以下の記事は、近い将来これが政治問題化するかもしれないという予測とともに、備忘録として集めた情報をまとめることを目的としたものだ。
(2021年3月9日NHK)
一見、三面記事の横領事件のように見えたこのニュース、紐解いて細部を見ていくと、想像しなかった政治の影が浮き出てくる。
「全日本私立幼稚園連合会」とは?
会費は、加盟する幼稚園1園当たり1万2000円に、園児1人当たり70円を加えた額を全国各地の幼稚園団体が「全日本私立幼稚園連合会」の口座にそれぞれ振り込む仕組みになっています。
(2021年3月9日NHK)
全国の私立幼稚園の92%である、7200園が加盟している。
組織に属する園児は約130万人。
法人登録はしていない文科省の所管外の任意団体であるにもかかわらず、なぜか「職員を確保するためのアプリ」とやらを作るために、文科省から年1000万円ほどの補助金を受けているという。
2017年度から19年度までの決算で3億2954万円、20年度には新たに8000万円超が使途不明とされていて、その合計は4億円を超える。
20年度に関しては、『関係者によりますと、連日のように口座から現金が100万円単位で引き出されていたということです。』とのNHKの報道もある。
香川前会長は、辞任の3日後の11月30日に連合会側に1億5000万円を弁済したというが、金額としても足りないし、そもそもいったい何に使ったのか?
すでに刑事告訴されているので、捜査当局の手でカネの使い道がまもなく明らかになるだろう。
それにしても不可解な事件だ。
さて、この事件は、これで終われば単なる詐欺案件に見えるのだが、この事件をきっかけにもう一つの使途不明金事件が明るみに出ることで、一気に政治色を帯びることになる。
(2021年3月12日NHK)
そもそも不思議なのは、幼稚園のPTAの組織の代表が、なぜ自民党議員なのか?というところだ。
「全日本私立幼稚園PTA連合会」の公式サイトを覗くと、さらに奇妙な人事が明らかになった。
これはいったい・・・?
まるでオリパラ組織委を彷彿とさせる顔ぶれ。
前段の「全日本私立幼稚園連合会」の香川前会長は、オリパラ組織委の顧問も務めていた。
これらの情報で、「私立幼稚園」を代表するこの組織が、園児やその保護者から「会費」という名目でカネを集め、自民党の文教族に入れ込んでいた構図が浮かび上がる。
他にも、PTA連合は毎年「全国大会」なる催しをホテルなどで開いているのだが、そこには決まって安倍晋三氏が登壇し講演をしている。
首相動静で検索してみただけでも、少なくとも2013年、2014年、2015年、2017年、2018年、2019年に安倍氏が総理大臣として参加している。
政府広報サイトには、ビデオまでが残っていた。
「全日本私立幼稚園連合会」の問題の前会長である香川氏は、山口県で幼稚園を経営している。
安倍晋三、河村健夫、香川敬、なぜか山口県の登場人物に偏っている。
2014年に全国大会で採択されたという「宣言」というものをネットでみつけたが、その内容には森喜朗をはじめとする、いわゆる極右文教族の寒気のする文章だった。
この大会には、当時首相の安倍晋三、文科相の下村博文、組織会長の河村健夫、自由民主党幼児教育議員連盟会長(そんなものが?)として中曽根康文が出席している。
ちょっと自民寄り、なんてレベルではない。
これだけのメンバーを呼んで政治的な活動をしていることを、私立幼稚園に通わせる末端会員の保護者らは同意しているのだろうか?
使途不明金の行方は捜査当局に任せるとして、こうしたPTA連合のように、末端の構成員は全くあずかり知らぬところで、集めた名前と会費がいつの間にか大きな政治活動に使われている、ということは、いかにも日本ではありそうな話だ。
ふたつの組織とも、なぜか法人登録さえしていない。
それゆえ、文科省から所管されることもなく自由に政治活動が出来たとも言える。
待機児童が問題になっていたちょうどその頃、なぜか安倍首相は、保育園強化ではなく「幼児教育の無償化」という問題点をずらした政策に血道を上げた。
そしてそれを大義名分に消費増税までやってのけたのだ。
その背景にはこうした露骨な政治活動があったのだと、今ごろになって知らされた思いだ。