《最低賃金「全国平均1千円を目指す」 菅首相が表明》
2021年3月23日、各マスコミでこのような見出しが躍った。
コロナ禍で低迷している経済の下で、底辺に差し込む一縷の望みと歓迎した声もネットには多かった。
記事の中身を紹介する。
(2021年3月23日朝日新聞)
ここだけ読めば素晴らしい。
しかし、経済財政諮問会議とは、これまでも一般庶民にとってはろくでもないことを話し合い、決定してきた会議なので、こんなうわべの話を鵜呑みにするわけにはいかない。
(同)
コロナ禍の影響は2020年にとどまらない。
21年もまた多くの企業が引き続き苦しむことになるだろう。
それをどうやって、今後の最低賃金上昇に取り組むのか?
ここにはトリックがあると思われる。
それは記事の更なる部分を読み解くことで見えてくる。
(同)
ちなみに民間議員とは、経済財政諮問会議ではおなじみの以下のメンバー。
竹森俊一氏
柳川範之氏
この二人は新自由主義の大学教授。
中西弘明氏
新浪剛史氏
この二人については、今さら説明するまでもあるまい。
経済財政諮問会議は、これらの「民間議員」と閣僚たちで構成される。
4月から「同一労働同一賃金」が中小企業にも適用されるのを機に
ここが大きなポイントだ。
20年からこれまで「同一労働同一賃金」は、大企業だけに適用されてきたが、21年4月1日からは、いよいよ中小企業にも適用される。
コロナ禍で多くの中小企業が売り上げ減少に苦しむ中、このルールが経営にのしかかる。
ここからは想像だが、現状況で「同一労働同一賃金」が適用されれば、おそらく多くの中小企業が、社員の賃金を絞り、非正規に回すことで同一化を図ろうとするのではないか、ということだ。
これにより、非正規の「最低賃金」はいくらか上昇するだろう。
結果的に「最低賃金をあげた」という菅政権の人気取りになる。
ただし、正社員分が削られる可能性が極めて大きい。
コロナ禍という御時世であれば、経営者も正社員からの納得を得やすいだろう。
こういう賃上げが、国民全体が豊かになるかというと、全くそうでないことは誰にでもわかる。
さらに、この会議ではこんなとんでもないことまで言われている。
(2021年3月20日時事通信)
「企業が雇用増によって売り上げを伸ばす」
このご時世、しかも地方で、こんな夢みたいな話が実現すると本気で思っているのだろうか?
あまりにも自分たちだけに都合のいい議論だ。
経済財政諮問会議で話し合われたことは、これだけではない。
(2021年03月22日時事通信)
大企業から地方の中小企業への人材派遣を強化する
とは、いったい何のことなのか?
これも想像だが、大企業で持て余しているクビにできない人材を、地方の中小企業に押し付けようという計画ではないか?
しかもその数1万人だ。
冷静に考えれば、優秀な人材を、大企業がわざわざ他所へ派遣するわけがない。
これは、コロナ禍でさらに行き詰まった大企業の人材を、合法的にリストラし、地方に移住させ、ついでに地方の人口も押し上げてやろうという、政府の浅はかな企みではないかと思う。
このアイディアは、どこから切っても善意に解釈するのが不可能だ。
そしてそれを、「政府が後押し」しようというのが恐ろしい。
政府の「大企業リストラ推進政策」だ。
にわかには信じられない。
今回の経済財政諮問会議の内容が現実となれば、これから地方の中小企業には大きな試練がやって来るだろう。
さらにもう一つ。
この会議ではテーマが二本柱で、上で述べた案件に加えて大学改革についてかなりのボリュームが割かれている。
10兆円規模の大学ファンドを設立するというアレだ。
聞いただけでも怪しさが漂うこの案件、なぜか経済界の新自由主義者が大学改革について方針を議論するという異常なことになっている。
この件については、また別口で追いたい。