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終身雇用終了で考えるべきことは、「副業」ではない

4月20日、経団連会長の中西宏明氏が、
「正直言って、経済界は終身雇用なんてもう守れないと思っているんです。」
と発言して話題になったが、
さらに5月14日、今度はトヨタ自動車の社長・日本自動車工業会会長である豊田章男氏が、
「なかなか終身雇用を守っていくというのは、難しい局面に入ってきたのではないか」
と発言した。

 

経済界の2トップが、時期同じくして「終身雇用」に関して言及したことに、なにを「いまさら」という思いがしてならない。

定年が至近距離に近付いている世代なら、身をもってなにか思うところがあるかもしれないが、果たして20代30代といった若い世代の人が、それを聞いて慌てたりするだろうか?
若い世代のサラリーマンに、「終身雇用だから、もう将来安心」などと、本気で思っている人がいるとはちょっと考えにくい。

 

そうでないからこそ、大学生が「老後」を不安に思ったり、若いサラリーマンが、副業に関心を持ってアヤしい情報商材に手を出してしまったり、将来の資産を考えてアヤしい不動産に手を出してしまったりするのではないだろうか。

「終身雇用」など、そもそも誰もアテにしていない世の中なのに、わざわざこういう花火を経済界の2トップが打ち上げるのには、それなりの思惑があるのだろうと思い、考えてみた。

 

2019年4月1日から施行になった、「働き方改革関連法」で、残業のあり方が大きく変わったことは、すでにここで触れるまでもなく、みんなが承知していることだろうと思う。

ただ、この「働き方改革」の原案には、当初「解雇しやすい特区案」なるものが入っていたことを覚えている人は、あまり多くないと思う。
2013年の話だ。
「働き方改革」とは、実は5年以上もの長い時間スッタモンダして、ようやく実現した法案とも言える。
第一弾が、無事施行された4月、の同月末に中西経団連会長によって、第二弾への布石を打たれるのは、そう考えるとあまり意外な話でもなくなってくる。

 

2018年頃から、だれでも名を知るほどの大企業が、次々と45歳前後のラインで「早期退職者募集」をかけていることが、世間でも話題になっている。
希望退職者を募集する段階なので、強制的な人員整理ではないが、その年齢ラインで、企業がどんな人材を切りたがっているのか透けて見える。
しかし、「希望退職者募集」には企業側にとって大きな欠点がある。
退職しても次がある、どちらかというと能力のある社員が優先的にいなくなることだ。
もし、これを合法的に、企業側の指名でクビにすることが出来たら、願ったりかなったりではないか。

 

ネットには、
「高い給料の、使えないオッサンがいなくなる」ことを、歓迎するようなコメントもある。
だが、浮いたオッサン分が、他の社員に配分されるわけではない。
オッサンが災難でした、で終わる話だ。
というか、どんな若者も、いずれオッサンになることも少し考慮したほうがいい。

 

終身雇用とそれに付随する年功序列が崩壊するということは、逆に言えば「黙っていても、悪いようにはされない」という、企業と労働者の無言の信頼感の支えであったものが、崩壊するということでもある。
これからは、黙って働いていても、勤続年数で評価されるわけでもなくなるし、ことによっては「解雇」などのリスクが突然降りかかる可能性が高くなる世の中になる。

 

そうなったときに、なにが必要か。
雇用側と対等に話せる力・バックアップが必要になる。
つまり、労働者の団結、「組合」だ。

「なにか、政治臭い・・」と嫌悪感を覚える人がいるかもしれない。
でもそれは、長年にわたる「よき時代」に刷り込まれたものにすぎない。

放っておいても力のあるはずの、財力を持った経営者たちが「団結」して、直接政治に働きかけている、つまりそれが「経団連」のロビー活動だ。
財力もなく、立場も弱い労働者が「団結」すると、途端に「政治臭い」などと思われること自体がおかしい。

 

「絶対に悪いようにはされない」という暗黙の約束が成立していた「よき時代」、労働組合の役目が小さくなり、そういう中で存在価値を求めるばかりに、いまの労組は、むしろあらぬ方向に走り出した。

そんな背景もあって、たぶん今の日本には、自分が「労働者である」ということを認めたくない人が多いのだと思う。
「私は労働者です」には、なにか冷戦時代の社会主義くさい・・共産主義くさい・・、そして貧乏くさい、違和感が付きまとうのだ。
その気持ちは、分からなくもない。

ここは、名称変更で心機一転しやすいという、日本人の特性を利用したらいいかもしれない。
経団連メンバーでもなく、日商会メンバーでもない、「働きマンチーム」とか。
「サラリーマン・カウンシル」とか。

そんなことをツラツラ考えている。

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