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「合流新党」代表選立候補者討論会 雑感

9月9日、日本記者クラブが合流新党(仮)党首選を前に2候補の合同記者会見を主催した。
参加したのは泉ケンタ氏、枝野幸男氏の両候補。
1時間半ほど行われた会見は、予想以上に面白かった。
「面白かった」というのは笑えたという意味ではない。
話の内容が明確で、質疑にはキッチリ回答をする、それだけで時間があっという間に過ぎてしまうほど引き込まれるものだったという意味だ。
政治家の対談において「内容が明確で、きちんと回答する」などということを、高評価しなければならない昨今の日本の政治事情があまりに悲しいとも言えるのかもしれない。

 

両氏の主張は、合流したばかりということもあって、さほど大きな違いはなかった。
ただ、党首選ということでこの二人を「見比べる」という視点で見ると、やはり枝野氏の経験値は泉氏よりはるかに高いと言わざるを得ない。

 

実は枝野氏は6月の通常国会の予算委員会で安倍首相と対峙するという形を取りながら、自分が首相になったらこういう政府を目指すという大演説を、「質疑」という場を借りて行っている。
私が知る限り、枝野氏から明確な政権構想が公で自身の口からはっきりと語られたのは、あれが初めてではないかと思う。

 

その時の記事がこちら。

 

枝野氏から、ようやく出てきた「新たな社会観」
ここに朝日新聞の記事がある。 次の首相見据え?枝野氏、首相と「コロナ後」で論戦 立憲民主党の枝野幸男代表は9日の衆院予算委員会で、自身が先月発表した政権構想をもとに、「ポストコロナ」の政治のあり方について安倍晋三首相に論戦を挑ん...

 

今回の党首選会見で枝野氏が語ったことは、この時国会で言ったことと相違はない。

 

また興味深いのは、枝野氏はこの長い会見の中で、安倍政権を批判することが一度もなかったことだ。
泉氏は「提案型野党を目指す」をメインフレーズにしているが(この辺は玉木っぽい)、これは酷すぎる安倍政権に対して常に問題追及をしなければならなかった野党が、「批判ばかりしている」と愚かな世論から批判を受けて出来上がった考え方だ。
しかしその一方で、この日の泉氏は、主張の中で何度も安倍政権の失政を引用した。
面白いのは、会見の中で枝野氏の口からは安倍政権の批判は一言も出なかったことだ。
意識してのことだと思う。
唯一枝野氏が痛烈に批判したのは、菅氏が自民党の総裁選でメインコピーにしている「自助・共助・公助」というフレーズだ。

 

枝野氏「政治家が自助と言ってはいけない。政治家の責任放棄だと思っています。政治の役割は公助なんです。この公助を最後にもってくるとか、自助と並べること自体が私たちとは明確に政治姿勢が違う」

 

複数のマスコミがこの部分を切り取って報道した。
真正面からスガ氏にケンカを売ったわけだ。
これには頼もしさを覚える。

 

また、泉氏が「提案型野党を目指す」と言うのにはもう一つ落とし穴がある。
目指しているのが「野党」ということだ。
それに対して枝野氏は会見の中で「政権を取りに行く」と明確な姿勢を表わしている。
確かに現時点の支持率調査では、政権を目指すなんて言っても笑われるだけかもしれない。
だが、そういう言葉が出るようになったのは、一種の進歩だと思う。
枝野氏と泉氏の間では、そういう政権を掴みに行くアグレッシブな熱量に明確な差が出ているように感じた。

 

このなかなか面白い会見が、もちろんテレビで中継されることはなかったし、(NHKで中継があったようです。訂正します)日本記者クラブのYoutube動画でも、この記事を書いている時点で1500回程度しか再生されていない。
反安倍政権的な人すらさほど関心がないということだ。

 

自民党総裁選の三者会談と比べれば、政治会談としての質ははるかに高いものだし、有権者が多くの選択肢を確保するためにも絶対聞いておいた方がいい内容なのに、大きく報道されることもない。
どのマスコミも、会見があったこと自体は報じているものの、その内容ではなく、枝野氏が何票確保するかなどという野党内政局としてしか扱われていない。
野党政局なんて、それこそどうでもいい。
当然だ。
自民党の総裁選びの陰にすっぽりはまってしまった会見だが、この内容をさてどのように広く有権者に周知していくか。
国会もない中で、これからできる新野党第一党に課された最も大きな試練がここだろう。

会見動画

「合流新党」代表選立候補者討論会 2020.9.9

 

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