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麻生大臣すら神妙になる、共産党・大門氏の質疑

10月16日に質疑に立った、共産党・大門実紀史議員の評判が、ツイッター上ですこぶるいい。
早速動画を見てみると、こんな変わった出だしから始まった。

 

大門氏「今日は最後の私の質問のために、NHKの放映時間に入るようにということで、自民党の皆さんがですね、大幅に質問時間を短縮していただきまして、十分収まりそうな気配でございますが、ご配慮にお礼を申し上げておきたいと思います。ぜひとも総理も、譲るべき時は譲って、前向きな度量のある答弁をお願いしたいと思います。」

 

質疑の最後尾だった大門氏がNHK中継時間枠に入るよう、先発の自民党議員が質疑時間を短縮してくれたのだとか。
そんなことがあるのか、国会。
自民党と共産党というと、「相容れない」イメージがあるけれど、そんな2党間でも議員同士の信頼関係と人脈は存在するという話は聞いたことがある。
おそらく、これがそのような関係なのだろう。
安倍さんもたまにはお譲りなさい、みたいなことを言っているので、これは与党トップからの命令ではなく、国会の現場のみの交渉事だったことが窺える。

 

まずはポイント還元に関する質問。
大阪にある日本一長いアーケード、天神橋商店街にある800店舗を例に挙げる。

 

大門氏「調べてみましたら、11月11日現在ですけれども、キャッシュレスポイント還元に登録したお店、わずか全体の11.6%にすぎません。全国の商店街もほぼ同じような状況と聞いておりますけれども、経済産業大臣、なぜこの制度に参加するお店がこんなに少ないのか、説明してください。」

 

菅原経産相、毎日少しずつ増えている、またその努力をしていることを説明。

 

大門氏「手続きとか周知徹底の問題ではないと思うんですよね。ポイント還元制度に参加しない、と決めてるお店の話を聞きますと、手数料が高い、仕入れに現金が必要といった声もありますけれど、一番多かったのは、馴染みの現金のお客さんや高齢のお客さんがいるのに、カードやスマホ決済の人だけ値引きするというわけにはいかない、と。まさにお客さんのことを考えて選択しない、という判断が多い。・・・以前からカードを導入している、とある大変繁盛しているお店のオヤジさんに聞いたらですね、こんなことを言ってました。『現金かキャッシュレスか、それは経営者自身が経営判断でやればいいことで、それを政府がポイント還元みたいなものをぶら下げてエサにして、無理にキャッシュレスに誘導するなど、押しつけがましい。』とにかく、万全の対策どころか、却って反感を買ってるんですよね。・・・今回の消費増税、中小にとってなにか一つでもいいことあるんですか?」

 

これに対する安倍首相の答弁が少々気になった。
キャッシュレスを政府が推進するのは、インバウンド対策だという。
消費増税対策じゃなかったのか?
訪日外国人のキャッシュレス利用の比率が高く、電子決済できるならもっといろいろ買い物をするかもしれないといった声が聞かれたことから、キャッシュレスを推進し、外国人の消費を高めるのが目的だというのだ。
それなら、消費増税とは別口で、キャッシュレス推進としてやればよかったのではないか?
また、全国一律に展開する必要もなく、インバウンドの多い地域を中心に推進するという方法もある。
いつもの政府のやり方だが、まずはとにかく「キャッシュレス推進」「ポイント還元」政策ありき、で後から理由づけをするから、後日これに関して答弁するとおかしな点が出てくる。

 

続いて、大門氏は「格差」、消費税の「逆進性」に触れ、消費増税が現在の経済状況に適さないことを指摘した。
これに対する麻生財務相の答弁に、大門氏は鋭いツッコミを静かに入れる。

 

麻生財務相「略)・・さらに、いわゆる人口構成が大きく変わっていく、少子高齢化がはっきりしていく中で、少なくとも日本の社会保障等々は、高齢者1に対して勤労者6ぐらいの比率で作り上げたものが、今では2対1となってくると、なかなか負担と給付の割合が難しくなってくることから、国民が広く受益する社会保障の費用というものをあらゆる世代が、高齢者から若い人まで広い世代間で公平に分かりあうという観点から、いわゆる社会保障の財源を消費税にするという位置づけに変わっていったのだと理解しております。・・(略」

 

ここで大門氏のツッコミが入る。

 

大門氏「一言申し上げておきますけど、『あらゆる世代に公平な負担』というような考えはですね、実は近代国家では、税の公平性というのは世代間の公平ではありません。負担能力のある人ない人、間での公平のことを、税における公平といいます。『世代間の公平』なんて言ってるのは、日本と財務省くらいのもんで、ヨーロッパではそんな考えは通っておりません。したがって、ヨーロッパも高齢化しておりますけれど、社会保障の財源も応能負担でやっております。ヨーロッパは付加価値税が高いから、いかにも付加価値税で社会保障を賄っているかのような、マスコミも宣伝してますが、あれ全部デタラメですね。ヨーロッパの高い社会保障財源というのは、所得税、法人税、社会保険料、付加価値税、バランスよく賄っております。ですから、所得の再分配に反するから、消費税で社会保障をやるというようなことは、やらないわけですね。ということは申し上げておきたいと思います。」

 

ここは大事なポイントだ。
少子高齢化と年金不足の吹聴に押されて、ついつい忘れてしまうけれど、「税の公平は、世代間でなく、負担能力の有無にある」ということは、税制の基本中の基本であって決して忘れてはならない点だ。

 

この理屈をまるで教え諭すかのように、淡々と説明する大門氏。
ここで驚きなのは、この話を安倍首相と麻生副首相が並んで、ふんぞり返ることもなく、ニヤついたりすることもなく、極めて神妙な面持ちをして、時には頷きながら話を聞いていたことだ。
他の野党議員の質疑で、この二人がこんな態度を見せることはあまりない。
大門氏、まるで猛獣使いのようだ。

 

 

大門氏の重要な話はまだ続く。

 

大門氏「要するにですね、この31年間全体としてみれば、消費税の税収増分は、法人税と所得税の税収が減った分に消えていったということですよ。したがって結果として消費税は、社会保障の拡充にも財政再建にも貢献しなかったということでございます。・・略・・そこで、麻生大臣が言われた、直接税と間接税の比率ですね。直間比率がどうなったか。実はですね、この消費税の導入の時は、社会保障だの財政再建だのという言葉はなかったんですよ。直間比率の是正、ということが目的で消費税は導入されたわけでございます。それが目的通り8対3から2対1に変化してきたということでございます。では、直間比率の見直しは誰が言ってきたのかというと、80年代後半から経団連が強く強く要望してきたことでございまして、当時の経団連の提言にはですね、『所得税法人税に偏った税体系を改めて、消費税の比重を高めるべきだ』』と、具体的に言ってるんですよね。大企業の減税、富裕層の最高税率の引き下げ、代わりの財源として消費税の増税と、あからさまに言ってきたわけでございます。その後、直間比率のことだけ言うとなかなか見直しをされないということで、社会保障のためとかいろんなことを途中で言いましたけれども、そもそもこの31年間を振り返りますと、要するに実際には経団連が当初から求めていた『直間比率の見直し』、これを忠実に実行したということになるのではないでしょうか。」

 

いろいろそれらしい理由を付けたところで、消費税というのは、なんのことはない、昔から経団連が求めて来た税制だということだ。
この後、大門氏は、消費税は社会保障を必要とすべき人にこそ重くのしかかること、他の財源からの徴収を検討すべきことを提案し、話は世界景気へと移る。
世界の経済指標が悪化している、ということを麻生大臣の答弁で確かめた後、こう繋ぐ。

 

大門氏「世界の経済成長率はですね、リーマンショック後並み。日本の今後の消費についても、落ち込んでいくと判断しております。この間、世界経済の悪化に対して、欧米各国がなにをしようとしているかなんですが、個人消費を底上げしなければならないということで、実はこの間大幅な庶民減税をすすめようとしております。ドイツのメルケル政権、中所得者向けに、日本円で1兆2千億円の減税を提案してます。フランスのマクロン政権も、所得税住民税で1兆円以上の減税を提案しております。政府はこれは歴史的な減税だと表明しております。トランプ政権でさえ、中所得層向け減税構想が浮上していると。今や世界の流れは、庶民増税ではなく、庶民減税なんですね。日本だけ逆の方向に舵を切ってしまっているわけでして、こんなときなぜ日本だけ増税してしまっても大丈夫なんですか。総理いかがですか?

 

「総理いかが」と聞いているのにもかかわらず、西村康稔氏がしゃしゃり出てくる。
大門氏が「通告してないですよ」と、不満げに議長に申し出る。
西村氏、構わず答弁ポジションに立ち、
「あのう、ワタクシ経済全般を見ておりますので、えぇ、ふふ。足元の景気も大門委員がよくご存知のとおりだと思いますけれども、・・」
とはじまり、いつもの有効求人倍率も好調、賃上げも今世紀最高、と経済を称賛し、消費者のマインドに気を付けながら、経済に万全を期したいと答弁した。
場内ざわつく。

 

大門氏「あのー、通告してないですよね?西村さんはね、カジノ作れば経済が良くなると言ってきた人でしょ?マクロ経済なんか分かるんですか?出てこないで下さいよ・・・っんとに。」
野党席から拍手。

 

猛獣使い大門の鞭が鳴った、・・ような気がした。
大門氏が質疑に立ってから、常に安倍首相と麻生大臣が交互に答弁してきたところに、割って入ってきた西村氏は赤っ恥をかいた形だ。
なんて痛快なんだろう。

 

大門氏の質疑は全編を通して惹きつけられるものだった。
語り口は穏やかだが、隙がなく、なにか聞いているとワクワクさえしてくる、なんとも不思議な人だ。
なるほど、ツイッターで人気があるはずだ。
今回、NHKの国会中継には流れたようだが、この質疑をマスコミの記事に取り上げられることはなかった。
残念な話だ。

 

この書き起こしは全文ではないので、興味のある方はぜひリンクから動画を視聴してみてください。こちらから
他の動画は再生回数が数千回ほどなのに、これはすでに1.3万回を超えている。
こんなにファンがいるとは知らなかった。
全く迂闊であった。

 

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