, 2018
現デニー知事の対抗馬として立候補したさきま氏が、当時官房長官のスガ氏のてこ入れを受け、なんとも奇妙な話だが、沖縄知事選の公約として「携帯料金の値下げ」を掲げた。
が、この時さきま氏は落選した。
さて、携帯料金値下げの裏には、携帯キャリア会社の暴利とか、テレビ局をも含めた利用電波帯域の小競り合い等があると言われているが、今回それはあえて横に置こうと思う。
それは、10月10日時点でこの「携帯料金値下げ」案件に、思わぬラッピングが施されるようになってきたためだ。
まずは、違和感を感じた最近のニュースを10月08日の時事通信から紹介しよう。
総理大臣になってスガ氏は、この値下げ推進を非常に急ぐようになった。
担当するのは、武田良太総務大臣。
九州での地方選挙をめぐって麻生太郎氏とバチバチになっている人物を、スガ氏は重要政策の担当省庁である総務省に据え、また武田氏の方もこの重要な役回りを果たそうと懸命になる。
武家社会の「御恩と奉公」みたいだが、まあそれは余談である。
気になるのはここからだ。
自動配信される動画は、ユーザー側で設定しブロックすればいいのではないか?
また、携帯料金を延滞してしまうような人が組んでいるローンとは何だろう。車?家?リボ払い?
これらの問題は、携帯電話の料金値下げとはあまり関係のないところにあるように思う。
格安スマホのハードルとは、多分SIMカードを自分で調達したり、それをスマホの裏蓋から自分で入れて初期設定をする等の作業が、一部の人にとって面倒、或いは難しいという話だと思う。
携帯ショップですぐに使える状態にセットアップしてもらう、というサービスが入れば値段が上がるのは当然のことのように思う。
武田大臣が催したこの「意見交換会」で出てきた意見から見える問題のほとんどが、携帯料金の多寡ではなく、別のところにあるように思えて仕方ない。
いや、私は別に大手キャリアの回し者でもなければ、値下げそのものに反対する理由は全くない。
ただどうも気にかかるのは、「意見交換会」から出たというこれらの意見が、政府が民間企業に介入して値下げを強要する根拠づけにあまりなっていない点だ。
しばらくして今度はこんな報道があった。
武田氏は、携帯料金が家計の負担になっているとして「これはコロナ対策でもある」と強調。値下げの方向性を出す時期について「私が目標を申すべきではない」としつつも、「一刻も早くコロナに打ち勝ってもとの日本経済を取り戻すためにも、一日も早く家計に力を持ってもらう。そのためには(携帯大手3社に)一日も早く努力をしてもらいたい」と述べた。
(2020年10月10日朝日新聞)
数年前から言われてきた携帯料金値下げ案件が、いつの間にか「コロナ対策」になっていた。
コロナ禍で傷んでいる家計を携帯料金の値下げ分でカバーしようというつもりなのだろうか。
いったい何割下げさせるつもりなのだろう。
と、同時に、コロナ禍で傷んでいる世帯収入を財務省からの支出なしに、民間で補おうとしている信じがたい政府の態度が見える。
これが、スガ氏の主張する「自助、共助、公助」なのか。
また、携帯キャリアの企業にとっては、「これはコロナ対策である」と強調されれば、政府の言うがままにならない場合には、コロナ禍に協力しない不届きな存在と世間から謗られかねない。
実現すれば、多くの人が大なり小なり恩恵を受ける携帯値下げではあるものの、どうも現時点で政府のやろうとしていることには、なにか「歪み」を感じずにはいられない。