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立憲民主党、本多平直発言問題「調査報告書」にツッコむ

しばらく静観してきたが、この度、本多平直氏自身からもコメントがあったので、これを機に立憲民主党の「調査報告書」をつぶさに読んでツッコんでみようと思う。

 

この件をざっくり振り返ると、

 

5月10日に開かれた、立憲民主党の「性犯罪刑法改正に関するワーキングチーム(WT)」での本多氏の発言が、6月4日産経新聞によって報じられた。
「50代の衆議院議員」から「50歳近くの自分が14歳のこと性交したら、たとえ同意があっても捕まることになる。それはおかしい。」との発言があったと、「複数の関係者から」明らかになったという体の報道であった。

 

この議論の背景には、未成年との性交に関して国の刑法では未成年側の性的同意年齢が13歳とあるが、これを16歳まで引き上げようという法改正の動きがある。
それに関する党内の議論の練り上げとして、専門家の学者を招聘して開かれたのが今回問題の舞台となったワーキングチームである。

 

こうした準備議論の場で、内部の人間により本多氏の発言が産経新聞にリークされた。
そして、この報道を受けて「本多平直はヘンタイか?」という批判が広まり、立憲民主党は内部で諮問調査をし、その判断により本多氏には1年間の党員資格停止という重い党内懲罰が下ることになった。

 

そこで改めて確認したいのが、党によるこの「調査報告書」だ。
第28回常任幹事会資料「調査報告」.pdf

ツッコミどころが各所あるので目次で追っていく。

 

1.諮問の内容
“今後このようなことが再発しないよう、性犯罪に関して認識を共有するために・・・”

 

「諮問の内容」としながら、答えを出しちゃってる。
なんの認識をどう共有するのか、それはこの報告書が仕上がって初めて論じられることではないのか。

 

2.委員会の検証
(1)実施内容
“関係者へのヒアリングのほか、WTの議論のうち、5月17日、20日、24日、28日、31日、6月2日、3日、4日、7日の録音録画等を確認し本報告書を作成した。“

 

ここはかなり問題。
発言のあった日、5月10日に関しては何もないのだ。
もともとないのか?隠しているのか?

 

(2)委員会が認定した当日の状況
“法改正に関するワーキングチーム、島岡まな大阪大学教授を5月10日に招聘し、16歳へ年齢を上げることについて、フランスなど他国のことが話された。”
“現場での出席議員は、寺田学氏、池田まき氏、本多氏、オンラインでの参加者もいた。”

 

ここでは、この教授と本多氏の間で議論が白熱して、少々険悪なモードになったことが主観的に記されている。

 

3.問題発言をめぐる状況・・・どのような状況での発言だったのか。
(1)新聞報道

 

ここでなぜか最初にスクープした産経新聞を引用。
産経新聞は「関係者により明らかになった」と伝聞で伝えている。
伝聞でかつ情緒的発信の多い産経新聞を調査報告書に載せる意味は?
新聞が伝聞で書いたことなど引用せず、身内で確かめたらよかろうに。

 

(2)本多氏本人の弁明

 

氏が発言自体を認めたことと、少人数だったこともあり表現が足りなかったと語ったことを載せている。

 

(3)発言の記録と流出について
“どのように報道機関に情報が伝わり発表されたかは判然としない”
“5月10日までは録音の必要性はないとの判断で録っていなかった”
“5月10日出席者複数の証言もあり、当該録音録画がなかったとしても、委員会に置ける事実認定には影響しないと判断”

 

少なくとも党内には、党の不利益を承知の上で産経新聞に内部情報を漏らした人がいたことは事実だ。
そういう人を含む数少ない証言者を根拠に「事実認定に影響しない」というのは、無理があるのではないか。

 

4.本多議員本人の説明
(1)本多議員本人の発言の主旨と意図
“もっと容認できる18歳と15歳という例として用いるべきであった”

 

ここは大事なポイントだ。
現行では、未成年との性行為は各自治体の条例で罰則が設けられている。
国の刑法を厳罰化するにあたっては、常識を超えたいろいろなケースを想定し、慎重に議論される必要がある。
「成人」はすでに20歳から18歳に引き下げられた。
ということは、18歳と15歳という、年の差で言えば極めて自然な関係である場合も、相手が15歳であれば、成人の18歳は厳罰に処されることとなる。
とりわけ証明の難しい「内面の同意の有無」が罰則に繋がるこの問題を慎重に語る姿勢は、法改正に反対することとはまた意味が違う。
本多氏もこのように表現すれば問題はなかったのだが、「私のような50歳近く・・」などと言ってしまったのが災いを招いた。
ここに関しての謝罪ならアリだと思う。

 

(2)本多議員の現状認識
“問題となった発言について、その後制被害者や被害を訴えられなかった人などから多くの意見をもらい、これらの方々や関係者に申し訳ない”

 

これは「現状認識」というよりも、選挙前に世間体を気にする党として、「被害者からクレームが来てるぞ、どうすんだ?」という対応、姿勢でしかない。
この対応をおろそかにしろとは言わないが、今回の件では「被害に遭った人たち」というのとは、一線を引いて考える必要がある。
それは、この法改正により法の思わぬ穴に落ちて、厳罰に処され、人生を破壊される人が将来的に出てくる可能性もあるからだ。

 

5.何が問題だったのか
(1)WTの運営を巡る問題点
“WT立ち上げ段階から、メンバー構成などにおいて本多議員などは不満を持っており・・”
“本多議員などは寺田座長の独断と見ていた”

 

この法改正をとにかく進めたい派と慎重論派の間で、メンバーの人選等でお互いが不快感を持ち合っていたという説明。

 

(2)ヒアリング対象をめぐる対立

 

要点をかいつまむと、ヒアリング対象にジェンダー問題の有識者だけではなく、刑法学者、刑事弁護人、被害当事者を迎えるか、迎えないか、それに伴う世間への影響などで内部に対立があったという説明。

 

(3)議論は熟したのか

 

そもそも今回の調査報告書で「議論は熟したのか」という項目設定自体がおかしい。
熟したどころか、議論を超えて互いが恨み節の様相になったからこそ、過激な発言を切り取ってリークするという禁じ手が、仲間内から出たのではないか。

 

5.の「何が問題だったのか」という調査報告書の項目もおかしい。
対立している意見の両者が、どういう感情の下にあったかという話に終始していて客観的な視点がない。

 

そしてここからは、この調査報告書の内容がかなりぶっ壊れた様相を呈してくる。

 

6.基本的な問題
(1)本多議員のパワハラ問題
“複数外部講師への本多議員のパワハラ的な言動もインターネットで話題になっている”
“非礼が行われたことへの驚きの声である”
“内外を問わず、多くの人たちが本多議員の日頃の問題について触れている”

 

ネットの話題なんて報告書上はどうでもいい。
「多くの人たち」とは誰か?
発言に関する正式な党の調査報告書に、
「つうか、あの人普段から感じ悪いよね~ってみんな言ってるよね~」というような、
客観的でもなければ出所も分からない話を挿入してくるのは不味い。
これでは単なる悪口だ。
そして報告書はこう続く。

 

“言われている一連の発言が厳密な意味でパワーハラスメントに該当するかどうかはさておき・・・”

 

衝撃のくだり。
項目まで作って書き込んでおいて「さておき」はないだろ。

 

“外部講師には非礼を超えた不快感や嫌悪感、場合によっては暴力的とも言われる威圧的な対応がとられていたこと自体が問題視されなければいけない”

 

なんだかどんどん違うテーマを調査する報告書になっている。
講師が不快感を感じたかどうかはよく知らないが、それは別のところで党の代表者なり本人なりが解決するところではないのか。

 

そしてこの項目は、

 

“立法府の一員としての資質自体が大いに問われる”

と結ばれている。

 

本多議員がパワハラ体質なのかどうかは個人的には知り得ないが、本来この報告書で問題にするはずだった発言内容からは大きく話が逸脱している。
また、「多くの人が・・・と言っている」というような出所がボンヤリした評判を持ち込んで、「立法府の一員の資質がない」とまで断じる書き手には、本多氏への怨念しか感じない。

 

(2)WT運営における問題

 

この項目では、筆者(調査報告書の書き手を「筆者」と銘ずるのは本来はおかしいのだけれど、内容を読むと筆者としか言えない存在なのだ)が、ありとあらゆる本多氏の出所の分からない悪口(あんなことを言う人もいる、こんなことを言う人もいる、という類のもの)を書きたてている。

 

(3)党外から寄せられた批判、疑問に応える義務

 

筆者はここで、「気持ち悪い」「被害者の実体を理解していない」といった世間の批判に対して、法改正の姿勢を示すことが必要、と書いている。
その、法の穴を細かく検証することもなく、結論としてとにかく「法改正ありき」な姿勢が、今回の問題を招いたのではないのか。

 

(4)本多議員の認知の歪みは是正されたのか

 

報告書が書き終えられる前にすでに「本多議員の認知の歪み」が認定されてしまっている。

 

7.提言に当たって

 

ここから以降は、これまでの「報告書」内容を踏まえたうえで、立憲民主党の共通意識としてあああるべき、こうあるべきということが長々と分かりにくい言葉で羅列してあるだけなので割愛する。

 

少なくとも、6.までの「報告書」が、どれだけテキトーな内容で、筆者の主観で書かれたエッセーのようなものであるかということが分かったので、それを踏まえた議論や提言は読むに値しない。

 

選挙前にジェンダーという、立憲民主党が前向きに取り組んできたとする問題について、ややこしく誤解されやすい形の問題を世間に広めるのは控えたい、という党の心理が見え隠れする。
本多氏を重く処分すれば、「年少者との性交・・・わー気持ち悪い」という単純な世論に対して幕引きが出来る。
ただ、選挙直前に1年間の党員資格停止というのは、事実上「本多さん、議員を引退してください」と宣告するのと同義である。
法改正に関わる党内のWT、それも準備段階の少人数の会合であったからこそ、録音も録画も必要ないという判断があったのではないのか。
そういうレベルの会合で、その場の言葉が伝聞形式で外に漏れたことで引退宣告に繋がるのでは、この党内で今後自由な議論が行われることは期待できない。

 

政治ニュースという意味では、これは野党内部の小さな出来事なのかもしれないが、議論、説明、情報開示ということに徹底的に欠けている自民党政治にうんざりした私たちにとって、ひょっとしたら政権交代できるかもしれない可能性を持つ野党第一党の中身がこれというのではあまりにお粗末だ。
立憲民主党が、国家機能の手続き性を取り戻すことに期待をかけられる対立勢力である以上、この一連の問題にはそう簡単に見過ごせない重大性がある。

 

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